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テーマ:仕事しごとシゴト(23733)
カテゴリ:図書館日記
毎日図書館に来ていたおじいさんが、今朝突然、「今までありがとう」と言って利用者カードを差し出した。 わたしは「えっ」と言ったきり、言葉を見つけられなかった。 「転居することになりました」とおじいさん。 毎朝、新聞と雑誌をていねいに読み、歴史小説を一冊ずつ借りて、ときどき「これはおもしろかったな」と感想を教えてくれることもあった。 わたしがマスクをしてカウンターに座っていたら、「かぜ? 気をつけてね」と声をかけてくれた。 馴れ合わないけれど親しみのこもったやりとりに、何となく安心感をもらっていた。 開館以来の常連さんだから、今までおじいさんと接してきた先輩たちの分も気持ちをこめて、「長いあいだありがとうございました」と言った。 おじいさんはちょっと笑い、「引っ越しは来週。まだいるよ」と片手を上げて、振り返らずに出て行った。 几帳面な文字で名前が記されたカードはまだあたたかくて、ハサミを入れるとき、小さな痛みを感じた。 時は流れ、当たり前のように毎日会っている人たちとも、遠くないうちに別れてゆく。 いつもこれが最後かもしれない、かけがえのない一回だと思いながら、お客さんや周りの人に接していたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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