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本読みのひとりごと

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読むこと、書くことが大好きなbiscuitです。
夫、元気すぎる2人の息子と4人暮らし。

新聞記者を経て、フリーランスライター/エディターに。

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biscuit5750@ Re[1]:木々との対話(09/12) >micoさん こんにちは!すっかりご無沙汰…
mico@ Re:木々との対話(09/12) bisさん、こんにちは。まずは次男くんのご…
biscuit5750@ Re[1]:さようなら、クウネルくん(01/27) >micoさん お久しぶりです! コメントを…
mico@ Re:さようなら、クウネルくん(01/27) クウネル。新装された表紙を見てお別れし…
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2011.04.17
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カテゴリ:お散歩日記
梅満開

春風にさそわれて、散歩に出る。

青い星

オオイヌノフグリが、小さな青い星みたいに、果樹園の下草に散らばっている。
ハコベの白い花、赤むらさきのヒメオドリコソウ。
スイセンは黄色いつぼみがふくらんで、気の早いのがちらほら咲きはじめている。

去年の同じころ走って通りすぎていた道を、今年はてくてく、ゆっくり歩く。
自然と足もとに目が向く。
速さがちがうと、景色も変わるものだな。

折り返し地点の川辺に着くと、対岸の工場ではたらく人が、シャツ一枚でキャッチボールをしていた。ちょうどお昼休みの時間。
ぽっちり芽を出した八重桜の枝で、スズメがチュルルと鳴いている。
トンビが気持ちよさそうに、羽をひろげて青い空を滑っていく。
川の水音が涼しいくらいの陽気で、山の雪も中腹まで融けた。
もう間もなく、桜が咲くだろう。

がまプール

体調の変化に地震がかさなって、もう長いこと遠出をしていない。
「遠くへ行きたい」という漠然とした憧れを抱いて暮らしているせいか、これまでに住んだり、旅をした遠い街の記憶がしきりに思いうかぶ。

就職して間もないころ暮らした港町。通いつめたビストロで食べた、春野菜のペペロンチーノ。
結婚前に住んでいた下町の、大きな神社。緑のにおいがする境内の横を、自転車で通りすぎるのが好きだった。
近いところでは、去年の夏にくまの家族と出かけた箱根の温泉街。
道ばたに車をとめて、大いそぎで買ったソフトクリームを、みんなで食べたっけ。

つまりこれが、「目の中にしまっとけるもの」ってことなのかな、と思う。
「目の中にしまっとけるもの」というのは、幸田文さんが娘の青木玉さんに言ったことば。

「おばあさんがただ寝てたってつまらない。病んで動けない時に、じーっと思い出してるだけで気持ちが動くような、目の中にしまっとけるものがあるといいよ」
(「クウネル」vol.35 2009.1.1号「幸田文の生活学校」より)

今、雪国で暮らしているこの時間も、目の中にしまわれるのかな。
そうしていつか、未来のわたしが別の場所で思い出して気持ちを動かす、そんな日が来るのだろう。

だから今はこの場所で、移り変わる季節を目に焼きつける。
見ることのできるもの全部、目の中にしまって、次の町へ持っていく。
遠くからながめれば、人生全体が、たぶん長い旅みたいなものだから。

…なんてことを思いながら洗濯物を干す。
明日、晴れたら、また散歩に行こう。

明日晴れたら





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Last updated  2011.04.17 16:57:10
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