P.G.ウッドハウス『ジーヴスの事件簿』:P.G.ウッドハウス選集I、文藝春秋2005.5、ISBN:416324090X
評価:☆金持ちのボンボンであるバーティ・ウースターと万事そつのない執事ジーヴスを中心とした短編・長編からなるシリーズのうち代表的な短編を集めた物です。イギリス的上流社会の世界を描きつつも全世界で愛されている小説家(らしいです)それというのも、かのイギリスおたく吉田健一あたりに愛好・絶賛されつつも、訳本がほとんど絶版状態で、私も某所でP.G.ウッドハウスの本を大量に目にしなければ気にとめる事は無かったでしょう。ペンギンブックス版のソフト・カバー本でしたが、妙に気になるイラストが表紙を飾っていたために、当時訳本を漁ってみましたが入手できませんでした。そういった経緯があったものですがから、書店でP.G.ウッドハウスの文字を目にしてレジへためらいもせず持っていったのは、不思議でもないでしょう。ただ、2,762円は高かったですが…まあ、本は1万円の本だって孫子の代まで楽しもうと思えば楽しめるわけで、されに古くなるほど価値を増す(一部は)ので、パイプや磁器のカップなどと同じく、お得といえばお得でしょう。肝心の中身ですが、軽いユーモア物と聞いて思い浮かべるイメージで間違いないでしょう。ボンボンのウースターが困難に巻き込まれて、その度にジーヴスがそつなく事を収めて終り。終わりようは多少ニュアンスが違いますが、ドラえもんを連想してしまいました。ただ、ビクトリア朝の身分制度とかイギリスの慣習を理解してないと本当の面白味は分からないのかもしれません。私には良く分からない部分もあります。万能のジーヴスが前の主人の元を去った理由が、『お暇をちょうだいしましたのは、殿様が夕食に夜会用のズボンとフランネルのシャツ、狩猟用の上着といういでたちでお出ましになるのが忍びなかったためでございまして』だそうです。この感覚判りますか?私は判りませんでした。