シルミド事件: 韓国国防省が真相究明へ 2005年1月7日18時31分 (毎日新聞)
【ソウル堀信一郎】韓国国防省は7日、映画「シルミド(実尾島)」で脚光を浴びた実尾島事件の真相を究明することを明らかにした。
(中略)
国防省は昨年、実尾島事件に関する資料を収集しており、4月に専門家で構成する真相究明委員会を発足させる。事件資料を真相究明委で分析し、誰の指示で特殊部隊が結成され、命令中止の後、どのような経緯で特殊部隊殺害指令に至ったのかなどについて事実関係を明らかにする方針だ。
国防省によると、実尾島の特殊部隊は、68年の北朝鮮特殊部隊による青瓦台(大統領官邸)襲撃事件に報復するため31人で結成され、訓練中に7人が死亡。特殊部隊の行動を鎮圧しようとした韓国政府軍との交戦で20人が死亡し、4人が生き残った。4人は72年の軍事裁判で死刑執行されている。
■このニュースと・・・
韓国:日韓条約締結の議事録公表へ 1月17日に 2004年12月28日19時37分 (毎日新聞)
【ソウル堀山明子】韓国政府は28日、日韓が国交樹立した1965年の日韓条約締結に向けた交渉記録のうち、請求権をめぐる議事録など5件を1月17日に公開すると発表した。日韓条約の交渉に関する外交文書は日本では非公開で、韓国での公開も初めて。韓国政府は、文書公開を機に改めて被害者団体などから戦後補償問題が提起されると想定し、被害者支援策を検討する対策チームを近く発足させる。
(後略)
■このニュース、どうも関連があるような気がするんですがねぇ。
どちらもあの朴正煕時代の事件ですね。
シルミド事件の「真実」を暴く→朴正煕の悪事が暴露
日韓条約締結の議事録公表→日帝と妥協した朴正煕は売国奴
で、
朴正煕の娘「朴槿恵」はハンナラ党の党首・・・
いやいや、まさかねぇw
詳しい説明はJSF.さんの「
日韓基本条約締結の議事録公表へ 」をご覧頂くとして、いつののようにどうでもいい方向の話をしてみましょうw
シルミドの登場する通称「684部隊」は正式には
「空軍2325戦隊209派遣隊」というらしく映画でも描かれていたように空軍の管轄の特殊部隊です。
映画では死刑囚や無期懲役囚などの犯罪者ばかりが集められたように描かれていますが、実際は空軍の志願兵や一部問題のある軍人、そして一般人であったそうで。
映画の中で死刑囚や無期懲役囚などの犯罪者ばかりが集められたように描かれた事に対して
684部隊遺族、『実尾島』上映「取りやめ」求めると言うこともあったようですね。
しかし
>事件資料を真相究明委で分析し、誰の指示で特殊部隊が結成され、命令中止の後、どのような経緯で特殊部隊殺害指令に至ったのかなどについて事実関係を明らかにする方針だ。
この記事では「特殊部隊殺害指令」は事実のように書かれていますが、たしか実際には特殊部隊殺害指令は出ていなかったような気が。
毎度お馴染み「
軍事板常見問題」で探したところこんな記事が紹介されていました。
映画「シルミド」の見方 平成16年6月6日 (戦略情報研究所メールマガジン Vol. 16)
(前略)
あらすじはあちこちで紹介されているのでそれをご参照いただきたいが、
一つだけ指摘しておきたいことがある。この映画の中で一番大事な「国家に
よる部隊の抹殺命令」が作り話だということだ。確かに隊員は1971年8月23日
にバスを乗取ったが、それは待遇の悪化への反抗であり、バスも自爆ではなく、
持っていた手榴弾の扱いを誤って爆発させてしまったものと推定されている。
また、ほとんど囚人で作られた部隊というのも誇張らしい。
(中略)
684部隊は実在の部隊であり、1968年には青瓦台ゲリラの後にこれとは別
の韓国陸軍の特殊部隊(HID)が報復として休戦ラインを越え北に侵入、いく
つかの軍事施設を爆破している。これに対し10月には北朝鮮が韓国東海岸の
蔚珍・三渉に120名の特殊部隊を侵入させた。当時は休戦協定以来最も南北関
係が緊張していたときだったが、本当は今も基本的な構造は変わっておらず、
あくまで南北間は「休戦」でしかないのである。映画でも部隊創設の経緯や
訓練などについてはほぼ事実に近い描かれ方をしているようで、その部分だ
けでもこの映画から南北関係の緊張の一端を知ることはできる。
■ここにはハッキリと
>この映画の中で一番大事な「国家による部隊の抹殺命令」が作り話だということだ。
と書かれていますね。
しかし、
>1968年には青瓦台ゲリラの後にこれとは別の韓国陸軍の特殊部隊(HID)が報復として休戦ラインを越え北に侵入、いくつかの軍事施設を爆破している。
と言うのが真実であれば「684部隊が邪魔になった朴正煕が抹殺指令を出した」と言う主張の根底が崩れますね。
で、さらに調べてみるとこんな現代コリアにこんなコラムが。
現代コリアコラム 映画「シルミド」を評す (金智慧)
(某S氏注・国家権力が、特殊部隊の抹殺を指令した問題についての)結論をいうなら、南北の関係改善の障碍になる恐れができたので「シルミド部隊員」を抹殺せよとの指令は存在していなかったのだ。何故なら当時の朴正熙大統領が、今日の金大中ら左翼政権のように平壌(金正日)の機嫌を窺って「シルミド部隊」の存在を消すようにした可能性はゼロだからである。
朴政権時代を韓国で生きた人間なら、どんな立場の人でも朴政権が、緊張緩和のために「シルミド部隊員」「抹殺指令」を出したなど信ずるものはいない。いたとしたら共産主義と毅然として戦ってきた朴正熙政権時代を意図的に知らせない、また、知ろうとしない人たちであろう。
また、同じ時期に、同じ特殊部隊が陸軍と海軍に存在していたし、今でも存在している。
この事実こそが、過去の権力者が、国際情勢の変化を理由に「シルミド部隊員」が邪魔になったから「抹殺指令を出した」という嘘を、完膚なまでに打ち砕く証拠である。
金大中政権出現以来、最も憎むべき平壌の野蛮的独裁体制の批判はせず、歴史的には「反日」、唯一の同盟国米国に対する「反米」だけでなく、やがて自分の国の正統性をも否定する反逆、自殺行為に走ったのである。
■こちらにも
>同じ時期に、同じ特殊部隊が陸軍と海軍に存在していたし、今でも存在している。
と言う形で抹殺指令の虚構が指摘されています。
私も個人的にはいくら邪魔になったとはいえあの朴正煕が抹殺指令を出すとは思えないんですねぇ。
で、
「日本革命的共産主義者同盟中央委員会」と言ういかにも電波ユンユンな所に面白い記事がありました。
韓国は、いま 映画「実尾島」(日本革命的共産主義者同盟中央委員会)
ところが映画を見て気がかりになった。北韓は特殊部隊である124軍部隊所属の最精鋭現役将校31人を南派して青瓦台(韓国大統領府)襲撃事件をひきおこしたが、なぜ韓国は軍番号も階級もない市井の人々によって684部隊を編成したのだろうか。684部隊の最後の訓練兵ミノのセリフのように、国家は「だれにも知られず使い、だれにも知られず消してしまう計画」だったのだろう。
また別の構造的原因は当時、韓国軍の戦時・平時の作戦統制権が、すべて駐韓国連軍司令部にあったからだ。北韓軍の対スパイ浸透作戦に対する韓国と米国の対応作戦も国連軍司令部司令官の責任下で遂行された。ところが1968年1月21日の青瓦台襲撃事件と1月23日の発生した米国情報艦プエブロ号拉北事件(注2)の処理をめぐって韓国と米国が衝突した。国連軍司令部司令官が青瓦台襲撃事件にはいかなる対応もしないうえ、プエブロ号拉北事件に対してはデフコン2を発令し、戦争直前の段階にまでいった。
このような米国の二重的態度に怒ったパク・チョンヒ大統領は韓国軍が報復攻撃の一環として北進することができる、と脅した。これにあわてた国連軍司令部は韓国軍の単独北進を阻もうとして韓国軍に対する油類の補給統制を強化したりした。
当時、韓国軍にも最精鋭の特殊部隊要員らがたくさんいたけれども、中央情報部は1968年4月、実尾島に階級も軍番号もない民間人たちを緊急に集め、キム・イルソン暗殺訓練をさせたのは作戦統制権がなかったからではないだろうか。「実尾島」には684部隊員31人の凄惨な運命と軍隊の作戦統制権を異邦人に委ねた1968年の大韓民国の凄然たる姿が重なっている。(「ハンギョレ21」第493号、1月29日付、クォン・ヒョクチョル記者)
■電波ユンユンな名前にしては面白い分析ですね。
当時、韓国軍の戦時・平時の作戦統制権は国連軍司令部にあった。
↓
国連軍司令部司令官は青瓦台襲撃事件を黙殺。
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しかし、プエブロ号拉北事件に対してはデフコン2を発令し戦争直前に。
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朴正煕激怒、青瓦台襲撃事件の報復として韓国軍で北進すると脅迫
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国連軍司令部は韓国軍の単独北進を阻もうとして韓国軍に対する油類の補給統制を強化。
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朴正煕さらに激怒、国連軍司令部の作戦統制の及ばない684部隊の創設を命令。
まぁなかなか面白い分析ですね。
シルミドの真実はさらけ出されるし、日韓間最大の懸案事項だった戦後補償問題も解決しようとしている。
これからの韓国が楽しみですw