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カテゴリ:ご陽気な日常ネタ
亡くなった母方の祖父母の写真立ての側に、今まで飼ってきた犬達の写真がある。 お盆ということもあるのだろうが、それを見て、ふと思い出したことがあった。 あれは、私がまだ小学生の時。 父が家族の反対を押し切って、生後数ヶ月のミニチュア・ピンシャーという犬種の子犬をもらってきた。 家には既に秋田犬とミニチュア・ダックスがいて、これ以上頭数を増やしたくないというのが家族の意見だった。でも、父は子犬をもらう(買う?)約束を前からしていたようで、私達の猛抗議を無視して連れて帰ってきた。 散歩もエサやりもしない、一切の世話をしないどころか頭を撫でてやることすらしないくせに、安易に小さな命を引き取ってくる父に私達は憤りを覚えていた。 けど、連れて来られたミニピンに罪はない。 幸い、既にいた2頭が受け入れてくれて、この子犬は我が家の仲間入りをした。 ・・・が。 このミニピンが、どこからか病気をもらってきた。 犬パルボウィルス感染症、一般的に「コロリ病」と呼ばれるもので、その名の通り、あっという間に死ぬ、死亡率の非常に高い伝染病だった。 みるみるうちに運動量が減り、私が1階のベランダで座っていると、膝の上によじ登ってきて、丸くなって眠るという日々が続いた。 そして、どんどん弱っていき、最後は動物病院のケージの中で死んだ。 ドクターから「朝起きたら、あの子が冷たくなっていて・・・」と電話をもらい、自転車で亡骸を受け取りに行った。 うちに来て、まだ2ヶ月ほどだっただろうか。 元々が小さな犬種だったけれど、この世で1年も生きられなかった、小さな小さな亡骸だった。 父の反応は予想通り、「小型犬は弱いな」程度のもので、世話をした私達だけが泣いていた。 その夜のこと。 小学生だった私はまだ母と一緒の部屋に寝ていて、翌日は休日だったのだろうか、枕元の電気スタンドをつけて本を読んでいた。 すると、 チリチリチリ・・・・・・ 鈴の音がした。 近所には猫を飼っている家があって、よく庭に入ってくる。またか、と思った。 けど、何かおかしい。 同じ場所にずっといる。音が移動しない。 そして、鳴り続けている。 庭の位置は、寝ている私の右方向にあった。当然、鈴の音も右手から聞こえてくるはず。 腑に落ちなかった私は、静寂の中で更に耳を澄ませた。 違う。 この音は、庭から聞こえてきてるんじゃない。 じゃあ、何処から・・・? 襖を隔てた、隣の部屋から聞こえる。 猫が家の中に? それはあり得ない。 じゃあ、何・・・? そこで私はハッとなった。 小さな体躯のミニピンに合う首輪は、当時のペットショップになかった。 そのため、やむを得ず猫用の首輪をつけていたのだ。 その首輪には、鈴がついていた。 そして、亡骸から外した首輪を、隣の部屋の棚の上に置いていたのだった。 鈴の音は、明らかにそこから聞こえてきていた・・・。 まだ子供だった私は、物凄い恐怖を覚えた。 布団を頭からかぶり、ぎゅっと目を瞑って、「怖い!成仏してーっ!」と、必死で手を合わせた。 それから数分後、鈴の音は止んだ。 翌朝、母にそのことを伝えると、爆睡していたために全く知らなかったらしい。 「お別れに来たんやわ。あの子、あんたの膝でよう寝てたし・・・」 しみじみとそう言われて、怖がったことを申し訳なく思った。 結局、その伝染病はミニダックスにも感染して、あっという間に2頭を失うことになった(秋田犬はさすが大型犬で強い、感染しなかった)。 その後も(私が社会人になるまで)父の横暴で複数頭を飼い続けることになり、その分、寿命や病気で何頭も涙で見送らなければならなかったのだが、お別れに来てくれたのはミニピンだけだった。 勿論、他の犬達が挨拶に来てくれても、鈴みたいなアイテムがないから、私達に知らせられなかったのかもしれないけれど。 それまでも霊を否定することはなかったし、ぼんやりとした体験は何度かあった。けれど、ここまではっきりとした出来事は初めてだった。 動物も人間と同じように、肉体を失っても自らの意思で何かを伝えることができるんだということ・・・。 あのミニピンがいなければ、私は一生知らずにいたのかもしれない。 最後まで読んで下さって、有難うございます。
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