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2007.01.14
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カテゴリ:母のこと・介護

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前の病院にいた春頃、母に聞いた。

「1日が長いやろ?」

窓際から離れていて、見えるのは天井と仕切りカーテンぐらい。
この病院は民家が接近しているために、例え窓際だったとしても曇りガラス(それも小さい)で外は見えなかった。そのせいで常に天井の蛍光灯がついていて、部屋の真ん中にいる寝たきり患者には、朝なのか夜なのか区別がつかない状態だった。
景色は狭小で、酷く退屈なはずだ。

が、私の質問に対する母の答えは意外なものだった。
首を横に振ったのだ。

「そっか、その方がいいかもしれへんなぁ」

テレビを観ることも、本を読むこともできない体。天井だけを見つめながら1分1秒を確実に感じていたら、気が変になるだろう。
脳から発せられる様々な指令が途絶えたけれど、時間感覚がなくなったことは、この環境下においては不幸中の幸いだったかもしれない。


さて、今の病院に移って4ヶ月。
今日、久しぶりに同じことを聞いてみた。

「1日が長いやろ?」

すると、母が頷いたのだ。

大きな窓の側で空が広く見えることから、昼夜の区別がついて、1日の長さの感覚が戻ってきたのだろうか?

勿論、時間感覚が戻ると、日長一日寝て過ごすのは苦痛になる。
でも、今の病室からは寝たままで空が見えて、天気が分かる。ベッドを起こしてもらえれば、遠くの景色で季節が分かる。朝の光が差し込んで明るく、日が暮れると部屋の電気がつけられて、カーテンが閉められる。
スタッフの挨拶で判断しなくても、朝昼夜が確実に分かるのだ。
そのせいだろう、前の病院では夏頃から昼夜逆転していたが、今は夜にちゃんと眠っているようだ。

体内時計の復活。
寝たきりの母にとって、それが良いことかどうかは分からないが、私には一歩前進に思えた。


いろいろ質問して反応を見ていると、どうも本が読みたいようだ。子供の頃から読書三昧だった母だから、当然だろう。
テレビも好きな人だったが、今は観たくないらしい。マラソン中継やらスポーツ観戦をよくしていたけど、観たくないというなら無理に観せることもないだろう。
大好きなクラシック音楽も、何故か今は聴きたくないそうだ。

「本が読めるようになったら、いっぱい持ってきてあげるからな。この調子で頑張りや」

そう言うと、頷いていた。

眼球の動きは以前に比べて鈍くなっているような気がするが、見えないと思っていた右目が見えているのが分かった。
体が起こせない、手が思うように動かせない、そんな状態で本が読めるわけがないが、目さえ見えているのなら、希望を持たせてやることができる。
それに向かってポジティブになれば、体が活性化する。

"本を読む"・・・今の母にとって大きな目標だ。





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Last updated  2007.01.17 01:43:14
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