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テーマ:介護・看護・喪失(5319)
カテゴリ:母のこと・介護
今の病院は2ヶ月に一度、担当医師から母の病状や、リハビリの進み具合が説明される。 目覚しい快復がないから前回と同じような話なのだが、こっちの希望を聞いてくれるから、実現可能かどうかは別として有難いことだと思っている。 ここで前知識として、リハビリ専門職について。 リハビリ専門職は数種類あって、母のいる病院にはその中の3種類のセラピストがいる。 理学療法士(PT)・・・基本的動作能力(手足を動かす等)の回復を図るため、体操や電気刺激、運動療法等の物理的手段を加える専門職。 作業療法士(OT)・・・応用的動作能力(指先を動かす等)の回復を図るため、手芸、工作等の作業を行わせる専門職。 言語聴覚士(ST)・・・音声機能、言語機能、摂食・嚥下機能、聴覚に障害のある者に対し、訓練や検査、指導を行う専門職。 母は左半身麻痺、右半身は動くけれどコントロールはきちんとできない。指先の訓練なんてレベルには達してないので、主に理学療法士にリハビリをしてもらっている。 1月下旬に二度目の説明を受ける機会があったので、発声や嚥下(ごっくん)の訓練はまだ無理な状態なのか、医師に聞いてみた。 すると、カルテを見て首を傾げている。 「確か、前にもおっしゃってましたね。それを理学療法士に伝えたんですが・・・言語聴覚士の担当者の名前が書かれてないですね・・・」 「そこまで至ってないって判断でしょうか」 「いや、担当の理学療法士に連絡を取って、聞いてみます」 医師との話が終わって、母の病室に戻って数分後。 お笑いコンビシャンプーハットの小出水そっくりの、白衣を着た男性が入ってきた。理学療法士(仮名:シャンプー)との初めての対面である。 何と言うか・・・不敵に笑う感じで、礼儀にはさほど気をつけない印象を受けた。 シャンプーは、車椅子での座位訓練やら、自分が母に対して行っているリハビリ内容の説明をし出した。私には理学療法士の友人がいるから、どんなことをするかは分かっているし、特に質問はない。それよりも、言語聴覚士が何か試みてくれているかどうかの方が気になる。 そこで、聞いてみた。 「言語や嚥下訓練は、まだ無理ですか?」 その時のシャンプーの反応に、私はカチンときた。 プッ!と、吹き出すように笑ったのだ。 「そんなん、できるわけないでしょ?」と、馬鹿にしたようにしか思えん。 この病院に来て5ヶ月、初めてムカついた。 先生と呼ばれる専門職人の中には、たまに勘違い野郎や錯覚野郎が存在する。 普通なら、「何や、その態度は!」と詰め寄っただろうけど、母を預けている手前、あまり強くは出られない。 なもんで、こっちは慇懃無礼な態度を取った。 「最近、発声する回数が増えてるんですけど? この前は"あご、いたい"って言いましたし、 お見舞いに来てくれた方の名前も言いました。 勿論、はっきりとは言えてませんけど、以前より言葉になりつつありますが!?」 私のこのセリフを読んで、母の闘病の様子をずっと読んでくれている人達は、さぞかし驚いたことと思う。 母の発声が増えてきているのは、紛れもない事実なのだ。 勿論、まだまだ何を言いたいのか分からないのが大半。単に「あー・・・」だけの時も多いが、完全なる失語症(声が出ない状態)から脱してきているのだ。 先述の「あご、いたい」は、爪で引っ掻いたらしい顎にクリームを塗ったら沁みたようで、比較的はっきり聞こえた。これには本当に驚いた。 その後も、お見舞いに来てくれたご近所さんや叔父(母の弟)の名前を呼んだらしい。不明瞭ながらも聞き取れたようで、「名前を呼んでくれた」と、みんな感激していた。 この事実を聞いたシャンプーの顔色が変わった。 「え、ほんまですか? 僕がいてる時は、全然そんなことないんで・・・」 恐らく、話しかけずに手足のリハビリだけやってるからだろう。ちゃんとした理学療法士は、頻繁に患者に話しかけながら治療を行うものだ。 母の発声の件に関しては、早速、言語聴覚士に報告するとのことだった。 「嚥下の訓練もやってほしい」と私が言うと、ここの言語聴覚士は誤飲による肺炎を怖がって、なかなか訓練に踏み切らない・・・と、愚痴に近いことを言い出した。 嚥下可能かどうかの検査後、訓練に入るにしても、そういった事態になった時は、家族が望んだことであって病院には責任を問わない旨、明言してほしいとのこと。 ・・・面倒臭ぇなぁ。 できるかでけへんか、やってみんと分からんやろが!! ムカムカとイライラが、ピークに近くなってきた。 「別に責任は問いません。そちらの判断で、検査や訓練の時期を決めて下さい。 様子を見た方がいいなら、別に何ヵ月後でも構いません」 「いや、喉も使わないと機能しなくなるから、早い方がいいです。 元気な時に、食べることに重点を置いてたかどうかでも変わってきますけど・・・」 「食・べ・る・の・好・き・で・し・た!!」 (←結局、強く出てしもた^^;) シャンプーは「分かりました」と答えて、そそくさと部屋を出て行った。 そして、今日。 病室に行くと、男女2人の言語聴覚士が母の嚥下のチェックをしていた。 男性が椅子に座らせた母の背後に回って、喉に4本の指を当てる。 女性が、氷で冷やしたスプーンを母の口に入れて刺激を与えたり、微量の水を口内に入れて嚥下を促す。 すると、背後に回っていた男性が言った。 「嚥下とまではいきませんけど、喉に動きはありますね」 よしよし。 上手く行けば、いずれゼリー状のものが食べられるぞ。 食べることは大きな刺激。言語聴覚士の力を借りながら、実現してくれれば嬉しい。 一歩前進だ。 因みに、この男性の言語聴覚士。物凄く愛想のいい好青年。顔は永井大に似ている。 患者や家族への接し方、少しは彼を見習えよ、シャンプー。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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