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2007.02.18
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カテゴリ:母のこと・介護

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母の病室に向かうローカを歩いていると、「んごーっ! んごーっ!」と、物凄いイビキが聞こえてきた。
これは絶対に、100%、間違いなく母のイビキである。
ビックリして部屋に入ると、案の定、高らかなイビキ騒音を撒き散らし、眠っていた。

倒れた当初、舌のコントロールができず、喉の奥へ落ち込んで気管を塞ぎがちだったため、イビキが酷い時期があった。その再来って感じである。
あの頃、毎日のことだから、部屋を替わる度に同室の人達に謝って回った。みんな患う者同士、「気にしないでいい」と言ってくれたっけ。

現在の同室の3人は完全に寝たきり。そのうちの2人は眠ったまま動かないし、もう1人は意識はあるものの、母よりも反応が悪い。
幸いというと申し訳ないが、今は母がイビキをかいても迷惑にならない状況だ。

さて。
母を叩いたり呼んだりして起こしてみるものの、ちょっと目を開けてはすぐに寝てしまう。睡魔に全く勝てない様子。
特に具合が悪いとも聞いてないし、何故なのか不思議に思ったまま帰宅した。


家に戻ると、留守電に近所のバンノさんからメッセージが入っていた。今日、母の見舞いに行ってくれたらしい。
折り返しお礼の電話を入れたのだが、ここで母の爆睡の理由が分かった。


バンノさんは、いつも誰かを誘って母の面会に行ってくれるのだが、今日は近所のスガワラさんと一緒だったそうだ。
スガワラさんは母が倒れたことは知っていたが、働いている上に海外に行くことの多い人なので、なかなか病院に行けないのを気にしていたらしい。
で、今日、やっと行けたというわけなのだが。

バンノさん曰く、「もうね、見てて慌てちゃったのよ~、私!

スガワラさんがベッドサイドに来ると、母はすぐに誰か分かったらしく、何度も声を出したらしい。
そこで、スガワラさんが何をしたかと言うと・・・

母の背中に手を入れて持ち上げたり、横向きにしたり、パジャマをめくり上げたりして、体のあちこちを満遍なくチェックしたというのだ。それを見ていたバンノさんは、いきなりの行為にハラハラしたという。

実はこのスガワラさん、現役の看護師。

寝たきりになって1年以上の母の体に辱創ができていないかどうか、腰、背中、肩、踵、肘、全て見てくれたのだ。辱創ができていれば、速攻で担当看護師に話をしに行ったに違いない。

けど、辱創が全くなかった。スガワラさんは安心したという。


これで分かった。
母は久しぶりにスガワラさんを見たことで興奮した上、辱創チェックの為の数度の体位変換で疲れたのだ。だから、私が行った時は、もう眠くて眠くてしょうがなかったのだ。


すぐにスガワラさんに電話した。
お礼を言うと、嬉しそうな声が返ってきた。

凄く声が出るのね! 
 スガワラって難しい名前なのに、呼んでくれたのよ。それも4回も!


バンノさんにはそれが理解できなかったそうなのだが、誰しも自分の名前だと、どんなに不明瞭でも分かるものだ。
母がちゃんと反応してくれて良かった。スガワラさんが来てくれたことが、本当に嬉しかったんだろう。

「あの病院のヘルパーはいいわね。
 辱創ができないように、クッションや枕を沢山使ってちゃんとしてる」
(※クッションは大小4つ、自宅から持ち込ませてもらった)

バンノさんがかなり驚いた、スガワラさん流のチェック。でも、現役看護師だから患者の扱いには慣れている。私は彼女が母を乱暴に扱ったとは全く思わないし、何よりもそうやって母の状態を気にしてくれたのが嬉しい。

「こんなに気にかけていただいて、母も幸せです」

私がそう言うと、スガワラさんは興奮気味に答えた。

「Nishiko母さんの人徳よ。今日行って、本当に良かった。
 もう一息よ!って、Nishiko母さんに言ったの!」

脳幹出血がどういうものか、どれほど死亡率が高く、どれほど重い障害が残るのか、看護師なら分かる。だからこそ、自発呼吸もままならなかった重篤状態から脱し、不明瞭でも発声までするようになった快復ぶりに驚いたのだろう。

「私が元気もらっちゃった!!」
何回も何回も、スガワラさんは弾むような声で言った。


スガワラさんの話を聞いて、今度は私が元気をもらった。
他人がここまで喜んでくれるとは。それほどの快復ぶりだとは。
母が本当に頑張っていて、それが今に繋がっているんだということを改めて感じた。
そして、その母の頑張りも、こうして気にかけてくれる人達や病院スタッフの支えがあってこそ。
家族さえ面会に来ない、病院に預けっぱなしにされている患者さんもいる中で、母はとても幸せだと思う。





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Last updated  2007.02.23 00:58:00
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