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カテゴリ:日本映画(1951~60)
「いとはん」とは大阪の言葉で「良家のお嬢さん」のこと。老舗の“醜女”、いとはんを中心とした、人の心の揺れ具合と真心の有り様を描いた秀作。
評価:☆☆☆☆ 大正時代の中ごろ、大阪船場の扇子屋には三人娘がいた。そのうち長女(京マチ子)一人が妹たちとは似ない不器量な顔立ちであったが、その心根は美しかった。不憫に思う母親(東山千栄子)は、娘が心を寄せる番頭(鶴田浩二)との縁談を進めるが、彼には心に決めた女性(同じ扇子屋の小間使い。小野道子)がいた……。 映画的には、冒頭シーンの移動撮影やケンカ場面での俯瞰など、伊藤大輔作品の特長が存分に発揮されていて、見所も多い。また、当時、「導入されたばかりのアグファカラー・ネガによる、落ち着きのある色彩」(byフィルムセンターの資料)も味わいがあって良い。 しかし、それよりも何よりも、特筆すべきは京マチ子。後年の『モンスター』のシャリーズ・セロンもびっくりの、“おかめ顔”のメイクもびっくりだが(どのようにメイクしたのだろか)、一つ間違えると、ただのいじけた娘にしかならない役所だが、“いとはん”育ちの良さが滲み出た、明るくて屈託のない様子を大好演している。この京マチ子の演技を観るだけでも、この映画に行く価値はあると思う(とくに物干し台?で口ずさみながら花に水をあげるシーンは必見)。 ラストがやや尻切れトンボの感はぬぐえないが(原作も?)、アンハッピーエンドながら見た人を幸せな気落ちにするという、希有な一遍。 『いとはん物語』 【製作年】1957年、日本 【配給】大映 【監督】伊藤大輔 【原作】北条秀司 【脚本】成澤昌茂 【出演】京マチ子、矢島ひろ子、市川和子、東山千栄子、鶴田浩二、小野道子、浦辺粂子 ほか お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.03.07 10:53:23
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