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分太郎の映画日記

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2007.03.12
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 1938年に徴兵・従軍先の中国で戦病死した山中貞雄監督の追悼映画として、その翌年に東宝が製作したもので、時は幕末、新選組による池田屋騒動が起こる直前の、さびれた宿屋を舞台に、そこ一家と逗留客、新選組の平隊士などとの交わりを描いた秀作。

 山中貞雄原案ということと高峰秀子が出演しているということで、フィルムセンターで開催中の「シリーズ・日本の撮影監督(2)」にて鑑賞(2007/3/4)。
 評価:☆☆☆☆


【あらすじ】
 幕末の京都。大繁盛する池田屋と小さい橋をはさんで斜め前に位置する宿屋・大原屋は、かつての隆盛も何のその、現在の客は長逗留する絵師の滝川(河原崎長十郎)ただ一人であった。主人の彦兵衛(助高屋助蔵)は、商売も顧みずに池田屋の主人と将棋差しに明け暮れる毎日で、長男の彦太郎(中村翫右衛門)は友禅の染職人、長女のお咲(山田五十鈴)が芸妓として家計を支えていた。
 次女のおつう(高峰秀子)は、見回りで家の脇を頻繁に通る新選組の若い隊士・松永(市川扇升)に淡い恋心を抱いている。彦太郎は、新選組の松永と茂木(市川莚司=加東大介)が川で自ら服を洗っているのを見て、選択屋の商売を思いつき、父に反対されながらも新選組の屋敷に出入りし始める。一方、芸妓の奉公先が近所のお咲は、滝川の顔を見たいこともあって何かと実家に帰ってくるが、兄と父はいい顔をせずに追い返そうとする。
 そんなある日、滝川のもとを武家の奥方とおぼしき女性・藤堂芳江(千葉早智子)が訪ね、親しく談笑を交わす。そこへ、長州人である芳江を探しに新選組が乗り込んできた。その場は、押し入れに隠れていたお咲の機転で事なきを得るが、懸念した滝川は、芳江に故郷へ帰ることを勧めるが……。
 そして、新選組による池田や討ち入りの日がやってきた。


 本作品は、山中貞雄が企画しながら映画化されなかった「三条木屋町」を中心に、時代劇映画に確信をもたらしたシナリオ集団“鳴滝組”(山中もその一員)の面々(稲垣浩、三村伸太郎、滝沢英輔、藤井滋司ら)が梶原金八名義で脚本化し、同じくメンバーの萩原監督が演出、山中監督の遺作となった『人情紙風船』に主演した前進座の面々が総出演で映画化したもの。

 たぶん長州出身の絵師・滝川を狂言回しとして池田屋騒動を描くのかと思っていたら、上のあらすじに記したように、大原屋の一家と滝川、新選組の平隊士(長州人と酒を酌み交わした“罪”で節婦する隊士も描かれる)に焦点を当てた群像劇であった。
 歴史の流れとは関係なく生きる庶民の姿と、一人の人間として生きていこうと思いながら組織の掟に雁字搦めになっている隊士の姿を、それぞれ丁寧に描写しながら、池田屋事件という大きな歴史の転換点をあぶり出そうとする。そこには、(現存する3作品しか観ていないが)やくざ者やその日暮らしの浪人などを生き生きと描いてきた山中貞雄へのスタッフの篤い想いが感じられる。

 役者として、お咲役の山田五十鈴が絶品であった。とくに、居酒屋で一人酒を飲み、途中から父親と酒を酌み交わすシーンの、何とも言えない表情が素晴らしい。また、兄とのいがみ合いも、表面では喧嘩しながらも、心底では互いを思いやる心情が出ていてvery good。

 ストーリー的には滝川がただの傍観者になってしまっているところがもったいないように思うし、演出としてもとくに池田屋騒動での立ち回りなどは、これが山中監督だったらと思わないでもないが、歴史の大きなうねりの中に生きる市井の人々を捉えた作品として秀逸と思う。

『その前夜』
【製作年】1939年、日本
【製作】東宝映画(京都撮影所)
【監督】萩原遼
【脚本】梶原金八
【原案】山中貞雄 「三條木屋町」
【撮影】河崎喜久三
【出演】河原崎長十郎、助高屋助蔵、清川玉枝、中村翫右衛門、山田五十鈴、高峰秀子、今成平九郎、瀬川菊之丞、橘小三郎、市川莚司(加東大介)、山崎島二郎、千葉早智子 ほか





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最終更新日  2007.04.03 15:02:09
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