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分太郎の映画日記

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2007.03.23
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 小津安二郎監督の『東京物語』などで助監督を勤めた高橋治の監督デビュー作品。高橋監督はこの後、1965年に松竹を退社して執筆活動に入り、1984年に「秘伝」で直木賞、1988年に柴田錬三郎賞、1996年に吉川英治文学賞を受賞している。
 また本作は、後に『青春の殺人者』『十八歳、海へ』『瀬戸内少年野球団』の脚本を執筆する田村孟の脚本家としてのデビュー作でもある。

 『彼女だけが知っている』 評価:☆☆☆


【あらすじ】
 師走の東京。警視庁の捜査本部の夏山巡査部長(笠智衆)は杉刑事(渡辺文雄)とコンビを組んで、4日ごとに繰り返される連続婦女強姦殺人の捜査にあたっていた。
 夏山の一人娘・綾子(小山明子)は杉刑事の婚約者。クリスマスイブのデートも捜査のためにすっぽかされてしまったが、それでも杉のアパートにプレゼントを届けにいく。その帰り道、綾子自身が強姦殺人魔に襲われてしまう。幸いにも人が酔っぱらいが通りかかったため、殺されずに済んだ。
 深夜、帰宅した夏山は、妻・とし子(水戸光子)から娘が4番目の被害者になったことを聞いて愕然とする。恋人の杉刑事には絶対に知られたくない綾子の気持ちを案じる父親の思いと、事件解決のため唯一の生存者として証言してほしい警察官の立場との間で大いに悩むが、現場で犯人の遺留品らしきものを見つけた夏山は、翌朝、捜査課長にだけ事実を告げ、秘密捜査に専従することになった。
 その頃、綾子は、一人で考えたいと家を出て友人のところへ身を隠していた。自分の味方といってくれた母親だけに居所を教える。
 犯人の遺留品からの捜査は行き詰まってしまう。あまりにも手掛りが無さすぎて、焦りを覚える夏山たち。とし子は迷った末に杉刑事に打ち明けることにした。しかし、駆け付けてきた婚約者の杉刑事に対して綾子は、一生同情されて暮らしたくはないと拒んでしまう。
 そして、逡巡していた綾子がようやく決心したとき、五番目の被害者が出てしまった……。


 ミステリ映画として観ると、犯人造形がおざなりだったり、夏山の刑事としての人物描写も物足りなかったり、犯人逮捕のときの綾子の関与はまずかろうとか、あれこれ不満はないわけではない。
 しかし、強姦されて傷つき、家族・婚約者との関係でさらに悩みを深める娘を中心と考えると、60分強という短い時間の中でテンポよくその心理的な葛藤を描き出していて、犯罪被害者の回復と自立を描いた社会派ものとして秀逸だと思う。

 それにしても、笠智衆がサスペンス映画の刑事というのは、意表をついたキャスティングのように感じられるが、これは長年、小津監督のもとで笠を見てきた高橋監督が、確信犯的に、小津映画での笠の役どころである父親像を打ち破ろうとしたものだろう。
 そして本作での笠智衆の演技は、相変わらずうまいとは言えないものの、娘を気遣う父親の立場と、職責を全うしようとする刑事の立場に苦悩する役柄に、笠の朴訥とした味わいがマッチしていて、高橋監督のもくろみはひとまず成功したと言えるだろう。

 綾子の葛藤を表現するために斜めの構図を使用したり、陰影を強調した画作りなど、初監督作品とは思いがたい演出もよかったと思う。やはり巨匠の下では(知らずに)実力がつくということか。

 犯人の遺留品のコンタクトレンズが犯人の絞り込みの決め手になるのだが、1960年当時、すでにコンタクトが一般的だったのはちょっと以外。まぁそれなりの値段はしたのだろうが。

 中村八大によるジャズ風の音楽は悪くはなかったが、BGMの入れ方が過剰すぎたのは大きなマイナス。
 またラストで、事件の被害者(=捜査協力者)が事件解決の警察の慰労会に出席してしまうのは、いくら何でもありえないだろう。警察官の家族だからといって、レイプ被害者なんだから。
 その辺が減点要因で、☆は三つにした。


『彼女だけが知っている』
【製作年】1960年、日本
【製作】松竹(大船撮影所)
【監督】高橋治
【脚本】田村孟、高橋治
【撮影】川又昂
【音楽】中村八大
【出演】小山明子、笠智衆、渡辺文雄、水戸光子、三井弘次、松本克平 ほか





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最終更新日  2007.04.03 15:04:25
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