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テーマ:昔の日本映画(74)
カテゴリ:日本映画(1951~60)
バナナの輸入をめぐる人間模様を描いたコメディで、読売新聞に連載された獅子文六の小説の映画化。
東京・渋谷のシネマヴェーラ渋谷で開催中の「祝生誕100年!映画監督 渋谷実。」にて鑑賞(2007/3/24)。 『バナナ』 評価:☆☆ 岡田茉莉子はやはり綺麗であった。という感想でお茶を濁そうかと思う感じの出来かな。 少なくとも笑いのツボが今の時代にはあっていない気がする。まぁ、原作を読んでいないので何とも言えないのだが。 それでも☆二つにしたのは、津川雅彦の両親役の尾上松緑と杉村春子、岡田茉莉子の父親役の宮口精二ら、脇役が結構よい演技をしていたので(とくに尾上松緑が料理をする場面はそこはかとなく可笑しくて、作られた料理は大変に美味しそう)。 各種の映画データベースでは、岡田茉莉子のマネージャー役は三井浩次と記されているが、実際は【伊藤雄之助】が演じている(間違ったデータを孫引き……の結果だろう)。出番が少ないながら、例によって味のある演技を見せている。 映画の一つのキーワードに「青ぶく」がある。外見は、熟していないように見える青いままだが、中は成熟しきってしまっているバナナのこと。後半、岡田茉莉子が「青ぶく」というシャンソンの曲を作って、面倒くさそうに歌う場面があるが、ここが妙に可笑しい。 映画鑑賞後、何でバナナ輸入なのかよく分からなかったのでネットで調べてみた。 敗戦後の数年は進駐軍用にバナナが輸入されただけで、1950年に台湾からのバナナの輸入が再開。しかし当時は外貨不足によって、不要不急のバナナなどは輸入量が制限され、バナナの輸入権利を持つ業者も限られていたため、バナナは非常に貴重な果物で、値段も当然高価であった。1960年に台湾以外の国からの試験輸入が始まり、バナナの輸入が自由化されるのは1963年のことである。 この映画が公開されたのが1960年なので、まだ輸入制限措置がとられていた時代。 また、映画の中では唐突に思える、岡田茉莉子がシャンソン歌手になりたい云々だが、1955年頃からシャンソンブームがわき起こっていて、シャンソン喫茶なども出来るなど、当時は最高の盛り上がりを見せていたようだ。その辺りの状況を岡田茉莉子と杉村春子(シャンソン愛好の集いで、若い歌手に夢中になる)の場面で描いているわけだ。 というような時代背景をあらかじめ知っていれば、もう少し映画が楽しめたのかも知れない。 【あらすじ】(ネタバレ有り) 在日華僑総社の会長・呉天童(尾上松緑)の元に、今日も中国からの留学生という王(小池朝雄)が学費をせびりに来ていた。天童の一人息子・竜馬(津川雅彦)は、中古車のコンソルを買うために貯金していたが、まだ20万円ほど足りない。 友達の島村サキ子(岡田茉莉子)は、突然シャンソン歌手になると言い出し、溜まり場にしている喫茶店「キキ」のマスター宍倉(伊藤雄之助)をマネージャーに据えて、後援会の作成やリサイタルの準備を始める。バナナ仲買人をしている父親・貞造(宮口精二)の許可をもらうために、サキ子は竜馬と宍倉を同行して家に帰る。はじめは反対していた貞造も、竜馬が呉天童の息子だと聞くと矛先を納めた。竜馬の叔父・呉天源(小沢栄太郎)は神戸の大商人で、年間250カゴしか扱えない貞造に対して、天源は4000カゴもの輸入許可証をもっていた。天源に権利を少しわけてくれるように取りはからってくれれば、リベートとして20万円払うと言われた竜馬は、サキ子と一緒に神戸に向かう。サキ子の気っ風に惚れた天源は、竜馬に1800カゴの許可証を渡し、竜馬、サキ子、貞造の三人でバナナの輸入を扱い始めた。しかし、自動車売り場に行くと、目当てのコンソルはすでに売却されていた。 一方、竜馬の母・紀伊子(杉村春子)は、シャンソン愛好の集い、とくに歌手の永島(仲谷昇)に夢中になっていた。永島からパリの話を聞く集いで箱根の旅館へ泊った夜、紀伊子は永島と逢い引きしようとするが、いざその場になると彼女は永島に平手を打って逃げ出してしまった。 竜馬は銀座で王に声をかけられ、競馬や競輪をはじめギャンブルの味を覚えさせられお金を巻き上げられながら、バナナのクレームに関する儲け方法を聞いて実行して埋め合わせをしていた。じつは王は、奏者の会長としての天童の失脚を狙っている張許昌(菅井一郎)の手下であった。 サキ子のシャンソン発表会は予想以上の盛況だった。その頃、竜馬はバナナのクレームについて王と張のところへ問いただしに行くが、時分が騙されたことに気がつく。そこから脱出しようとしたところへ、警察が踏み込んできて、竜馬は逮捕されてしまう。 天童は、駆けつけてきたサキ子が竜馬のことを本気で愛してしまったというのを聞くと、時分が身代わりになるべく警察へと出向くのであった。 『バナナ』 【製作年】1960年、日本 【製作】松竹 【監督】渋谷実 【原作】獅子文六 【脚本】斎藤良輔 【撮影】長岡博之 【音楽】黛敏郎 【出演】津川雅彦、岡田茉莉子、尾上松緑、杉村春子、宮口精二、小池朝雄、小沢栄太郎、伊藤雄之助、仲谷昇、菅井一郎 ほか お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.06.08 15:47:27
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