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テーマ:昔の日本映画(74)
カテゴリ:日本映画(1951~60)
市川雷蔵の若様もので、明朗時代劇「濡れ髪シリーズ」の第一作。白黒。松村正温の脚本を加戸敏が監督。
東京・池袋の新文芸坐で開催中の「市川雷蔵変幻自在」にて鑑賞。併映は同じく股旅もの『 中山七里 』。 『濡れ髪剣法』 評価:☆☆☆☆☆ ご機嫌とりの家臣に囲まれていい気になっていた若殿が、許嫁に思い知らされて出奔、偶然にも自藩の江戸屋敷に奉公することになり……というドタバタお家騒動を描いた明朗時代劇で、主人公を演じた市川雷蔵の演技が大きく弾けた傑作。 「濡れ髪」シリーズの第一作だが、内容的には繋がりはないようで、基本的には股旅もののパロディ映画、という感じなのかな(『剣法』と『三度笠』しか見ていないので……) そもそも私は「濡れ髪」が何を意味するのか、よく分かっていなかったりもするのだが……(時代劇的には何かを象徴する用語なのだろうか? ご存知の方は教えてください)。 まずは、毎度同じような感想を書いているが、(とくに前半)随所で珍妙な騒ぎを引き起こす市川雷蔵演じる若殿様の姿は、抱腹絶倒の演技で素晴らしく、爆笑ものであった。 つくづく思うのだが、『おけさ唄えば』『影を斬る』『陽気な殿様』など、やはりコミカルな演技をさせると、市川雷蔵は他の時代劇役者に向かうところ敵無し状態なのでは無かろうか。もちろんニヒルな雷蔵は雷蔵で素晴らしいのだが。 欲を言えば、後半はよくあるお家騒動劇でややコミカルさが減ってしまうのがちょっと残念だが、ストーリーの展開上、致し方ないところか。とはいえ、ラストは綺麗におとしていたのだが。 随所に“ことわざ”を混ぜたセリフ遣いも笑わせて貰ったが、ラストのこの“おち”のためにあったようなもので、この辺の構成も素晴らしいと思う。 役者的には、八千草薫が演じた勝ち気な姫様が何とも言えずにかわいらしくて、無茶苦茶よかった。ちょっとすねるあたりは絶品。 もう一人のヒロイン、おみね役の中村玉緒も可憐ではあったが、私的には、役柄自体の差は如何ともしがたい印象を受けてしまった(この二人の現在の姿も、何となく評価に影響しているかも)。 「濡れ髪」シリーズは不入りということで第5作までで打ちきられたようだが、残りの『浮かれ三度笠』『濡れ髪喧嘩旅』『濡れ髪牡丹』も是非とも見てみたい(かつてビデオで出ていたので、探せば何とかなるか、な?)。 【あらすじ】(ネタバレあり) 遠州佐伯藩松平家の若殿・源之助は、ご機嫌とりの家臣に囲まれて、剣をとっては家中第一とうぬぼれていたが、それを見抜いた許婚の鶴姫――隣藩・小田切家の息女――は、彼女の近習・林主水に命じて、源之助をさんざんにいためつけた。源之助は猛反省し、お追従の若殿生活に別れを告げて、自分の腕を試すべく、城を抜け出して一人密かに江戸へと向った。 途中、ある茶店でだんごを無銭飲食して困っているところを、たまたま居合せた江戸柳橋の芸者・蔦葉に助けられ、お礼代わりに印篭を与える。そして、源之助が馬子に対応する様を見て面白がった、江戸の人入れ稼業の大和屋弥七の下に転がりこむことになった。源平と名乗り、姿は町人だが若殿感覚の抜けない彼の行動は、どこか頓珍漢だったが、弥七の娘・おみねはそんな源之助に好意を抱く。 その頃、若殿が出奔していなくなった佐伯藩では、次席家老・芝田が息子の敬四郎に源之助を探させる一方、城内では、顔を包帯で巻いた身代りをたてて、ホウソウに冒されて重体であると偽っていた。源之助を訪ねてきた鶴姫は、会うことが出来ないことを誤解して、先日の戒めで寝込むような軟弱者は嫌い、と怒って帰ってしまった。そして、父親の小田切但馬守に彼との婚約の解消を申し出るが、但馬守は笑って取り合わない。 一方、江戸家老・安藤将監は、若殿が重態との報に顔を綻ばせた。江戸藩邸では、主君の信濃守が病床にあった。若殿が重体であるいま、もし大殿が亡くなれば、将監の息子・采女に跡目をつがせ、そして鶴姫と祝言をあげさせることで、お家の乗っとりが可能になるからだ。じつは大殿の病気も、お抱えの御典医を通して少しずつ毒を飲ませていたのだった。 洗濯などの下働きに明け暮れていた源之助は、ある日、ふとしたことで弥七から、道楽としての剣と、必死の剣のあることを会得する。そして偶然にも、安藤将監の供人足に雇われた際に、行列の邪魔をする悪旗本を一人でやっつけて、何も知らない将監に若党として召しかかえられることになった。仲間の与平次から、将監の家中での勢力とその陰謀を知らされる。 鶴姫が上京して、縁談を断りに藩邸へとやってきた。将監の若党として顔を出した源之助を見て驚いた彼女は、采女の剣が見たいと言い出す。かつての源之助同様、采女も主水にやっつけられるが、将監配下で一番強い源之助が主水と立ち会うことになり、今度は源之助が勝った。密かに喜ぶ鶴姫。源之助は将監によって士分に取立てられ、ある料亭で蔦葉と再会する。 若殿がじつは出奔していて、敬四郎が捜索に江戸へ来ることをつかんだ将監は、待ち伏せて切り捨てることを源之助に命じた。一計を案じて敬四郎を救い、自分の住まいに匿った。源之助と敬四郎の会話を立ち聞きしてしまったおみよに、助力を求めた。 源之助は、安藤の使者として、但馬守に鶴姫と妥女との縁談を申し入れた。但馬守は若殿と気づくが、何かの策があるらしいと理解した鶴姫の助力もあり、最後まで源平で押し通した。 おみねは、腰元となって安藤家に住みこみ、安藤の陰謀を探っていた。妥女の口ぶりから、大殿の薬に細工があることを探りだし、それを知った源之助は、おみねを通して父に手紙を渡し、発狂を装わせた。大殿が狂ったのをみた将監は、主君を釣天井つきの“離れ”に閉じこめるが、源之助は与平次に“離れ”に細工を施すように依頼していた。 鶴姫との縁組がなった祝宴に、芸者・蔦葉が現れた。彼女が源之助に返すつもりで所持していた印篭を見て、将監の顔色が変わった。この印篭の紋の持ち主は源之助しかいない。すべてを悟った将監は、藩邸へと急行する。ちょうどその時、離れでは、頃合いよしとみた源之助が、久しぶりに父と再会、離れから救い出そうするところであったが、将監たちの方が一足早く、釣天井の仕掛けが作動してしまう。源之助は父とともに密室に閉ざされ、落ちてくる天井に圧殺されようとしていた……。 折から国元から次席家老が江戸へ出てきた。将監は、家臣たちを前に、大殿が入水して亡くなったことを告げ、お家取り潰しを避けるには采女に跡目相続をするしかないとはかり、一同の賛同を得るや、次席家老に用意していた書類に署名するよう迫った。そこに現れたのが源之助。じつは与平次に離れの床下に抜け穴を掘らせていたのだった。将監の悪事を暴いて切腹を促すが、若殿を葬ればと将監一党は源之助に襲いかかる。大立ち回りの末、将監を切り捨て、そして大殿も老中とともに無事な姿を現して、事件は解決をみるのだった。 源之助は鶴姫と馬を並べていた。「今度は私の勝ちですな」と源之助が言うと、鶴姫は「いいえ、私の勝ちです。負けるが勝ちと言いますので」と返すのだった。 『濡れ髪剣法』 【製作年】1958年、日本 【製作・配給】大映 【監督】加戸敏 【脚本】松村正温 【撮影】武田千吉郎 【音楽】鈴木静一 【出演】市川雷蔵(松平源之助)、八千草薫(鶴姫)、中村玉緒(おみね)、 阿井美千子(蔦葉)、大和七海路(千浪)、和泉千太郎(若林伊織)、潮万太郎(弥七の子分:与平次)、島田竜三(芝田敬四郎)、小堀明男(林主水)、本郷秀雄(将監の息子:安藤采女)、小川虎之助(鶴姫の父:小田切但馬守)、荒木忍(おみねの父:大和屋弥七)、羅門光三郎(将監の手だれの手下:室井久馬)、香川良介(安藤将監) ほか
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最終更新日
2007.05.21 15:59:34
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