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分太郎の映画日記

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2007.05.28
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 宮沢りえ主演『父と暮らせば』、原田知世主演『紙屋悦子の青春』などで知られる黒木和雄監督によるPR映画。
 タイトルからは何だか分からないだろうが、羊毛の宣伝のためのPR映画。だが、はっきり言って宣伝映画の枠を大きく飛び出した異色作。
 東京国立近代美術館フィルムセンター で開催中の特集上映「追悼特集 映画監督 今村昌平と黒木和雄」にて鑑賞。併映は『わが愛北海道』『日本発見シリーズ 群馬県』。

 『恋の羊が海いっぱい』 ☆☆☆☆

 羊毛の宣伝用に書かれた羽田澄子の脚本を、黒木監督が大きく改変して、全体をミュージカル調な仕上がりにまとめたもの。いや、これは(当時は)事件だ(ったであろう)。

 映画は森の中を疾走する少女のショットで始まり、続いて町を歩く(スーツ?を着た)女性(ペギー葉山)のショット、引き続き森の少女を映し出し、彼女が駆け抜けた先に拡がる牧草地と、羊の集団。そこで初めてナレーションが入る。
 引き続き、色鮮やかなセットを舞台にボディ・スーツを来た女性たちが踊りを披露。その後は、ある洋品店の2階にいるお針子たちの場面。ぎゅうぎゅう詰めになった仕事場で、彼女たちは早口の会話を取り交わし、お弁当を食べ、仕事をする。
 以降、斬新なカメラワーク、鮮やかな色彩、お洒落なファッション、様々なイメージが混じり合って展開していく。
 若きぺギー葉山が歌って踊る。
 男たちが次々と羊毛を刈っていく。その周りを走り回る冒頭の森の少女。
 そしてラストは、作詞:寺山修司、作曲:山本直純の主題歌で締めくくられる。
 ちなみに衣裳は森英恵。タイトルは寺山修司。

 正直、何が何だか分からないうちに進んでしまうのだが、その不思議な魔力に惹かれて目が釘付けになることは必至。いやー、これはミュージカル映画としても傑作ではなかろうか。
 (しかし、この文章を読んだだけでは、どんな映画か想像はつかないか……)

 というか、これがPR映画の枠内で作られたこと自体、驚異的としかいいようがない。
 ラストに出てくる「すべての繊維はウールをめざす」の文字は、スポンサー側の意向なのか、黒木監督のものなのかよく分からないが、そういう映画ではないことは確か。
 こういう作品が上がってくれば、それはスポンサー(と製作会社)と喧嘩になるわな、ふつう。

 お針子の場面では、九里千春、水垣洋子、五月女マリ、次の『わが愛北海道』で主演(助演か)した及川久美子など、当時の若手女優が多数出演して、強烈な印象を残している。

 現在では、PR映画という存在そのものがなくなってしまったと思うが(反面、広告代理店によるプロモーションビデオは全盛か。この辺、苦手なのでよく分からない)、ドキュメント映画史上に残る傑作(怪作)であることは間違いない。
 20分という短い作品なので、機会があれば意見することを強くお薦め。


『恋の羊が海いっぱい』

【製作年】1961年、日本
【製作】岩波映画製作所
【企画】日本羊毛振興会 (←名称不確か)
【監督】黒木和雄
【脚本】黒木和雄、羽田澄子
【撮影】清水一彦
【音楽】小野崎孝輔
【衣裳】森英恵
【解説】大平透
【出演】ペギー葉山、フォーコインズ、岡乃桃子、及川久美子、久里千春、五月女マリ ほか


自著
『私の戦争』

佐藤忠男著
『黒木和雄とその時代』






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最終更新日  2007.06.08 15:41:29
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