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分太郎の映画日記

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2007.05.31
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 『父と暮らせば』『紙屋悦子の青春』の黒木和雄監督による、東京電力の横須賀火力発電所の記録映画の第2弾。
 「水」を主題とした『海壁』に続く本作では、タイトル通り「火」をテーマに、いよいよ発電所本体の建設作業を捉えていく。
 東京・京橋の東京国立近代美術館 フィルムセンターで開催された「追悼特集 映画監督 今村昌平と黒木和雄」での上映を鑑賞。併映は『海壁』『東芝の電気車輌』。

 『ルポルタージュ・炎』 評価:☆☆☆

 『海壁』が埋め立てと防波堤つくりという、発電所建設の基礎の基礎のみを映していたのに対して、土台づくりに始まり、炉心の建設、配線や火入れ(点火式)まで、発電所の本体が形づくられていく様を克明に捉えていく。

 といっても前作同様、単なる記録映画ではなく、冒頭から、焚き火(キャンプファイヤー?)を囲んで若者たちが裸踊りをしているとおぼしきシーンから始まる(と私は思ったのだが、バレーらしい(^_^;)。ボカした映像なのでよく分からない)。
 また、ラスト10分くらいは、夜の東京・銀座の(ネオンに揺れる)映像を中心にしたモンタージュを、一切のコメンタリーなしで流したり、また全体的に松村禎三による音楽も前衛的だったりと、インディーズ作品の香りも濃厚に漂うような仕上がりだ。

 ただ、『海壁』が潜水夫や工事夫などの人間対自然を(ドラマチックかつ淡々と)撮りあげていたのに対して、本作では人の描写を極力廃し、機械の機能美を強調するために、建設に必要な科学技術の解説に終始してしまったような感じで、巨大建設物オタク(結構多いらしい)や発電所フェチな方にはともかくとして、私的にはあまり面白くはなかった。
 やはり、こういう建設ものは、“人”を中心に描かないと、共感の対象が乏しくなって、魅力が半減してしまう。前作の『海壁』が稀有な存在だ、と言うべきかもしれないが。
 もっとも私の子どもの頃にこの映画を見ていたら、当時想像されていた未来像を先取りしたような感じで、面白く鑑賞できたような気もする。

 ともあれ、科学技術に従事する人で、映画を趣味とするような人は、機会があれば、『海壁』とともに一度は目にしても損はないと思う。


『ルポルタージュ・炎』
【製作年】1960年、日本
【企画】東京電力
【製作】岩波映画
【監督・脚本】黒木和雄
【撮影】小村静夫
【音楽】松村禎三
【ナレーション】長門裕之


自著
『私の戦争』

佐藤忠男著
『黒木和雄とその時代』





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最終更新日  2007.06.20 14:43:56
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