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分太郎の映画日記

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2007.06.27
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カテゴリ:日本映画(2007)
 大ヒット作『クレヨンしんちゃん』のテレビ版はまったく見ていないが、映画版はクオリティが高く、三作目当たりからだいたいは見てきた(ここ2、3年はちょっと落ちてきた印象はあるが)。
 中でも2001年に公開された9作目『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』は、20世紀の日本(高度経済成長期)をテーマに、子どもは子どもなりの、そして大人は大人なりの楽しみ方が出来るという希有な出来の大傑作。とくに「クレヨンしんちゃん」の嫌いな人や、子ども向きと馬鹿にしているヒトには強くお薦めしたい作品だが、これを撮り上げたのが原恵一監督。
 ちなみに、第10作目の『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』も感動ものの傑作である。

 まえふりが長くなったが、その原監督が長年温めていた木暮正夫の原作(岩崎書店刊)を元に、オリジナル脚本でアニメ化したのが、この『河童のクゥと夏休み』。
 7月28日(土)からの全国公開を前に、一足先に試写会(6/21、九段会館)にて鑑賞。
【追記】8/11に、シネリーブル池袋にて鑑賞。細部まで作り込まれていることがよく分かった。

 『河童のクゥと夏休み』 評価:☆☆☆☆☆


【あらすじ】
 話は江戸時代、 河童の親子が池の埋め立てを止めてくれるように侍の役人に訴え出るところから始まる。父親がその侍に斬られたときに起こった地震によって、子どもの河童は地中に埋まってしまい……。
 時は現代。夏休み前のある日、小学生の康一は学校からの帰り道、偶然に河原で見つけた変わった石を持ち帰り、水で洗うと、中から出てきたのは河童の子どもだった。長い冬眠状態から目覚めたその第一声から、康一はクゥと名付け、最初は驚いていた家族もクゥを受け入れて、4人と1人の日常生活が始まった。そして夏休み、康一はクゥの仲間を捜すために遠野へと出かけるが……。


 非常に丁寧な作りの、良い作品だ。日本が日本である限り、あり続けるべきであろう心象と風景が見事に描き出されている。
 やはり上手い監督は何を撮らせても上手いなぁ。

 いろいろと誉め所はあるが、まずはキャラの描き方が非常に秀逸。
 主人公の康一は、密かに同級生の女の子・菊地が気になっているが、同級生の男子にからかわれると一緒になっていじめてしまうあたりは、私を含め、かつて小学生だった“男の子”たちには大いに得心するところがあるだろう。
 康一の父親の冴えないサラリーマン姿、母親のはきはき物をいう性格、妹の我がままぶりなど、家族の会話やあり方が非常に自然に描かれていて、very good。とくに、妹の言動には笑わせていただきました。

 また、河童の存在を知った後の興味本位のマスコミと世間の人々の姿は、どこかにいる他人ではなく、他でもない(映画を見ている)自分自身なんだと鋭く突きつけてくるようだ。

 人物の作画的にはやや不統一な部分もあったりはするが、背景美術も非常に綺麗で、例えば康一がクゥと出かけた旅先で泳ぐシーンなどは、そのまま自分も飛び込みたくなるほど透き通っていて爽やかだ。

 などという余計な情報を仕入れるよりも(^^;)、まずは映画館に見に行くことを強くお薦めしたい。

 と断った上で、ネガティブなことも述べておくと、全体で2時間20分近く、というのは親子で鑑賞するには(とくに子どもには)ちょっと辛い長さだと思う。
 まぁ『ハリー・ポッター』で長い映画にも慣らされていたりはするのだろうが、やはり2時間は切らないと子どもには薦めがたい部分はある。
 とくに東京タワーのクライマックス以降だけで30分近くあったりして、もう少し短くまとめた方が良かったと思う。その丁寧さが個人的には好ましくはあるのだが、試写会場で私の両隣にいた小学生は、やはり最後の方は飽きていたようだ。

 それと、映画の出来としては、大流行の宮崎駿監督作品などよりは格段に上だと思うが、如何せん“華”がない。映画全体として、非常に地味な印象は免れない。
 昨年の『時をかける少女』みたいにキャラ萌えも期待できそうにないし(まぁ主人公の同級生の女の子・菊池さん萌える人もいるかもしれないが……)、興行的には大きく苦戦するような気もする。
 でも、一見ありそうで中身のない宮崎映画なんかよりも、こういう映画こそ本当は大ヒットして、より多くの人に見て欲しい作品だと思う。
 鍵は、河童のクゥ自体を可愛いと思う層がどの程度存在するかかな。

【追記】2回目になる映画館で鑑賞した際に気になったのは、愛犬がなくなったときに、それを放っておいてクゥを追いかけるところ。せめて(誰かが)抱いていかないかな。

……というようなマイナス?要素も加味しても、いまのところ、今年の日本映画のベスト1か2、かな。
 『キサラギ』も候補ではあるが、老若男女を問わずに薦められる作品として、こちらの方が(私の中では)ちょっと優位な感じ。


河童のクゥと夏休み

【製作年】2007年、日本
【配給】松竹
【監督・脚本】原恵一
【原作】木暮正夫(『かっぱ大さわぎ』『かっぱびっくり旅』より)
【キャラクターデザイン・作画監督】末吉裕一郎
【美術監督】中村隆
【撮影】箭内光一
【音楽】若草恵
【声の出演】冨沢風斗(クゥ)、横川貴大(上原康一)、植松夏希(菊池沙代子)、田中直樹(康一の父:上原保雄)、西田尚美(光一の母:上原友佳里)、なぎら健壱(クゥの父親)、ゴリ(キジムナー) ほか

公式サイト
http://www.kappa-coo.com/
オフィシャルブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/kappa_coo2007



原作本
(岩崎書店)

公式ガイドブック

主題歌CD

CDオリジナル
サウンドトラック

DVD『クレヨンしんちゃん
嵐を呼ぶモーレツ!
オトナ帝国の逆襲』

『クレヨンしんちゃん
嵐を呼ぶ
アッパレ!戦国大合戦』





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最終更新日  2007.07.12 19:13:21
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