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分太郎の映画日記

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2007.06.30
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 浅野忠信主演のタイ映画。共演は、韓国のカン・ヘジョン(『トンマッコルへようこそ』など)、日本の名バイプレイヤー・光石研、香港のエリック・ツァン(『インファナル・アフェア』でのマフィアのボス役など)、タイのトゥーン・ヒランヤサップ等という国際色豊かなメンバー。
 東京・六本木のシネマート六本木にて鑑賞。

 『インビジブル・ウェーブ』 評価:☆☆☆

「愛する人を殺め、すべてを失った男が、旅先で見つけたのは、偶然と運命がもたらした不思議な女と、「本当」の自分――」
というのは、パンフレットに記されたキャッチコピー。

 罪悪感で混沌としていた男がマカオ→香港→プーケット→マカオ→香港と漂う中で、さまざまな人に出会い、自分の人生の意味に気付いていくという、一種のロードムービー。

 何とも言えず静謐な映画である。

 ストーリー展開からすれば、熱くどろどろとした作品になりがちだが、回想的に描かれる殺人の場面にしても、キョウジが何者かに襲撃されるシーンにしても、全編、できるだけ余計なものを省き、静かに淡々と描かれる。
 『裸足の1500マイル』や『上海の伯爵夫人』、『レディ・イン・ザ・ウォーター』などの撮影を担当したクリストファー・ドイルによる、緑を多用した色使いも、画面に独特の落ち着きをもたらしている。
 静謐ということでは、もちろん、途中、主人公が耳栓をするシーンに象徴的だが、できるだけ余計な音を省いている録音もそうだし、最近音楽過剰気味の映画が多い中で、聞こえるか聞こえないかの境目で使われるBGMもそうだ。

 そういう静謐感が、主人公の抱える罪悪感――ボスの命令で初めて人を、しかも自分が愛していただろう恋人を殺してしまった罪悪感が浄化していく過程を、くっきりと浮かび上がらせる(という意図だと思う)。

 それに輪をかけて、何を考えているのかよく分からないような浅野忠信の風貌と雰囲気が、映画全体にえもしれない彩りを添えている。というより、それだからこそ彼を主人公に起用したのだろう。

 ただ私的には、浅野忠信の起用が成功したようには思えなかった。

 彼の演技の特徴は、先に書いたように、何を考えているのか分からない、その没感情的なところにこそ魅力があるのだと思う。
 しかるに本作は、罪悪感で混沌とする魂が、不思議な女性とその赤ん坊への愛情や、さまざまな人の示唆的な言葉によって、徐々に人生の本質を見付だしていって救われるというものだから、主人公の心の変遷の微妙な機微が表現されなければならない(はずだ)。
 それにしては、彼の演技は感情表現に乏しく、主人公の心情(の変化)がこちらに伝わってこない(少なくとも私にはそうだった)。
 主人公が旅先で飲み物はミルクしか頼まず、また何度も吐くシーンがあるが、この意味が途中まで(初めて人を殺したとある人に訴えるまで)よくわからなかったし。

 そして、ラストの主人公の決断も、その感情移入しがたい浅野忠信であればこそ衝撃的ではあったが、今ひとつ納得のいく成り行きではない。どうにも唐突で不自然なのだ。
 もっともそれは、旅の途中で知り合い、愛情を抱くことになるカン・ヘジョの描き方が中途半端なことにも関係する。
 彼女とのエピソードが練り込み不足なために、浅野との関係は単に一方通行の“一目惚れ”でしかなく、復讐に固まっていた心情が翻意させるまでに至るとは思えないのだ。
 なので、観客(私)には戸惑いしか残らない。

 また、如何にも思わせ振りなイコン(船室の壁に書かれた文字だとか)があちこちに散りばめられているが、あまり効果的だとは思えず、そもそも私はこういう虚気おどし――製作者側にも明確な意図が用意できていないにもかかわらず、それらしい物を配置することで、オタク連が喜んで当て推量するようなアレコレ――は好きでない。多くの場合、メインのストーリーがきちんと描けないことの“逃げ”にしかなっていないからだ(その端的な例が『マトリックス』シリーズだろう)。

 タイトルは、プーケットが舞台だから、当然、2004年12月の(地震による)大津波と関係があるのかと思ったら、監督によれば「本当にタイトルの意味するものは分からないのです」とのこと。うーん、何だそれ。
 こういう辺りも主題を明確にもっていないようで、好きになれないなぁ。

 ということで、映像としては見るべきものはあると思うが、作品としてはわざわざ劇場で鑑賞することをお薦めする感じではないかな。


【あらすじ】
 マカオ。キョウジの粗末な下宿に、艶やかな女性セイコが訪れる。料理人である彼の手作りのディナーを楽しみながら情事にふけるが、彼女は裸のままもがき苦しんで死んでしまう。キョウジがワインに毒を入れたのだった。
 翌日、香港のレストランに出勤すると、ボスから休暇を楽しんでこいと言い渡され、帰りの途中、僧侶からタイのプーケット島への切符と金、リザードという男の連絡先を受けとる。
 船に乗り込むと、キョウジの船室は、電気もまともにつかないような粗末な部屋だった。船内散策の途中、赤ん坊を連れた若い女性ノイと知り合う。旅行は忙しい恋人からのプレゼントという。出会ったばかりのキョウジに娘を預けてプールで泳ぐなど、あけすけな性格に、キョウジは強く惹かれていく。
 ドアが開かなくなるトラブルや日本人のバーテンダーと知り合うなどするうちに、船はプーケットに到着した。ノイから携帯電話の番号を聞き出したキョウジは、安ホテルに身を落ち着ける。両替と買い出しから戻ったキョウジは、何者かに襲われ、すべてが入ったバッグを盗まれてしまう。困ったキョウジは香港のボスに連絡をとり、アロハを着た男に会うのだが……。


インビジブル・ウェーブ』 Invisible Waves

【製作年】2006年、タイ・オランダ・香港・韓国
【配給】エス・ピー・オー
【監督】ペンエーグ・ラッタナルアーン
【脚本】プラープダー・ユン
【撮影】クリストファー・ドイル
【音楽】フアラムポーン・リッディム
【音響】清水宏一
【出演】浅野忠信(キョウジ)、カン・ヘジョン(ノイ)、光石研(アロハの男)、エリック・ツァン(僧侶)、トゥーン・ヒランヤサップ(ボス)、久我朋乃(セイコ) ほか

公式サイト
http://www.cinemart.co.jp/iw/





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最終更新日  2007.08.16 10:07:10
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