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分太郎の映画日記

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2007.03.26
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 イスラエル占領下にあるゴラン高原(元シリア領)に住む女性が、シリアの男性に嫁ぐ日の一日を描いた作品。アテネ・フランセ文化センターで開催されたイスラエル映画祭2007にて鑑賞(2007/3/23)。

 『シリアの花嫁』 評価:☆☆☆☆☆

 いや素晴らしい映画であった。

 正直なところ、20年くらい前の学生時代にパレスチナ関係の書籍を10冊くらい読んだことはあるが、イスラエルとアラブについて私自身、結局よくわかっていないので、大きく勘違いしている部分もあるのではないかと思うが。

 イスラエルとシリアとの敵対関係から、一度国境を越えると二度と戻って来ることはできず、本来最も幸福であるはずの結婚式は、最も悲しい日でもある。そんな逆説的な一日を通して、娘の心のゆれや家族の葛藤などを丹念に描き出していく。
 嫁ぐ娘の、喜ぶような悲しむような微妙な表情がとてもよくて、とくに直接には一度も会ったことのない旦那との相性がわからず「怖い」とつぶやく姿は印象的だった。

 前半は、外国人女性と結婚したために追放されてしまうような閉鎖的で、しかも女性に対しても抑圧的な社会(村)と、それに翻弄される家族の有り様を、さまざまな小さなエピソードで紡ぎだしていく。加えて、イスラエル警察や赤十字に勤務する職員、シリアの旦那などの小さな物語も巧みに交ぜられていく。
 そうして描かれた伏線のあれこれが、後半の国境緩衝地帯での一種のドタバタ劇へと収斂していく、このあたりの監督による演出の手腕はじつに見事である。そこから、国際政治的にひかれた国境線によって、人々や土地が分割されたことの矛盾や悲劇、不条理が劇的に明るみに出てくる。

 また90分という短い尺の中で、様々なエピソードを描きつつ、複雑な政治的背景も手際よく説明する語り口も、うまいとしか言いようがない。

 ハッピーエンドで終わると思ったらば、最後はたぶん悲劇を強く予感させて終わる(あらすじ参照)。
 姉に向かって静かに微笑むと、たぶん待っているであろう悲劇に向かって決然と歩き出す花嫁の姿は、とても美しく綺麗で、そして悲しい。しかし、カメラはそれを見届けることはしない。この矛盾して不条理な社会に対して抵抗を決意したように、毅然として歩き出した(花嫁の)姉の姿をいつまでも追って、映画は終わる。ものすごく余韻の残るラストだった。

 世界のあらゆる人が、性別や人種、民族の違いを乗り越えて、同じ“人間”として暮らしあうには、まだまだ道遠し、なのだろうか。
 いろいろな意味で必見の映画と思う。

 なお本作は、モントリオール映画祭でグランプリを受賞している。


【あらすじ】(ネタバレ有り)
 1967年の第三次中東戦争の結果、それまでシリア領だったゴラン高原をイスラエルが占領。シリアとの間にはノーマンズランド(国連の監視下にある緩衝地帯)に近い、ドゥルーズ派(少数派のイスラム教徒←イスラムではないという考えも主流みたい)の村に暮らす人々は、パスポートに“無国籍”と記されることを強いられて生きていた。

 その朝、この村で生まれ育ったアマル(ヒアム・アッバス)は、二人の娘と一緒に、妹のモナ(クララ・フーリ)を美容院に連れていく。今日はモナが、親族でシリアのテレビスターである男の元へ嫁ぐ日だった。一度国境を越えてシリアへ行くと、二度と戻ってこられず、永遠の別れになってしまう。モナは一度も男にあったことがない。
 家に戻ると、村の長老たちが父親のハメッド(マクラン・J・コウリ)に「息子が戻ってきて迎えいれると村から追放する」と釘を刺していた。アマルの上の弟ハッテム(エヤル・シーティ)は、8年前にロシア人の女医と結婚したため、閉鎖的な村に帰れなくなっていた。また、ハメッドはかつて親シリア派の政治犯として投獄され、いまもイスラエル警察に監視される身で、国境へ娘を見送りに行くことを禁じられていた。
 長老たちが帰っていくと、その日新しく就任するシリア大統領を喜ぶデモの呼び掛けがあり、モナ一人を残して家族はみな出かけていく。

 その頃ハッテムは妻子とともにタクシーで村に向かっていたが、デモに道を塞がれ、運転手に村の反対側で降ろされてしまう。困っているところに車で通りかかったのが、真ん中の弟マルワン(アシュラフ・バルホウム)だった。彼は貿易商としてイタリアを中心に飛び回っていたが、ハッテムと同じく、妹を祝福し見送るために帰ってきたのだった。
 ハッテムとマルワンが家につくと、母親、アマル、モナらは涙を流して喜んでくれたが、ハメッドは口を交そうともしない。ハッテムは、家で行われた宴席にも出られずじまいだった。アマルの長女は、デモから帰ると密かにボーイフレンドと逢っていたが、アマルの夫アミン(アドナン・トラブシ)に見つかってしまい、「“反逆者”と付き合わせる訳にはいかない」とモナの見送りも禁じて謹慎させる。一方、アマルは妹のために意を決して警察に行き、父親の外出許可をもらってくるが、ハメッドは「プライドを傷つけるようなことはするな」と悦ばない。

 モナを国境へ送る時間がきた。
 アマルは家族を先に行かせると、自分の車に娘とハッテム親子を乗せて国境へと向かう。モナたちが国境につくとシリア側には、シリアの大学に通う末の弟が来ていた。花婿はバスのパンクでまだ到着していなかった。少し遅れてアマルたちが到着する。待つ間に、アミンが具合いが悪くなって倒れてしまった。とっさに彼を手当てしたのはハッテムの妻だった。
 隠れていた警察官がハメッドを逮捕して連行しようとするが、ハッテムは「自分は弁護士だ。逮捕状がなければ不当逮捕だ」と非難する。ハメッドは見逃された。

 ようやく花婿が到着した。仲介の赤十字の女性ジャンヌ(ジュリー=アンナ・ロス)が、イスラエル担当官の手続きを受け、モナのパスポートを持ってシリア側の検問所に行くと、パスポートにイスラエル出国の印が押してあり、シリアはあくまでも国内移動という立場なので、受けつけられないという。今までの時は印はなかった。イスラエル側の検問所に戻って事情を担当官に聞くと、規則が変わって出国印を押すことになったという。
 イスラエル側とシリア側を何度も行き来する赤十字のジャンヌ。じつは彼女は今日で任務を離れることになっていた。
 さまざまな方策を考えてみるがうまく行かず、陽はどんどんと傾いてくる。ジャンヌは帰国の飛行機を逃してしまった。ようやくシリアの管理官が秘策を思い付く。印を修正液で消してもらい、印は押してあるが見えない状態にするのだ。モナは家族に最後の別れを告げた。娘を見送るハメッドは、息子ハッテムの肩にそっと手をかけた。ハッテムは妻を父親に紹介する。

 しかし、いざジャンヌがシリア側に行くと担当官は交代していて、新たな担当者はやはり受付できないと拒否する。もう自分にはどうすることも出来ないと、ジャンヌは投げ出してしまう。
 イスラエル側の自分の村に帰ることも、シリアに入国することも出来なくなってしまったモナ。ゲートをすり抜けた彼女は、アマルに向かって静かに微笑むと、決然とシリアの花婿の方へと歩み出すのだった……。



『シリアの花嫁』 Syrian Bride

【製作年】2004年、イスラエル、フランス、ドイツ
【監督】エラン・リクリス
【脚本】スハ・アラフ、エラン・リクリス
【撮影】ミハエル・ウィズウェグ
【音楽】シリル・モリン
【出演】ヒアム・アッバス、マクラン・J・コウリ、クララ・フーリ、アシュラフ・バルホウム、エヤル・シーティ、ジュリー=アンナ・ロス、アドナン・トラブシ ほか

映画評
http://electronicintifada.net/cgi-bin/artman/exec/view.cgi/11/3592





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最終更新日  2007.03.26 16:31:28
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