著者のアルフォンソ・カサスさんは、スペインの人気イラストレーターだそうです。
宇野和美・小原京子訳。
何処のサイトだったか忘れたけれど、何ページか画像が出ていて、
メアリー・オースティンとフレディと思しき男女が心地よさそうに
花の咲く原っぱに寝そべっている絵が童話の挿絵の様に
きれいだったし、
英語圏の人じゃない人がフレディをどう描くのか興味があった。
ザンジバル島での誕生からHIV感染による肺炎で死亡するまで
いくつかの知らなかったことと、
もう知っている事が並んでいて、この歳にはやっぱりこういう事をしていて、
この頃にそんな風になってたんだな、と思いながら読んだ。
登場人物ほぼフレディ一人。と猫。
クイーンメンバーは「Sheer Heart Attack」のジャケットくらい、
(あ。ブライアンは「QueenⅡ」のジャケットでちょっと。)
メアリー・オースティン、ジム・ハットンも各1回くらい。
目が全員「点」。(メアリーは目を閉じていたけれど)
でも、
あんな不世出のロックスターの、
彼以外の誰にもできない経験に対して彼が抱いた感情や孤独感なんて、
どうやって表現しろっていうんだろう
表現しようとしたとしても、多分ぜんぶウソくさい。
「点」目のおかげで、フレディの気持ちを、深さを
想像する余地ができた。
ポール・ブレンダーがフレディを売ってエイズだとマスコミにリークし、
ガーデンロッジの自宅周辺が記者だらけになったところは
群がる記者たちを描かず、
窓のカーテンを少しだけ開けて見下ろす眉が悩まし気に下がった
フレディを描いた。
悩みも悲しみも人一倍あっただろうフレディの感情が出た顔。
「点」で喜びも悲しみもとまどいも安らぎもぜんぶ表現した。
そうすることで読む人の心を、
フレディが経験した沢山の
フレディ以外には耐えられないであろう感情の襲撃から守るかのようだ。
そんな中で、キモノをまといハンドマイクを構えたフレディの目をつぶった表情は
心地よさそうで得意げだ。
ああよかった。
スペインの人にも、フレディはキモノにご満悦だと見えたんだ。
きっとご満悦だったんだろう。日本のファンへのサービスというだけでなく
気に入ってくれたんだろう。
よかった。
オールカラーで色合いが落ち着いてとても美しい。
花が処々に描かれている。
フレディの、穏やかで、きっと気を遣う性格が、すごく出てると思う。
アルフォンソさん、ありがとう。
フレディをこんなに美しい星々、花々で囲み
猫たちをまつわりつかせてくれて、
ありがとう。
美しい物語と美しい絵を、ありがとう。
グラフィック伝記 フレディ・マーキュリー [ アルフォンソ・カサス ]
ああ、ひとつ、お願い…どうぞ、
「ジョン・ディーコンはバンドを脱退した」と書かないで。
引退…じゃ、だめなんでしょうか。