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2005年09月27日
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カテゴリ:育児
赤子を託児所に預け、買い物をしていると携帯が鳴った。

電話に出ると託児所の園長さんだった。
(「託児所」というからには「所長」なんだろうけど、所長というとまるで女囚映画みたいなので「園長」ということにします。)

狸さん(うちの赤子もうすぐ1歳半)が怪我をしたそうだ。

 保母さんの一人が、プレイスペースと入り口のスペース(ここで子どもの靴や靴下を脱がせて裸足にしたり、ロッカーに予備の服をしまったりする)を区切るドアを開けた時に、その向こうに狸さんが座っており、狸さんの足の指を思い切りドアで挟んでしまったそうだ。足の親指から、血が出て、爪が真っ黒になっているという。「歩けるので骨は折れていないと思うが一応医者に連れて行ったほうがいいと思う」との電話だった。

 このドアはガラスなのだが、大人の腿ぐらいの高さまで半透明の草の模様がプリントしてある。これがくせもので、この草のプリントが光を反射してこちらがわにある物を映すせいで、注意していないとドアの向こうがよく見えない時がある。

 あわてて迎えに行った。迎えに行く途中、近所の小児科医に携帯から電話。明日でないと診られないという。仕方がないから明日に予約を入れた。
 
 託児所に着いてみると、狸さんはオムツを替えられている最中で、ぬいぐるみのプーさんを抱きしめながら、まだヒックヒック泣いていた。私を見ると堰が切れたように大泣き。とりあえず抱っこして確認すると、足の親指の爪全体が血で真っ黒になっている。見るからに歯が浮くほど痛そうだ。大人でもこれは痛い。ばい菌でもはいっていたら、腫れ上がったり膿んだりして大変なことになるのではないのだろうか?

 おそらく狸さんは、怪我をさせた保母さんがプレイスペースを出る時についていって、ドアのところで待っていたのだろう。それを不注意のせいでこんな怪我をさせるなんて、狸さんが不憫な余り、怒りがこみ上げてきたが、とりあえず自分を押さえた。

 園長が、「怪我した部分を水で冷やした」「痛みのショックを和らげるためと腫れをおさえるために、ホメオパシーのアルニカの砂糖玉を10粒与えた」「歩けるか確認したら歩ける。骨は折れていないようだ」などと、すでにした処置を私に説明。私が近所の小児科医では明日にならないと診て貰えない旨を話すと、園長は「PMI(母子保健所)の医師が診られないか電話してみる」と、近所のPMIに電話した。検診の予約でいっぱいで診られないとのことだった。(それに本来PMIでは検診以外はしないことになっている。もちろん区役所の託児関係者同士では融通がきいたりすることもあるからこそ、園長は電話したのだろうけれども。)

 「ロベール・ドゥブレ(パリ市内の子ども専用の病院で小児科専用の救急でも有名)に連れていってもいいと思うか?」ときいてみたら、「この程度の怪我だと、2~3時間待たされた挙げ句他へ行けと言われるのがオチなので病院(*)に行くのはやめたほうがよい」と言われた。

 子ども怪我をした時にすぐに診て貰うこともままならない。インフラにせよなんにせよパリ中心主義のフランスにおいて、そのパリでさえこうなのだから、地方だったらもっと大変なのかもしれない。フランスってこれでも先進国のつもりなのだからなんとも見上げたものだ。

 園長や保母さんたちと「明日まで待たずすぐ診て貰うにはどこに連れていけばいいのか」という話をしつつ、頭の隅で、「この人たち、いつ謝るのかな。謝らないってのもフランスだとありそうだな…」などと思っていたが、さすがに最後に園長が謝罪の言葉を述べた。
 そして、謝罪の言葉と同時に「もしよかったら、これから週5日預けませんか?」と5日目をオファー(もちろん無料ではないけれども、ウェイティングリストで待っている人が多い中、週5日も預けられるのはかなりの優遇である)。お詫びのつもりなのだろうけど…おいおいもしもしおいおいおい…もうちょっと間をおいて欲しかった。怪我させられたばかりなのに、そのお詫びとしてもう1日オファーされても、すぐには喜べない。お返事はあさってまで保留することにした。

託児所を出て、その足で薬局へ。
小児科医には明日にならないと診て貰えないが、何もしないで放っておくのは忍びない。薬局で、事情を説明して狸さんの足を見せたところ、「レントゲンをとったほうがいいんじゃないか」と、近くの私立のレントゲン専門センターを教えてくれた。

これも当然ながらかなり待った。赤子にちょっかいを出してくるばあさんやじいさんたちと話をしたり、愚図る狸さんを抱っこして廊下で踊ったり。
 私が、廊下の隅でこそこそ狸さんにおっぱいをやっている間に、おばあさん二人組が、スタッフに向かって「赤ちゃんが可哀相よ。昼ご飯食べてから今まで何も食べてないんですって!」とギャアギャア騒いでくれたため、本当はもっと待つはずだったのに、そのおばあさんたちのすぐ後に診て貰えた。
 「赤子がいるので順番飛ばして早く診てくれ!」とは自分からはとても言えないし、自分から言ったのでは「赤ん坊がいたって順番は順番だから」と木で鼻をくくられるように言われてしまう確立も高い。騒いでくれたおばあさんたちの親切には本当に助かった。

で、レントゲンの結果、骨には異常はなかった。良かった良かった。

となると、あとはバイ菌でも入らないように気をつければ良いだけだろう。
とりあえず、明日はまたさっき予約した小児科医に連れていくし、あさっては検診だから、3日連続して違う医師に怪我を診て貰うことになり、ひとまず安心した。


(*)こちらでは、病気や普通の怪我で「病院(オピタルhopital)」に辿り着くのは容易なことではないようだ。緊急措置をしないと生死に関わるような大怪我か、そうでなければ、「一般医(全般を診る町医者)の推薦で専門医→専門医の推薦で病院→やっと病院」という経路でなければなかなか行けない。日本人旅行者の海外旅行保険などと連携しているヌイイのアメリカンホスピタルなどは別のようだけれども。
 最近行われた社会保険の改悪では、いくつかの例外をのぞき、主治医の紹介や処方箋無しにいきなり専門医にかかると保険の払い戻しの率が低くなるなど、ますます、専門的な医療や高度な医療を受けにくくするシステムとなっている。狸さんのレントゲンも、医師の処方箋や紹介無しで直接行ったので、おそらく払い戻し率は低いであろう。
 日本は乳幼児医療が無料で、医者にかかった時の代金が「薬の容器代50円」などですむそうで、羨ましい話だ。





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最終更新日  2005年09月29日 07時20分02秒
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