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2005年11月17日
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カテゴリ:時事
FN(フロン・ナショナル、国民前線)ジャン=マリー・ル・ペン氏。
2002年の大統領選で、指導者層の意表をつき、最終戦に残ってシラクと対決。
結局ル・ペンが破れたものの、この事件で、社会党支持者の政治意識の低下していること(バカンスに行くので投票をさぼったなんていう人が多かった)、及び、いままでどちらかというとマージナルに見られていたFNが、予想外に大きな支持層(労働者などの庶民層)に支えられていることが判明。

私もフランスに生きる一人の外人である。だから、個人的にこの人には政権を握って欲しくはないが、もし実際に会ったら「一緒に記念写真撮ってください」「あ、ついでにサインも…」と言ってしまうかもしれない。非常にカリスマ性のある人なのだ。2002年の大統領選最終戦の時の候補者テレビ演説でも、自分の政策の話をするのでなく、おもむろにり自分の家族アルバムを開いて、田舎のおじいさんが来客に家族自慢でもするかのように、テレビの前で写真を見せ始めたのは印象深かった。
 
今回の暴動についてのジャン=マリー・ル・ペン氏の意見であるが、フィガロ紙を見てもル・モンド紙を見てもどうもポイントがはっきりせず、短くあしらわれている(フランスにいる人なら、彼の意見は大体誰にでも想像がつくからかもしれないが…。)


そこでFNのサイトに行ってみた。
現在、トップページに、「移民、公害問題の爆発的増加…ル・ペンは既に予告していた!」というキャプションとともに、1999年の
FNのキャンペーン映像が置かれている(燃える郊外の映像から始まる)。

また、11月14日パレ・ロワイヤル広場で「≪Immigration, emeutes, explosions des banlieues : assez !≫(移民、暴動、郊外問題の爆発的増加、もうたくさんだ!)」というテーマで行われジャン=マリー・ル・ペン氏の演説がオーディオできける。完全に一人舞台なので結構長い(40分超)。

 私も全部きくのが面倒くさくなって今回の暴動に関してのFNのパンフレットを見ることにした。さすが庶民層を相手にしているだけあって、短く分かりやすくまとめてある。以下、今回の暴動に際してのFNの主張。

暴動の原因はFNによると(原文では「~でなかったら、暴徒たちは暴れただろうか?」という言い方をしてますが)

●今までの政府(左派右派含め)の刑事政策は、犯罪者は社会の被害者だというイデオロギーに支配され、完全放任主義だった
●刑罰が実質的な刑罰になってない。実際に刑務所に入れられることが少ない。
●重罪軽罪で有罪判決が出た外国人について、司法はきちんと国外追放してこなかった。
●メディアのリンチにあうので、治安部隊・憲兵・警察がまともに仕事ができないし、自衛すらできない。職務中、死んでしまうこともある。
●フランス国籍の取得が単なる手続きにすぎず、本来フランス人だけに与えられるべき各種の福祉・手当て・雇用を利用する権利を、希望する者に与えてきた。

というわけで、FNの主張は

●殺人者については死刑の復活。
●フランスの法を破って拘禁されている1万6000人の外国人を国外追放。
●帰化してフランス人になった者で重罪・軽罪を犯したものはフランス国籍剥奪。
●国籍に関する法律を改革
●400万人の不法滞在者の国外追放
…ということだ。

で、「今回もジャン=マリー・ルペンとFNは正しかった!」と主張。


以下、その他あっちこっちのメディアで書いてあったことを拾ってみます。

9日、BBCにインタビューされた時も、ル・ペンは暴動参加者でFrancais de papier(ペーパーフランス人)なヤツはフランス国籍を剥奪して追い出せ、といっている。

何回か書いてきたように、生地主義をとってきたフランスでは、フランスで生まれた人はみんなフランス人である。帰化人及び、フランスで生まれた移民の2世、3世のことを指しているものと思われる。

「移民問題について30年も私が言い続けてきたことが正しいと証明された!だからFNに投票するべきなのだ!」とも。

「暴動参加者のうち外国人は国外追放」というサルコジの対応に関しては、ル・ペンは「もともとFNの提案なのに真似された!」と国外追放案の著作権(?)を主張。(フィガロ紙)サルコジにしてやられて悔しかった違いない。

また、「暴力の原因は30年もなげやりな移民政策をしてきたから」「フランスに来る全ての外国人は、自分と家族の生活費は自分で出すこと。社会福祉は全く与えない。社会福祉はそのために金を出しているフランス人専用なのだ」と言っているそうな(ル・モンド紙)

 これ、みなさん、「日本人には関係ない」と一瞬思うだろう。しかし、実際には、フランスに留学している日本人留学生の殆どに影響が出るはずだ。なぜなら、現在のフランス政府は、なんと外国人学生にも家賃補助の手当を気前よく出しており、これは別に貧国から来たわけでなくても支給される。日本人学生たちもちゃっかり利用しているわけだ(ただ、サルコジが政権に入ってからは減額されたときいているけれども)。まわりからきくかぎり、日本の実家が貧乏か金持ちかなどということも関係ないようである。

 そして、一応言っておくと、外国人でもフランスで合法的に働けばフランス人と全く同じにがっぽり社会福祉分も天引きされ所得税も取られているので、その点をル・ペンさんどうぞお忘れ無く…。フランスでは、パートやアルバイトや契約社員でも闇労働でないかぎりきちんと天引きされる。

FNの国籍政策は、生地主義の放棄と血統主義の採用。
二重国籍禁止といい血統主義といい、FNにとって国籍のポリシーに関しては日本が理想的、ということになる。

私も日本で生まれ育った日本人なせいかFNの国籍ポリシーにはとくにショックを受けない。

実行に移されたら、私が困るルペン氏の主張、それは「滞在許可証(外国人のフランスへの滞在を許可する外国人登録証みたいなもの)は有効期間1年以上のものを発行するな!10年許可証を廃止しろ!」というもの。
私でなくてもフランスに家族をつくって永住している日仏家庭、日々家庭の日本人はほぼ全員困ると思う。

 現在でも日本が二重国籍を許さない為、日本人の場合は殆どの人がフランス国籍を取得しない。「フランス人配偶者が先に死んだら、日本に帰って老後を過ごしたい」などという人も多い。年をとってくると、日本人にはフランスは辛い。冬は、あふれんばかりのお風呂でたっぷり温まった後、コタツにあたり蜜柑を食べながら紅白を見たくなるのだ。岸恵子だって、お洒落でリッチなサンルイ島に住んでいたのに、フランス生活に疲れ果てて日本に帰ったではないか。

フランス人と結婚してフランスに住む場合、1年か2年ぐらいたつと(私の時は1年だったのですが、サルコジ以来2年待つことになったらしい)最終的には「10年許可証」が出る。フランス人と結婚してなくても、一定の条件を満たせば、他の外国人にも出る。
フランスでの各種手続きは、山のような書類が必要だし、長い行列に何度も並ぶことになる、体力戦である。その10年の1回の更新も、外人や移民に甘い社会党時代には、郵便だけですませられたときく。しかし、最近はどうなっているのだろうか…。
これがもし毎年更新になったら、毎年更新のために警察に押し寄せる人も増えるわけで、毎年毎年、長蛇の列で並んでも途中で列をきられて追い返されてまた翌朝朝市のメトロで…なんてことになるかもしれない。
それがいやだったらフランス国籍を取得しろ、というわけだ。
しかしフランス国籍を取得(日本国籍を放棄)したら、再び日本人に戻りたいと思っても戻るのは難しいだろう。
日本も国籍関係の法律は厳しいからだ。





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最終更新日  2005年11月17日 07時05分34秒
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