カテゴリ:金融
指定された時間の、一分前に私は立ち上がり、受付の扉へ向かいました。
扉は、大きなガラス板に木の枠がついたような造りで、中の様子がよく伺えました。 中はなんとなく雑然とした感じで、入るとすぐに古びたカウンターがありました。 わざわざ、大きなガラス製の扉で仕切る意味がよく分かりませんし、 何かの、お店か事務所の入口のようでした。その部屋は薄暗い廊下に比べると、 不自然なほど明るく、人も多かったのを覚えています。 カウンターの越しで書類に向かっていた、三十歳前後で細身の男性が、すぐ私に気付いてくれました。 「えー、今日は・・。」 「はい。特定調停の申し立てをしております、齊藤と申します。事前に事情聴取がある とのことで、お約束の時間に伺いました。」 「齊藤さんですね、少々お待ちください・・。」 役所でスムーズな対応を経験したことがなかった私は、ここでも待たされること を軽く覚悟して、待つ体制でいました。 しかし、この時の対応はとても素早く、良い意味で裏切られました。 「廊下を左に出て、手前から数えて二つ目のドアの部屋でお待ちください。 調停員が二名参ります。」 指示通りの部屋へ素早く移りました。部屋は十人も入れば一杯の会議室のような趣で、 熱気がこもり、廊下以上に温度が高く、汗がさらに滲んできます。 窓の外には、先ほどの土手のように盛り上がった芝生が見えました。 私は椅子には座らず、窓の外を一瞥してから持参した書類を整理しながら 広げ、腕を後ろで組み、姿勢を正しました。 それから一分も経たず、ドアが開き、二人の調停員が入ってきました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005年07月01日 22時12分56秒
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