コンピュータの中で生きる『虫』たち
ある国の工業の技術水準を知る指標として、『どれだけ多くの部品を組み立てられるか』があります。当然ですが、組み立てただけではだめで、正常に動かなければなりません。自動車よりはジャンボジェット機の部品は多いですし、スペースシャトルの部品はさらに多いでしょう。現在の世界で、アメリカ以上に多くの部品を組みたてられる国は無いでしょう。ひとつの部品を精度よく作ることは、ほかの国でもできますが、数百万か数千万単位の部品を組み立てて、支障なく、人間を宇宙に打ち上げて、地球に戻す技術は、まだまだアメリカのものです。アメリカの考えは、部品の精度が低くても、相互の組み合わせにより、全体の精度をあげようとする考えです。部品単体では問題ないのに、組み合わせると、うまく動かないということがよくあります。私が籍をおくコンピュータのシステム開発でもよくあります、というより、それが普通です。ひとつのシステムは、数百本、数千本のプログラムから構成されています。一本でも、おかしなプログラムがあれば、システム全体がおかしくなります。そのために、テストを行ないます。テストでは、必ずといって不具合が見つかります。それを、この業界では『バグ』といいます。日本語では『虫』です。虫と言っても、松虫、鈴虫のような風情のある秋の虫ではありません。言語である英語では『南京虫』と言われています。つまり、害虫ですね。これまでの経験で、この規模のシステムでは、これだけの『南京虫』が潜んでいるという仮定をたてます。テスト期間中に、その『南京虫』を発見して対処しなければなりません。コンピュータシステムといえども、人間が作るものですから、必ずミスがあるという前提なのです。発見した『南京虫』の数が少ないと、お叱りを受けます。「まじめにテストをしてない」というお叱りです。多すぎると、『部品メーカー』の品質管理が疑われます。ところで、『無謬論(むびょうろん)』をいう言葉をご存知ですか。これは、ある左翼政党、高級官僚についての言葉です。つまり、『我々は過ちをしない、ミスをしない』、したがって問題が発生しても、彼らは責任をとりません。私が勤務する業界に限らず、まともな業界では、こんな考えは通用しません。左翼政党と高級官僚が結びついてしまった国がありました。その国は、15年以上前に崩壊しました。それは、当たり前というか、当然のことだったのです。