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カテゴリ:りぼん
水銀灯の下の國男と芥川はもう見えなかった。
ただ、私の吸っている「誉」から立ち上る煙と、私が吐き出す煙が重たいがしかしつるりとした空気に混じってテラテラと紫色に輝いているのは変わりない。 「プトレマイオス」と意味不明の言葉を残し、交際していた彼女と連絡が一切取れなくなったのは一週間ほど前の事。 私が自宅で就寝して後、深夜1時に電話が掛かってきて、眠い目を擦りながら電話に出ると聞き取れぬほどのスピードで彼女の怒鳴り声が聞こえたかと思うと、低い声で件の「プトレマイオス」だけが聞き取れた。 「プトレマイオス」のお陰でその晩は「ファラオ」になった夢を見た。 黄金に輝く宮殿の中でさてこれから酒池肉林、鯛や平目の舞踊り、エジプトだからホルスとクヌゥムの舞踊りか、といったところで毒殺された。どうやら「ツタンカーメン」になった夢であった模様。パレポリ。 連絡がつかない彼女には携帯電話は無論のこと、電子メール、メロディ電報(ハローキティ)、伝書鳩、糸電話等あらゆる手段を講じたが連絡はつかない。 特に「糸電話」の設置には全工事を自分一人で行なったので工事終了の三日後に疲労困憊した記憶が残留している。 自宅と自宅、工期約8時間。 最近何事もスピードが速いのは会社で配られている「突撃錠」のせいだろう。9月の台風と長雨で工期が遅れている為、午後7時以降の作業の時には2錠づつ配られる。 眠くならない。 「メ・タ・ン・フェ・タ・ミ・ン」 という恋の呪文みたいな文句が休憩所に捨てられていた空箱には滲んだ文字で印刷されていた。 外に出ると道行く人や車が猛スピードで移動しているが、同時に私自身も猛スピードで徒歩&運転、つまり移動していて、アインシュタインの相対性理論を理解もしてないくせに「こういう事なのかー」と理解面をする私の目先にはもう銅製ケーブル発掘作業をしている私がいたりする。 ドッペル。 朝起きて、気が付いたら次の次の日の朝だ。 おはようございます、ここまで二日の仕事と遊びをこなして来ています。ふぁ~あ。 恋の呪文の効果は約三日で切れる。 タイ旅行から帰国した彼女がプーケットでジャパンマネーに物言わせ買ってきた三輪バイクで煙草屋の入り口に突っ込んで来たのはそれからまた三日後の事だった。 「プトレマイオス。」 <気が向いたら続く> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/12/10 06:07:21 PM
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