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カテゴリ:りぼん
朝八時に目が覚めた。
「ら゛っじゃいまぜぇー ゴーゴーゴイゲヤポレロチープスッとおおハマチもあるでよー」 と階下の煙草屋から私の部屋の薄い木製合板を伝わって聞こえる、八十過ぎの、もうすぐ米寿だというのに家賃の勘定と取立ては忘れない、クソババアの酒焼けした声が響いた瞬間、「クラッシャー」あるいは「スラッシャー」と大音響が大きな振動と二人三脚で私の脳をこじ開けて入ってきて、七色に光った瞬間、彼女の来訪を知る。 水曜に会社で配られた「突撃錠」、通称トッチャンが金曜に切れて、土曜は気管支拡張剤を吸いつつ朧げながらに速い意識を保っていたものの、次の日つまり今日、日曜日には休日の間延びした雰囲気に飲み込まれ通常5時に起床し、腕立て、腹筋、大家のジジイ&ババアとのラジオ体操の約束をバックレて睡眠をむさぼって朝八時。 全身がいわゆる筋肉痛で痛いなあ、しかし空気がうまいなあ、ここはスイスかしら、ヨロレイヒィ~と口笛吹いて前のめりになってカタンカタン階段を下りると、横転した三輪バイクが煙草屋の、磨硝子のはまった引き戸を粉々に砕いて停止していた。 うらうらときらめく朝もやの、うっすら残る往来には日曜ながら人通り多く、晴天ナレドモ波高シ。 トラトラトラ。ニイタカヤマノボレ。 粉々になった硝子の破片の山に彼女を見つけ、まっすぐに歩けぬので件の糸電話の糸につかまり、よろめく体を支へつつ、彼女と会話。 私:「またまたこれは派手な登場ですなあ。近頃姿を見かけませんでしたのと連絡がつきませんでしたので心配してましたんですのよ。ヨロレイヒ。」 彼女:「おやまあ、貴方から心配、なんて言葉が漏れるとは思いませんでしたわ、なんということでしょう!シャムのプーケットから帰国しまして我が家の軒先から延びる白い糸を辿って貴方のお家に来たのよムッシュゥ。」 私:「じゅて~む」 彼女:「ジュテ~ム」 彼女、やや硬い。 しかし、私の視界約180度の位置でマルエツの広告の裏に「損害賠償請求書」とシコシコ書いているババアの動きを私の白目は見逃してはいない。 今日はマルエツでインド産マグロ刺身がお買い得だぜベイビー。 依然、ちょっと速いね。ラブリー。英語で書くとlovely。 横転した三輪バイクの、運転席右前方には何故か日本語で「掃溜めに鶴」って書いたステッカーが貼ってあるのが見えた。 これもlovely。 <電池切れのため気が向いたら続く> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013/08/21 02:20:41 PM
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