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カテゴリ:りぼん
煙草屋の一階で大家のジジイと炬燵を挟んで差し向かいで座り、酒を呑みつつ「白鷲山のどすこい武者修行」という映画を一緒に見ている。
というのも今朝方煙草屋で大家で今年米寿のババア、通称「大家のババア」が二階に上がって来て、私に件のマルエツの広告の裏に書いた請求書ともう一枚、A4サイズの、お見積もり書、と明朝体で正しく印刷された書類を突きつけた上「あんたなぁ、この前の女の子の知り会いだしょうがや?硝子とサッシュ入れんと寒くてしゃあないからお金払うてな、あだしゃマルエツに行かにゃならんきに後は家のおどさんと相談しといてな、いそがしゃいそがしゃ」と言い捨て出て行ってしまったのである。 「YKKアルミサッシ 擦り硝子 一式 十八万円也」 ・・・とお見積もってあった。大変結構。結構結構。いいね。グッジョブっていうんですか?こういうの。 こらいかん、ああ、貧乏はつれえなぁ、つらいよ、つらすぎるよ、貧乏は味わうもんですなあってあら嘘だよなあ、しぶしぶ起きて酒を少し呑み、階段カタカタ降りて、硝子ではなく「日本の名城カレンダー 名古屋城」と「世界の名車カレンダー デ・トマソ」で埋められた引き戸、というかもはや暖簾、趣味が渋いなあ、と潜って入った大家の店舗と自宅の境界の曖昧な土間には棚の上に商品が並び、「よっちゃん烏賊」等駄菓子の脇には招き猫、給油ポンプ、ヌンチャク、鳩サブレー等意味不明の陳列で、商品の陳列スペースの次はすぐ上がりになっていて、炬燵、炬燵の上に一升壜。 ジジイはすでに泥酔状態らしく何か喚きながら刀を振り回し踊っていた。ステップを踏んで。軽い足取りで。 ぷうん、と安酒とアンモニアの匂い、鼻腔を衝く。 私が「あの・・・」と言いかけた瞬間、人の気配に気が付いたのか踊りは停止し、こちらをチラッと見たかと思うと突然、「貴様ッ人の家で何をしちょるかッわしは桂小五郎であるッ刀をぬけえええええいいいいい」と絶叫しながら私に走り寄り刀を振りかぶって切りつけてきたのだが、己の踊りの振動で先程炬燵から転げ落ちた一升壜に足がもつれ、前のめりになって激しく転倒し私は危うく斬殺の危機を逃れたが、上がりかまちのところに転げた刀を拾って見ると「にんたま 忍者刀セット」と刻印がしてあった。 桂小五郎がなぜこのような場所で煙草屋をやっていて、しかも「にんたま 忍者刀」を振り回しているのか疑問は残るがまあいいとして、本人が桂小五郎というのだから桂なんだろう。 倒れて呻いている桂を助け起し、一升壜を元に戻してやると、「ううう、すみません、私実は左藤政男っていうんです、へへ、刀返してもらえます?長船清光」 なんだあ、桂じゃねーのかよ、政男かよ、返すよ、武士の魂だろ、大事にしろよ、にんたまだけど長船なんだよね、と握らせると突然正座に威儀を正して拙者、ってさっき政男って言ってたじゃーん、ともかくお礼がしたいまずは一献、そうとなればご同輩、いやいや手前こそお注ぎ致す、ささ、とさしつさされつ、小一時間にわたってのみ一升壜が空になったところで秘蔵ビデオの御開帳、ってことで「白鷲山のどすこい武者修行」という聞いたことも無い映画の上映、さらに一升酒が出てきてこれを呑みつつ二人で見る事に相成った次第。 武者修行に何故か軍艦が。疑問は尽きない。 <気が向いたら続く> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/01/18 10:49:46 PM
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