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カテゴリ:幼児の絵本
「バムとケロのさむいあさ」島田ゆか
こんなに暑い毎日なのに、「さむいあさ」でもないんですが、「バムとケロ」シリーズの中でいちばん好きなのを挙げるとしたら、これかなと思います。 バムとケロが寒い朝湖にスケートに行くと、あひるの「かいちゃん」が凍っています。バムとケロはかいちゃんを家に連れ帰り・・・という感じのストーリーです。 何が面白いかというと、ストーリーはもちろん、そしてバムとケロの魅力もそうですが、サブキャラとたくさんの小道具たちの魅力が強烈なんです。そして、それを動かすストーリーの伏線が絶妙に愉快です。 例えば、表紙の絵。バムとケロが湖で釣りをしていて、あひるのかいちゃんは立て札を見ています。「さむいひのよるは いけのなかで てんたいかんそくをしないでね」。かいちゃんの首には双眼鏡がかかっている・・・。そう、かいちゃんは天体観測マニアです。そして、よーく見ると、小さな犬がすべっていて、右の木の幹にはなぜか小さなドアと窓、郵便受けがあります。 小さな犬は「ヤメピ」。ドアの主は多分「おじぎちゃん」です。でも、その名前はシリーズのどこかにさりげなく描かれています。「おじぎちゃん」は、この本のおもちゃの中に「おじぎちゃんすごろく」というのがころがっていて、たんねんに絵を見ていくと気づきます。 こういうサブキャラはストーリーと直接関係なくて、ヤメピはいつもぬいぐるみ化しており、おじぎちゃんは物陰をうろうろしていて、気づかれません。でも、本人たちはちゃんといっしょに活動しているつもりなんです。 作者はちゃーんとみんなのことを考えていてくれて、全員の居場所が確保されています。さまざまな専用グッズも用意されているんですよ。 こうしたチマチマさが、もうこたえられない楽しさで、とりこ状態のおとなと子どもが、日本中にたくさんいるに違いありません。 そして、やんちゃで行動予測が不可能のメインキャラクター、ケロちゃんと、やさしく見守るバムのコンビが最高にいいです。 うちの子はシモネタ好きなので、ケロちゃんがおふろでオナラするシーンを何度も読み返すシマツ。トイレットペーパーでミイラになるのは実演しました。 あと、バムの作るプリンやカエルパンケーキ(別の本)をすごく食べたがって、ホットケーキにチョコペンでケロの顔を描いて急場しのぎしたり。 ケロちゃんには子どもの楽しいかわいい部分がぎゅっと詰まっているんですね。 とにかくいろいろな楽しいが詰まってる、今後も日本の絵本史上に残るだろう名作だと思います。 このシリーズは、北欧のユリア・ヴォリという作家の「ぶた」という本に影響を受けて描かれたと聞いています。確かに似ているところはありますが、全然雰囲気は違います。「ぶた」もとても楽しい絵本です。機会があったら見てみてくださいね。 ただし、合い言葉は「絶版になる前に」です・・・。
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