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カテゴリ:幼児の絵本
「むぎばたけ」アリスン・アトリー
ある月夜の晩、ハリネズミは「むぎののびるとこ」を見たくて、小さな旅に出ます(ほぼおさんぽ)。 「グレーラビット」で有名なアトリーの小さな美しいファンタジーです。 息子がいまだに枕元に置いて寝ているお気に入りの友達(ぬいぐるみ)がハリネズミの「はーちゃん」です。小さいけれど、手作りの1点もので、かなり思い切って買ったんですが、当初はモヘアなのにちゃんと針がチクチクしてました。 このはーちゃんそっくりのハリネズミが出てくる話を、いつかは息子と読みたいと思っていました。 月夜の晩、ハリネズミがだれにも聞き取れない小さな声で歌いながら歩いていきます。さすらいのとてもいい歌です。 途中で年とった野うさぎと川ねずみが同伴します。 3匹の行く手には、イギリスののどかな田園風景が広がっていて、咲いている花の香りがしてきそうな美しい描写です。 いよいよやってきた小麦畑は、小さな動物にとっては海のように広く、たくさんの麦の穂が何かをささやいています。小さいけれどたくさんの命の息づきを感じて、3匹はそこで感動を覚えるのです。 この旅は、悪者をやっつけるためでもなく、怖いおばけも出ず、なんの使命も帯びていません。出会うのはうさぎや牛ぐらい。ただ麦を見て帰っていくだけの話なんです。 かといって、かわいい動物たちの愛らしいお散歩で終わらないのが、アトリーの物語です。 旅のメンバーは、臆病で昼間はひっそり隠れているハリネズミと、若いころのように野原を走り回れなくなった年とった野うさぎ。そして、川のそばで一人ぬれねずみで暮らす川ネズミ。 みんなだれにも見向きもされないような者たちですが、自然体で生きています。 この3人が小麦の喜びの歌を聴きます。小麦は、「大地の恵みをすって大きくなり、みんなに食べてもらう」ことを喜んで歌っています。 麦は、3匹よりも取るにたりない存在ですが、確かに生きて、喜びの歌を歌っています。 どんな小さな者にも役割はあって、生きることに無駄はない。 刈り取られる麦や塩をキリスト教で人に例えることがあります(クリスチャンではないので、詳しくありませんが)。そういうキリスト教的な世界観もこの話に感じますが、いずれにしろ、じみ~な話ながら、じっくり楽しめば、「生きることって何だろう」というメッセージをさりげなく伝えてくれる本だと思います。そして、ありのままを受け入れて、「生きてても大丈夫」というメッセージも、私には感じられました。 絵がすごくいいです。小さなか細い手をふりふり歩くハリネズミ。川から上がってきたので、水がポトポトしたたっている川ネズミ。手を前に出して(ぬれてるから?)歩いてるところは、情けなさそうな、ちょっとゾンビっぽいような。ごま塩の白っぽいひげに杖をついたうさぎ。 何かかなり頼りなさそうなトリオです。。。 もっときれいでかわいい絵はいっぱいありますが、この絵ははじめてより2回目、3回目と、見るごとにいとしく思えてきます。 「読み聞かせなら5歳から、自分で読むなら小学校中級向き」となっています。 小2の息子の感想文にどうだろうと思いましたが、これはちょっと、感想文には難しすぎるかも・・・。 大人になってから読んでも遅くない本かも、と思います。 ★「むぎばたけ」のリンク★ ★アリソン・アトリーの本★ 絵本の扉絵をアップしてみました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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