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テーマ:好きな絵本教えて下さい(711)
カテゴリ:小学生の読む本
「だれも知らない小さな国」佐藤さとる
子どものころ、だれにも見えない小さな友達がいませんでしたか? 子どものころずっとそばにいて、大きくなると知らぬ間にいなくなっている友だち。 または、そんな秘密の特別な友達がいたらなと思ったことがあるのではないでしょうか。 この本のコロボックルたちも、そんな目に見えない小さな人(聖霊)、大人たちには見ることのできない子どもの聖域に住む者たちです。 私は北海道出身なのですが、小さいころは、コロボックルという蕗の下にいるアイヌの小さな神様を信じていました。雨が降ると、道端に生えている野生の蕗を傘にしたり(小さいのであまり実用にはなりません)、コロボックルが雨に塗れていないか、ちょっとこわごわのぞいたりしたものです。 佐藤さとるさんのこの本は、コロボックルはアイヌの神話ですが、これをベースに生き生きと書き上げられた日本を代表するファンタジーだと思います。 コロボックルは、すぐ近所のありふれた道端にいて、子どもたちは大人に見えない世界をコロボックルたちと共有しています。子どもたちは大人よりもコロボックルに近い目の高さから、自然の中の不思議をいつものぞいているんだと思います。 ただ、この話は、子どもの小さな友達というだけでは終わりません。 小学生のころ、主人公はコロボックルを初めて見かけるのですが、そのコロボックルたちが、大人になった主人公のところにやってくるのです。 大人になっても、不思議を信じる心を持っていれば、出会うことができる。 小さいころに不思議な友達を持っていた子どもは、大人になっても、絶対に心のどこかにそんな友達の居場所を残しておいているものだと思います。 思い当たるでしょう? この本は、中学年(3・4年)の感想文にもいいなと思って、カテゴリーに分類してあるんですが、どっちかいうと、自分の手で取って、コロボックルを見いだしてほしいなと思います。 作者は西洋のファンタジーを意識して作ったそうですが、確かに、小山に住んでいるなどの設定は、アイルランドの塚(丘・小山にある)に住む妖精たちと重なります。そして神さまというよりは、いたずらな妖精小人たちに近いイメージがあります。 アイヌの神話もそうですが、日本の野山には、それはたくさんの神さまや妖精たち(日本では妖怪になりますよね)が棲んでいます。 作者はそれまであまり目を向けられなかったその宝物のふたを開けて、新しい形の日本のファンタジーを見せてくれました。今見ると、ちょっと時代設定が古い感じもありますが、お話の魅力をそぐものではないと思います。逆に時代がたつほどに、きっとイギリスの児童文学の古典のように、その時代の美しさとなっていくんだろうなと思っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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