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カテゴリ:災害・防災
台風18号の影響で降り続いた大雨は各地に浸水被害をもたらしたが、特に茨城県常総市での鬼怒川の破堤は、住宅地を濁流が襲う様子がテレビで中継されていたこともあり、多くの人が衝撃的な映像を目の当たりにすることとなった。
家の中で孤立する人も多く、その救出劇をテレビで見守った人も多いと思う。 その後氾濫流は大きく広がり、下流の水海道の市街地まで浸水させた。 対策本部となるはずの常総市役所も1階部分が冠水して、昨日に支障をきたした。 まだ行方不明の方もいるし、避難所にも多くの方がいる。 災害は現在進行中であるとこいうことは認識しておかなければならないが、同時にここまでの経緯や課題はきちんと検証しておくべきだろう。 既に専門家が様々な分析を始めている。 国土地理院が航空写真判読により作成した推定浸水範囲図によると、浸水域は約40km2に達する。 地形図1枚が100km2であることを考えれば、氾濫流がいかに広域を浸水させたかがよく分かる。 この浸水域を常総市が公開している洪水ハザードマップと比較してみると、(浸水深については現時点で評価できないものの)、今回の浸水域はハザードマップでも浸水が想定されていたエリアであることが見てとれる。 洪水ハザードマップで表現されている浸水想定区域は氾濫シミュレーションにより計算されたもので、実際には破堤の位置によっても影響範囲は変わるのだが、少なくとも鬼怒川と小貝川に挟まれた地域が今回のような洪水に対してそれなりのリスクを抱えている地域であることは分かっていた。 テレビや新聞の報道の中には「想定外」であったりとか「雨の降り方が以前と変わってきた」といったようなスケープゴートを設けるかのような言説もあるが、ハザードマップを見る限り浸水範囲は想定内であり、こうした報道はあたらない。 今回の豪雨は線状降水帯の影響ということがマスコミで盛んに言われているが、実際の雨の降り方はもちろん、予報でも警戒を呼び掛けていた上、気象庁は当日朝に大雨特別警報を発表している。 また、国土交通省は河川の水位を公開しているし、氾濫警戒情報も出している。 市が避難指示を出した出していないが報道機関により混乱しているが、少なくともこうした情報がそれなりのリードタイムがある中で出されていたことは認識しておかなければならないだろう。 結局のところ、多くの情報がありながらもそれを活かしきれないジレンマがある。 情報が多すぎて混乱するという人もいるし、情報があることを知らない人もいる。 また多くの情報はインターネット上にあるため、扱えないという人もいるだろう。 それでも少なくとも洪水ハザードマップは配布されていたはずで、それを見ることで事前に地域の浸水リスクを認識していればまたそれなりの準備があった、今回とは違う結果になったのではないかと思うと残念でならない。 もちろん深夜時間帯や雨が激しくなってからの避難の難しさもある。 避難途中で遭難するケースもあることから、タイミングによって上階への垂直避難を勧める状況もある。 それでも早めの準備や避難行動が生命や財産を守ることになるのは間違いない。 一部の報道では河川防災のインフラ見直しといった話も出ているようだが、個人的には賛成しかねる。 もちろんダムや堤防のインフラはその役割を果たしている。 でもそこを強化したところで必ず限界があるし、強化すればするほど守られている側の防災意識も低下しがちで万が一機能しなくなった時に甚大な被害になる。 新しいことを始めるより、むしろ今のやり方をより確実に浸透させることが重要なのではないだろうか。 とにかく行政も防災関係者もぶれないで欲しいと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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