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2016.08.10
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カテゴリ:地図
日本地図学会の定期大会が岡山市の就実大学で8日から開催されている。
遅ればせながらその第2日目の午後の特別セッションから聴講した。

特別セッションは「デジタル地図利用の現在・過去・未来」と題して、OSGeoのコミュニティから登壇者を招いて、独自の視点からのこれまでの地図利用とこれからのあり方についての議論となった。

最初の登壇者は朝日航洋の嘉山陽一氏。
関係者の間ではお馴染みの嘉山氏だが、この日は昔話も交えての話題提供になった。
岡山は黎明期からGISに積極的だった地域であり、いわゆる統合型GISの導入でも全国の先駆け的な土地柄だが、その頃嘉山氏が色々と尽力していたという縁もあって、その当時のGIS事情について裏話的な話題も。
中でも当時ハードディスクの容量がせいぜい512MBで、1500万円くらいかけて導入したものが、今では2GBのSDカードが410円で出回っているというから隔世の感が強い。

ハードウェア環境の変化はもちろん、データもあり方も変わった。
当時は「コンピュータで地図を扱い人間がその地図を読んで利用していた」のが、その後「コンピュータがデータを読む」時代へと変わっていった経緯から、データと表現の関係について整理した。
これは現在のWeb地図の環境でも同じで、今後デジタル地図への要求はどんどん増えると分析した。

2番手は岡山出身でもある応用技術の林博文氏。
時代を追って大型汎用機から専用機時代への変化、GUIの概念の登場、民生用カーナビゲーションの取組(地図が回転するようになった)、Windows時代の幕開け、ネットワーク時代の到来、そしてインターネット・巨大ストレージ・高速CPUが前提となった現在と流れで紹介した。
また、OSGeo財団のようなコミュニティの出現やFOSS4Gのようなツールの登場などが、新しい時代への節目になっていることにも言及、今後の流れとして多くのアプリがマップアプリにつながることや、利用しやすいオープンデータへの取組や、コミュニティ・ワークショップの活発化、i-Constructionの推進によるデータの3次元化かどをあげた。

3番手は農研機構・西日本農研の寺元郁博氏。
寺元氏は地図画像配信サービスFinds.jpの開発・運営で知られるが、地図とのかかわりを持たずに地図配信サービスに参入した経緯について、本業で利用していたGPSのリファレンスとして地図に関わるようになったと説明した。
そんな中、基盤地図情報の整備が始まったことをきっかけに、寺元氏は基盤地図情報25000切り取りサイトや基盤地図情報WMS配信サービスを次々公開してGIS利用者に注目されることになる。
しかしサーバーのセキュリティ上の問題から今後の継続が難しい状況となり、寺元氏は「遺言」に例えて、オープンソースソフトウェア、ライセンスが緩いデータ、技術情報取得チャンネルが揃えば何かが変わるとして、開発の志がある者に対して躊躇せずチャレンジすることを勧めた。

最後の登壇者は東京大学の瀬戸寿一氏で「地理空間情報のオープンな教育・研究イニシアティブ:Geo for ALLの紹介」と題してこれまでの登壇者の話を受けてまとめた。
Geo for ALLはすべての人に地理に関する教育・機会をつくる、ひいてはジオの未来を担う人材の育成を目的であるとして、そのためのさまざまな取組について紹介した。

社会課題の複雑化に伴う地理教育に対する現状のニーズや、ソースコードとデータがオープンになることの意義、実現のための体制や現在の取組について整理した上で、今後の課題として日本のジオをめぐる今後の状況を踏まえてコミュニティとしてどういうアクションを起こせるかという点を挙げた。

最後は質疑と討論で、フロアから活発な意見が出された。
中でもGeo for ALLについて、お金の流れ(予算化やビジネスモデル)への懸念や、教育現場に受け入れる体制があるかといった点は関心を集めた。
また、地理空間情報の扱いが容易で便利になっていく半面、地図は一つの言語であり、便利さだけを追求するのでなく時間をかけてきちんと学ぶことも必要という意見も出された。

Geo for ALLには多くのコミュニティ、海外でいえばICAやISPRSなども参画しており、日本でも体制づくりを急ぐ必要はありそう。
こうした流れの中で地図学会がどのような貢献をできるのか、きちんと方向性を出すことが求められている。





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Last updated  2016.08.10 01:41:43
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