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カテゴリ:地図作成
先週の日曜(12/4)をもって、JR北海道の留萌本線の留萌駅~増毛駅間が廃止された。
テレビ等でもずいぶん報道していたので見た方も多いと思うが、最終日には多くの人が増毛駅に集まっり、増毛発の最終列車は通勤列車並みの混雑、さらに列車の外にも多くの人が詰め掛けてサイリウムを振りながら見送るという、ちょっとしたイベントのような状態になっていた。 廃止は早速地図にも反映されており、最近仕事の早さに定評がある国土地理院の地理院地図を翌日に見たところ、早くも廃止区間の旗竿(JRの記号)は消されていた。 実際に現地に行けば、まだ線路そのものは存在しているわけだが、鉄道として営業していないため地図からは削除されることになる。 ただし、現段階の地図では鉄道線だけが削除された状態で、そこに鉄道があった名残自体は残されたままだ。 駅舎のように地物として存在するものに関しては撤去されない限り地図に残るが(もちろん注記や記号は消される)、例えば編集された等高線などはいずれ自然な形に修正されることになるだろう。 「編集された等高線(あるいは地形)」という概念は2万5000分の1地形図を見慣れない方にはピンと来ないかも知れないが、例えば鉄道の線というのは記号であって、実際の縮尺に基づけば鉄道の幅は地図上の鉄道記号(旗竿)の幅ほど広くない。 それを視認しやすいように記号化しているわけだ。 これは道路も同じで、2万5000分の1地形図における道路の表現は、実際の幅などから何種類かに分類して記号化している。 つまり地図上の道路の太さを測って縮尺に基づいて計算しても実際の道路幅とは一致しない。 地図上で実際の太さより太く記号化されれば、他の地物と重なってしまうという現象が起きる。 例えば鉄道の側に道路が通っていたり、建物があったりすれば、鉄道を記号化して太らすことで重なってしまうわけだ。 そこで、それらの地物を少し動かしてあげることになる。これが「転位」と呼ばれる概念だ。 転位には優先順位が決められていて、基本原則としては有形線(実際にそこにある線:道路や鉄道、河川など)が優先されて、無形線(実際にその場に線がないもの:等高線や行政界など)は転位させることになる。 こうした原則に基づいて廃線跡を見ていくと、色々と名残があることが分かる。 例えば下図では、10mの等高線(海に最も近い)と20mの等高線の間が他の等高線の間隔よりもやや広く取られている。 実際にはそれほど極端な地形ではなく、ここに鉄道記号があったために転位した等高線であることが推測できる。 次の図を見ると、中央付近にある三角点の西側の国道に橋の記号があるが、その下に川は流れていない。 どうやらこの橋は鉄道をまたぐ跨線端であったらしい、ということが分かる。 3番目の図は、中央付近で等高線が鍵形に曲がっている。 その西側は等高線の間隔が広く、最初の図と同じように鉄道記号と重なった等高線が転位されていることが推測され、その鍵形の部分で鉄道が等高線をわたっていたことが表現されている。 この図でいえば10m以上から10m以下へと下りてきているということになる。 等高線が道路や鉄道を横切る場合は、その道路や鉄道と垂直に渡すように表現するのが原則で、編集した結果としてこの鍵形の等高線が出現する 4番目の図では畑の中に等高線の出っ張りが向かい合っている場所がある。 これは鉄道が緩やかな勾配で傾斜を上り下りしていることを表現したものだ。 5番目の図では縦に切土や盛土の斜面が走っており、ここに鉄道が通っていたことは想像しやすい。 特にここでは川(2本あるうちの南側の川)の北側に典型的な鉄道盛土が残されているので比較的廃線跡が分かりやすい。 最後の図は留萌の市街地だが、道路に2つ浮いた形で下に何もない橋が残されている。 市街地なのでその部分だけ帯状に建物が途切れていることも含めて、ここに鉄道記号があったことが推測できる。 このように廃止直後に鉄道記号だけを削除した地図には、地図がどのように編集されているのかというヒントが隠されていたりする。 興味のある方は色々と探してみて頂きたい。 そしてこの状態がいつまで地図に残るのか、という点にも注目したい。 (廃線マニアの方は「このままにしておいて!」と考えるかもしれないけど) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.12.08 01:11:16
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