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みなさんぽんこちは。今回は誰も待っていない久々のぽんこちネタです。 僕の釣りの原体験は、まぎれもなく海でのエサ釣りなんですが、小学校~中学校までの間はブラックバスのルアー釣りが主流でした。 小学2年生(1980年)の頃から、おばちゃん釣具店に石ゴカイを買いに行っては、色とりどりのルアーに目を奪われ、100円のスプーンやスピナーを買い漁って集めていました。 やはり憧れはショーケースの中にずらりと並んだ輝く高級ミノー。なけなしの小遣いを貯めて、やっと一番小さなラパラを一個買いました。確か値段は700円くらい。 インベーダーブームの余韻が残る1980年当時、8歳の子供が700円の買い物をするのはとんでもない散財で、家に帰って母親にラパラを見せて700円で買ったと言うと烈火のごとく叱られ、返してこい!と言われました。家が貧しかったもんで・・・(T_T) 返しませんでしたが(笑) もちろんルアータックルなんて持ってませんでした。 小学4年生(1982年)くらいから周りの友達はみんなルアーフィッシングにのめり込んでいきました。僕もスピニングとコンパクトロッドの組み合わせで学校裏の沼に友達とよく通いました。裕福な友達はこぞってベイトキャスティングリールを使い、タックルボックスには高級なラパラがどっさり詰まっていました。僕を含めた貧乏組はスピニングリールで安いスプーンとかコーモラン製パチもんルアー(笑)を投げるというのが定番のスタイルで、中には、ベイトロッドは持っているがベイトリールが買えなくて、スピニングを装着して釣っているツワモノもいました。 当時はベイトキャスティングタックルは高級品というのが一般認識で、じっさい国産メーカー品でも、とても小学生の子遣いで買えるような代物ではありませんでした。 この年にダイワから発売されたのが、有名な初代ファントムマグサーボです。 【ダイワ ファントム マグサーボ SS-15】 (製造年) 1982年 (価格) 15000円 (ボールベアリング) 2個 それまで摩擦式のメカニカルブレーキと回転抵抗式の遠心ブレーキしかなかったベイトリールに、世界初の非接触電磁誘導式ブレーキを搭載し、飛躍的な飛距離アップとバックラッシュの低減を実現します。 このリールを初めて見た時の衝撃は今でも忘れられません。なんでリールに家電製品のような目盛りダイヤルが付いているのか!? 精悍なブラックボディにオレンジのロゴ、家具のような色艶のウッドノブ、第一名前がカッコ良すぎるっ!これは小学生でなくてもルアーフィッシングに興味のある者の心を鷲掴みにするのに十分すぎる魅力を持っていました。 しかし、僕にはこんなものは間違っても買える訳はなく、いつかはクラウンじゃないですが、いつかはファントムと夢見ていました。 そして小学5年生となり、やっと自分のファントムを手に入れることになります。 【ダイワ ファントム ST-15】 (製造年) 1983年 (価格) 6000円 (ボールベアリング) 0個 これはSSの廉価盤で、マグサーボは搭載していません。しかしこれですら友達(桜田君)の使い古しの中古を安く譲ってもらってやっとこさ手に入れたのです。たしか3000円くらい。(貧しかったもんで・・・^^;) でも、これを手に入れた時は嬉しかったなー。やっと憧れのベイト組になることができたと。使っていたロッドは太くて重いダイワのグラス製ストライカーでした。 そしてその翌年の正月に、お年玉で新発売のミリオネアを買います。やっと念願の新品を手に入れることができたのです。しかし、まだこの時でもマグサーボ付きは買えません。ミリオネアはファントムの姉妹品的なイメージですが、形は一緒なんで満足でした。 【ダイワ ミリオネア ST-15AC】 (発売年) 1984年 (価格) 7500円 (ボールベアリング) 0個 この年に、ダイワのマグサーボと並ぶ2大発明のうち、2つ目の発明であるオートキャストクラッチが採用されます。ACとはオートキャストのことで、それまでスプール横のボディから出ていたクラッチボタンが、スプールの真ん前に設置されることによりクラッチフリーとサミングが同時にできるという画期的なものでした。これは今では各メーカー当たり前の装備になっていますが、かつてのシマノのバンタムなどは、丸っこいデザインの馬鹿でかいクラッチボタンをスプールに寄り添うように近づけたりして、少しでも操作性を良くするべく涙ぐましい努力をしておりました。 そして同じ年、極めつけのファントムが発売されます。 【ダイワ ファントム トーナメント EX-20】 (発売年) 1984年 (価格) 30000円! (ボールベアリング) 3個 SSより上の最上級グレードとなるトーナメントEXグレードの登場です。 ゴールドカラーがすでにタダモノではありませんが、これにダイワの第3の発明とも言えるゼロフリクションレベルワインドが搭載されます。これは、クラッチフリーと同時にレベルワインダーが左右に分割されて開くというものですが、ライン放出時の抵抗が激減され、非常に画期的な発明だったと言えます。メーカー曰く、砂埃等の影響でトラブルが多いために自然に無くなっていったとのことらしいですが、辞めてしまうには惜しいアイデアでしたね。 組み合わせるロッドももちろんファントム。それも当時の最上級グレードのアモルファスウィスカー(^0^)超成金タックルです(笑)さすがにこのクラスは、僕の行きつけのおばちゃん釣具屋では置いてありませんでした。カタログではよく見ましたが。 ここまでの経緯を見ても、80年代に入ってからのダイワは、それまでの海外製品のコピーもどきを作っていた二流メーカーから、革新的な先進メーカーに変貌していったことが分かります。友達の中には一部バンタム派もいましたが、メインストリームは圧倒的にダイワでありファントムだったのです。 このモデルを最後として、ファントム特有のこのボディデザインは無くなり、1985年からスクエアな新デザインのファントムへと移り変わっていきました。 僕も中学生となり、この系統の廉価盤のファントムZEROというモデルを買いましたが、もう小学生の時のようにこれらの最新タックルに対して強烈な憧れは持てなくなっていました。そしてしばし釣りから離れることになっていったのです。 しかし、いくつになってもあの1982年頃の釣具屋のショーケースの一番上に飾られていたファントムマグサーボSSの姿がまぶたに焼き付いて離れません。当時手に入れることは出来ませんでしたが、それがかえって強烈な想いになっているのでしょう。これより前のモデルにもこれより後のモデルにもあまり思い入れはありません。ABUはヱビスのカタログだけはよく見てましたが、別世界のものでしたね。さすがに周りで買った奴は一人もいませんでした。あくまでバス少年の身近な憧れはファントムだったのです。 う~ん、かっこいい。ファントムにはやっぱりガングリップが良く似合う。そしてラインはお約束の米国デュポン社のストレーン。ダイワが代理販売していた100ヤード1000円程もする高級ナイロンラインですが、僕も使ってました。ファントムのブラックボディにこのオレンジがかった黄色が目に鮮烈で、この組み合わせに憧れました。みんな猫も杓子もストレーン巻いてましたね。 このSSはちょっと傷がありますが、機関は新品かと思うほどで、すぐ実戦に出せます。このタックルで10数年ぶりにバスでも釣りに行くと楽しいかもしれません。ホッテントットとか投げて。 80年代前半は、マグネットブレーキの登場や高性能なカーボンロッドが本格的に普及しだしたりと、価格は高くても出した金額分だけ圧倒的な性能差を感じられる製品が多かった気がします。そして、そのような過渡期に多感な少年時代を送れたことは非常に幸運だったと思います。時代が進み産業が成熟してくると、みんなが手ごろな価格で高性能な製品を使えるようになってきてそれは大変いいことだと思いますが、欲しくても欲しくても買えないという貧しさと、しかしいつかは買えるかもという希望を合わせ持った時代は、生きる原動力が湧いてきます。小学生の時からスマートフォンを持っている今の子供が、友達から中古のファントムを譲ってもらって喜んでいた僕よりも幸せとはとても思えないのです。
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