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シネマに賭けた青春「夢を追いかけた日々」の想い出

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この映画は巧みな心理描写で観る者をグイグイ引きつけるサスペンス映画の傑作だ。

美貌の絶頂期(撮影時29歳)にあったバーグマンが、ハリウッド随一の人気俳優フランス出身のボワイエを相手役に、自分の記憶に自信をうしない、精神のバランスをなくしていく若妻の心の動きを見事に表現!!

彼女は「ガス燈」の演技で、見事アカデミー主演女優賞を得たのである。


その1: 主人公ポーラを追い込んでいく罠の張り方は絶妙だ

19世紀のロンドンで起きたオペラ歌手殺害事件は未解決のままだ。被害者の姪、ポーラ(イングリッド・バーグマン)はグレゴリー(シャルル・ボワイエ)と結婚し、叔母が殺された家で生活を始める。

彼女の身の回りで奇怪な出来事が次々に発生していく。夫のくれたブローチが紛失、部屋に掛けておいた筈の絵がいつの間にかなくなる。夫の時計が覚えがないのに自分のバッグに入っている。

自分は本当に夫が言うような健忘症で夢遊病なのだろうか、それとも幻を見ているのか?

「夢じゃない、夢じゃ・・・夢のはずないわ! 夢かしら? あれは夢だったのかしら?」
自分の行動や精神状態に自信が持てなくなったポーラは、日一日と精神的に追い詰められていく。


その2: ヴィクトリア時代のロンドンを鮮やかに描き出す

風俗、文化、衣装などが時代を描き、濃い霧のなかに鈍い光を放つガス燈や、蹄鉄の音を響かせる馬車など、ロンドンの風物を見事に切りとっている。

最初気晴らしのつもりで出かけたロンドン塔で、グレゴリーは展示されている宝石に異常ななまでの興味を示す。これも後半のさりげない伏線だ。

「私は何も隠したりしないわ。そんな目でみないで」
「--また妄想を持ち始めたんじゃないだろうね」
ポーラを見るグレゴリーの目はどことなく異常だ。

ポーラは夜毎薄暗くなるガス燈も、天井から聞こえる物音も、自分の錯覚かと思い、精神を衰弱させていく。


その3: 彼女を精神異常者に仕立て上げていく犯人は夫 だがその狙いは・・・

スコットランド・ヤードの刑事、ブライアン(ジョセフ・コットン)は10年前のオペラ歌手殺害事件を詳しく調べ始め、何とか迷宮入りのこの事件を解決しようと乗りだす。

そして・・・

グレゴリーが捕らえられた。ポーラはブライアンに席を外してもらい、椅子に括り付けられた彼に云う。
「私、さっぱり分からない。何でこんなことしなきゃなんないの?」
「この縄を解いてくれ。頼む、そこの引き出しにナイフが入っている」
グレゴリーは必死に助けを請う。
ポーラは探し出したナイフを手に持つ。
「私は狂っているのよ。狂ってなければ何でもしてあげられるんだけど、狂ってしまったから」
ナイフを投出してブライアンを部屋に呼び入れる。

この映画で召使のナンシーを演じたイギリス出身のアンジェラ・ランズベリーは、この作品がデビュー作だ。19歳でのデビューだったが、いきなりアカデミー助演女優賞にノミネートされた。晩年、「ジェシカ叔母さんの事件簿」シリーズでベテラン女優の存在感を見せてくれた。

ともあれトリックこそシンプルだが、サスペンスをお好きなあなたには見逃せない傑作だ。

1944年 アメリカ・モノクロ 監督 ジョージ・キューカー 出演 シャルル・ボワイエ、イングリッド・バーグマン、ジョセフ・コットン 

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Last updated  2008.03.18 12:27:40
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