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カテゴリ:アメリカ ・ ミュージック
この映画は不朽の名作である。私は軽く50回以上は見た、そしてその都度泣いた。幾ら泣くまいと思っても涙腺の方が云う事を聞いてくれないのだ。今回もまた泣いてしまった。心地よい涙である。 ジェームス・スチュアートとジューン・アリスン、アメリカの“理想のカップル”が謳いあげた強く、美しい夫婦愛の物語。公開当時は絶賛を博した作品だ。 1953年製作、監督はアンソニー・マン、主演は上記の二人、それにルイ・アームストロングやジーン・クルーパー、ベイブ・ラッシンと言ったジャズ界の大御所が多数出演している。またチャミー役のヘンリー・モーガンの存在を忘れてはなるまい。 <ストーリー> 物語はグレン(J・スチュアート)が質屋へ楽器のトロンボーンを請出しに行くところから始まる。 音楽に情熱を持ちながらも商売道具の楽器を質屋に出し入れしなければならない貧しい生活。彼はコロラド大学時代の恋人ヘレン(ジューン・アリスン)に首飾りをプレゼントしたいのだが手が出ない。 楽器を持ってバンドのテストを受けに行くが落ちて、トロンボーンは又も質屋の飾り物になる。 ある日、質屋の主人が声をかけてくれた。ベン・ポラックが新バンドを編成するためにオーディションをしているというのだ。 彼は早速友人のピアニスト、チャミー(ヘンリー・モーガン)と出かける。チャミーは逢うたびに違う車に乗っているという車キチだ。 チャミーはベンに採用され、グレンも編曲者として職に有りつけた。楽団は早速旅に出た。 旅の途中、グレンはヘレンに電話して無理やりデートの約束を取り付ける。 ヘレンは婚約者とのデートも断ってグレンを今か今かと待つが、グレンからは何の連絡もない。「許せない、せめて電話すべきよ」と彼女はおおむくれだ。時計は11時半。 「ふざけた人、二度と顔も見たくない」持っていた本を机に叩きつけて怒る。 深夜である。やって来たグレンがヘレンを小声で呼ぶ。彼女は目覚めない。グレンの声が次第に大きくなる。そして、怒鳴る。「ヘレン!!」と。 ビックリして飛び起きるヘレン、二階の窓から顔を覗かせる。 「いたのか」とグレン。 「帰って」 「いやだよ、逢いに来たんだ」 「静かにしてよ、近所が起きるわ」 「話をしにきたんだ、いいだろう」 「大きな声を出さないで。降りていくわ」 ヘレンは寝巻き姿のまま、玄関へ出て行く。ヘレンは怒りを爆発させるが、グレンの 「変わらないな、すぐ怒るけど、きれいだ」という殺し文句に負けて、入り口の階段に並んで坐る。 グレンは質屋で安く手に入れた真珠の首飾りを彼女にプレゼントする。 その日、グレンとヘレン、池の畔で話をする。大学のグリークラブの歌う「茶色の小瓶」が聞こえてくる。 「私、あの歌が大好きなの」とヘレン。 「僕にははっきりした将来の目的がある。トロンボーンを吹くだけじゃない、楽団を持って自分の音楽をやるんだ。楽団も個性を持つべきだ。うまく言えないけど、編曲で独特の音が出せる筈なんだ」 時が経過、いつしか2年の歳月が流れていた。ある夜、ニュヨークの町を歩いていたグレンは「茶色の小瓶」の歌をレコード店の前で聞く。 グレン、急に思い立ちヘレンに電話を入れて「ニューヨークまで出て来れるか、結婚しよう。もう待てない」という。そして、プロポーズに応じて出てきたヘレンと結婚する。 ハネムーンは コニーズ・インだ。そこではジャズの王様ルイ・アームストロングが出演中でルイはジーン・クルーパーやベイブ・ラッシン、グレンをステージに呼び上げる。 ここで演奏される「ベイジン・ストリート・ブルース」は前半の白眉。ここでの競演はジャズファンにとっては応えられない熱いジャム・セッションだ。ヘレンは疲れでうつらうつら。 グレンは劇場の仕事で忙しい。そんなある日、ヘレンが「夢はもう捨てたの?新しい音は」とグレンに聞く。作曲の勉強を続けるには金がいる。ためらうグレンにヘレンは勉強を続けるように言う。「夢を諦めては駄目。ホテル暮らしなど勿体ないわ。アパートをかりましょ」と。 グレンは再び作曲の勉強を再開した。経済的には更に逼迫した。しかし二人は明るかった。目標を忘れなかったからだ。自分の音をみつけるという・・・。 勉強の再開は名曲と言われる「ムーンライト・セレナーデ」の誕生となって結実した。だが、編曲は安っぽく単なるダンス音楽にすぎない。 「折角の曲が滅茶苦茶だ」と怒るグレン。 「自分のバンドを持つのよ」とヘレン。 グレンの部屋で友人のドン、チャミーを交えて経費の計算をしているグレン。 「どうしても1800ドル足りない」とドン。 「 問題ないわ」へレンがケロッとした顔で言う。 「楽団を持つのに1800ドル必要なんだ」 グレンが云う。 引き出しから預金通帳を出してくるヘレン。 「グレン・ミラー楽団口座?」 残高を見るグレン。 「1842ドルだって?」 ヘレンの傍へ行くグレン。 「ヘレン、あれは全部僕のポケットから?」 「そうよ」 グレン、ヘレンを優しく抱き寄せてキス。 かくしてミラー楽団は発足した。各地を巡業しての闘いだ。泥道に車輪を落として遅れたりで収入は僅か一日一ドル。楽団を維持するのがやっとの有様だ。 気を取り直してサイ・シュリブマンとの契約先のボストンに向かうが、今度は雪道でグレンの車がエンコ。ヘレンとチャミーに事情を説明に先に行って貰い、グレンは数日遅れて到着する。 ヘレンはボストンで入院していた。疲労による流産が原因だった。グレンは「妊娠してたとは・・・」と絶句した。 医師の説明では母体も危なかったそうで、二度と子供を産めないそうだ。更に悲運が続く。金が底をつき、車も売却、楽団は解散になった。チャミーも自分の車迄売って協力する。 グレンはヘレンを病院に見舞った。そして言うのだ。 「僕たちの子供を持とう。男の子と女の子をひとりずつ」 「私は・・・」 「医者から聞いたよ。分かってる。子供を欲しがっていた君のために・・・」 泣かせる場面である。 「僕は文無しの失業者だぞ」 「でも愛してるわ」 「僕も愛してる」 「嬉しい。結婚して初めて聞いたわ」 微笑み合う二人。 そして転機が来た。そっぽを向いていた成功の女神がやっと微笑みかけたのだ。サイ・シュリブマンの経営するダンスホールは専属の出演バンドを探していた。 グレンにバンドを再結成しろという。金は出すから助けてくれと義侠心に訴える。グレンはOKした。 新バンドの練習が始まった。練習の最中にリード・トランペッターが唇を切るアクシデントが発生、窮余の一策でクラリネットのリードに変える。これが成功した。新しいサウンドが遂に発見されたのだ。 ダンスホールは連夜の超満員、ミラー・サウンドは大衆に受け入れられたのである。満員のホールでグレンが演奏中に舞台を降りてヘレンの傍へやってきた。 「誕生日の贈り物だ」 「私の誕生日は11月よ」 「去年の誕生日のだ。今度のは本物だ」 と真珠の首飾りをヘレンにつけてやる。 こうしてグレンは成功の階段を登りはじめた。私が最も感銘したシーンを次に記しておこう。 場面はグレンの邸宅だ。グレンの両親、ヘレンの両親にドンやシュリブマンら親友たちを集めて結婚10周年を祝うパーティだ。ヘレンには何も知らせず内緒で実行するというのが泣かせる。 「ヘレン、出かけるよ」 「すぐ行くわ」 と、階段を下りてくる。 グレン、メンバーに合図。 急に鳴り響く音に驚くヘレン。 一同、「コングラチュレーション!」と。 ヘレン、父母と抱擁を交わす。 ここで演奏される曲は「ペンシルバニア65000」だ。二人の思い出の電話番号を曲にしているのがユニークだ。 そして、一同の会食シーン。チャミーが乾杯の挨拶をする。 「グレンとヘレンによる最高のもてなしと、成し遂げた成功に。今夜のような幸せが永遠に続くように」 「ありがとう、すばらしいスピーチだ」 「当たり前だ、1日中、練ってた」 チャミーの答えに笑う一同。 グレンが云う。 「結婚記念のプレゼントがある。カードも用意した。”アハハ、君と僕、いつも仲睦まじく、だから進呈しよう。茶色の小瓶を僕から君に」 グレン、茶色の小瓶をヘレンの前に置く。 第2次世界大戦が勃発し、グレンは応召する。そしてバンド編成の許可を貰って戦地の慰問をして将兵を元気づける。「イン・ザ・ムード」「アメリカン・パトロール」などの名曲が次々に披露される。 そして、グレンはパリで特別番組に出演することになり、ロンドンから霧の深い海に向かって飛び立つ。 だが、先発した筈のグレンの乗った飛行機はパリに到着していなかった。行方不明になったのだ。 ラストのラジオから流れてくる放送に耳を傾けるヘレン。チャミーとサイ・シュリブマンもヘレンの傍にいる。 「この曲をアメリカのご家族に捧げます」 ラジオから聞こえてきた曲は、「茶色の小瓶」である。ヘレン、グレンの写真のそばに飾ってある茶色の小瓶を取り上げて頬ずりする。その頬を伝い落ちる涙・・・・・。 この場面は涙なしにはみられない。私にとっては。画面がいつもかすんでしまうのだ。 この映画で教えて貰えるのは、目標を持つことの大切さだ。そして、目標を決して忘れないこと、チャンスは必ずやってくると云う事だ。 <トピックス> 音楽が不得手だったミラー少年 グレン・ミラーは大工の父、オルガンが得意な元小学校教師の母という家庭の次男坊に生まれた。小学校時代、唯一成績が悪かったのが音楽だったという。ところがトロンボーン出合ってから熱心に練習に取り組み、プロのバンドに加わるまでに成長。 大学進学後、ベン・ポラック楽団と巡り逢い、のちにスウィング・ジャズの第1人者として脚光を浴びた。妻のヘレンは大学時代の友人。醜聞の多いバンド界にありながら、浮いた噂ひとつない彼の人柄を、同様に”真面目”なジェームス・スチュアートが演じた。これはまさに適役であった。 登場するカラシックカーは見もの 売れないトロンボーン奏者から大ヒットを次々に飛ばす楽団を率いるまでになったグレン・ミラー。彼の成功を物語るのが、今では”クラシックカー”となった名車だ。 質屋から出てきたグレンに友人チャミーが自慢するのは、当時、最もポピュラーな大衆車だったダッジのフェートンで、その後、ピアス・アローのセダンに乗り換える。一方、レコード売上げ新記録を達成したグレンが乗るキャデラックのクーペや、2人めの養子を抱いた妻のヘレンが乗るクライスラーのデソート、デューセンバーグなどの高級車も登場する。多彩なクラシックカーをチェックしてみるのも、この映画のもう一つの楽しみ方である。 ジェームス・スチュアートを知りたい方に↓ http://plaza.rakuten.co.jp/chokosan/diary/200906250000/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.01.11 10:37:33
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