9/30-10/2 大門山、大笠山、笈ヶ岳
随分とブログをサボっているが、相変わらず「稜線辿り」は続けている。広島県内の大分水嶺巡りは、残っていた豊栄の天神嶽から中山峠の間をH27秋からH29春に歩いた。天神嶽の東は目立つ山がなく、分水嶺は世羅台地を複雑に縫う。男鹿山女鹿山は男鹿を通り、上下町ではJR福塩線上下駅を通り、翁山に上がって北に向きを変え龍王山へ向かう。一方中国山地の県境稜線からは、道後山クロカンパークの西を通って猫山、芸備線を渡って白滝山、中山峠で中国縦貫自動車道を跨いで、神石高原町のエリア。この辺りから稜線がはっきりしなくなり集落の点在する山々を縫って龍王山へ。最後の龍王山を歩いて完結したのが今年H29年の5/20だった。鳥取岡山県境を東進する大分水嶺巡りはまだ羽黒山の手前。こちらは年に1~2回のベースで寄道しながらなので中々進まない。ネマガリの大変な区間になるのでなかなか。寄道として毛無山から宝仏山を歩いたが結構厳しかった(H28/4/29)。あと、毛利元就の居城のあった郡山(広島県吉田)から県境の上平山まで辿った。途中に風越山、津々羅山、火神城山、頭ヶ津古山、大塩山、と名前の付いた山が続き楽しく歩ける。登山道はないがヤブも少ない。その他、布野冠山から県境までの稜線も山が大きく良い稜線。赤名峠から指谷山は冬に繋いだ。――――――――――――――――――――――――――――――――前置きが長くなったが、今回は中国山地ではなく、両白山脈の北部エリアにある笈ヶ岳。深田久弥が百名山に入れるべきか迷ったと書いている山。ここ最近、日本三百名山を少しでも歩いてみようと「300巡り」をしている。三百名山(注、百も二百も含む)もほとんど登山道が整備されているので登山者も多く、ツアーも行なわれているようだが、中には道がなく残雪期のみ歩けるという山もある。今年のGWに野伏ヶ岳(両白山脈白山南)に行ったが、山頂で会った人が今年は雪が豊富でほとんどブッシュもなく快適に登れたが昨年は雪が少なくて登れなかったと言っていた。雪のコンディションや天候がGWの休みと合うか運次第なのは笈ヶ岳も同じだ。ネットを見ていると「まめぞう日記」というブログで無雪期の笈ヶ岳を石川県中宮から往復するルートがあると紹介があった。また、グレイトトラバースで田中陽希が大笠山から笈ヶ岳を8時間掛けて往復していた。歩けないと言われていたコースだが、歩けないこともないのかなと考え、頑張って行ってみることにした。具体的なコースは、初日がブナオ峠から大門山を経て大笠山頂の避難小屋まで。二日目に大笠山から笈ヶ岳を目指し、登頂後中宮に下山とした。三百名山を3峰繋ぐ縦走クラブらしいコースになってやる気が出てきた。9/29(金)移動日。JRで広島から新大阪、金沢、高岡と移動し、高岡から白川郷行き世界遺産バスで五箇山の皆葎(かいむぐら)バス停前のよしのや旅館投宿。9/30(土)旅館のご主人にお願いしてブナオ峠まで送っていただく。途中色々アドバイスをいただいた。「田中陽希も前日によしのやに泊まって笈に行った(知らなかった!)」「笈まで以前一度道が付けられたが今は全く分からない。相当大変」「錫杖岳の手前にオーバーハングした岩があって東側は巻けないので西側を巻いて行くが厳しい」「千丈平からシンノ又(岩マークがあるけど歩ける)を下って西尾根を登り返すルートがある。稜線を行くより早い」「笈から尾根を下ってわさび小屋に下る道がある(まめぞう道と同じと判明)」「水場は大笠旧避難小屋跡にある。また奈良岳の先の小沢を下るとある」ご主人の話でヤブに突っ込む覚悟ができました。6:15ブナオ峠出発。道はよくブナが美しい。ちらほら紅葉している。峠から4組の日帰り登山者と会った。大笠ピストン、大笠に行って桂湖に下山、奈良岳ピストンと様々。赤摩木古(あかまっこ)山、見越山は景色がよい。奈良岳を過ぎると二重稜線のようなわかりにくい稜線を縫って行く。ゆっくり歩いて14:30大笠山(1821m)。避難小屋は山頂のすぐ手前。四畳半位と狭いが隙間風などなく綺麗で快適。日没と日出が見れる。【ブナオ峠の登山口。広い駐車スペースがある。石川県側は通行止め】【アカマッコ山頂からの眺め。正面が大笠山、その左の尖峰が笈ヶ岳、一番奥が白山】【大笠避難小屋から夕日が沈む】【小屋の反対側には笈ヶ岳への稜線を越える雲。南岳から大キレットの向こうの北穂高を見ているような気がした】10/1(日)快晴。適度に風があったためか露もおりておらずこれ以上ないヤブ漕ぎ日和。笈ヶ岳まで直線距離で2.5km、最低鞍部までおおよそ300m下って300m登り返す。笈の登りの途中に宝剣岳と錫杖岳の二つのコブがあり、その手前が急になっている。大笠山6:20出発。いきなりナナカマド、ダケカンバなどの灌木に笹が混じる濃密なヤブ。下りは体を預けるように進めるが、登りは相当の抵抗になりそう。木に上がると少し頭が出る高さのヤブなのでルートは見える。下りといってもスピードは出ず時間がかかる。標高1700mのコブを過ぎると高木のブナに笹という若干歩きやすいヤブになったが長くは続かず再び灌木のヤブに。標高が下がると灌木も高くなり木を透かしてルートを探す感じ。地形図では判らないが、全体に亘って稜線東側は切れ落ちていて、それが稜線の目印になるので、ヤブは濃いがルートファインディングは難しくない。9:15ようやく最低鞍部。下るだけで3時間。後戻りのできない蟻地獄に落ちたようなプレッシャーを感じる。笈に登るしか帰る道はない。まずは宝剣岳。高度を上げるにつれて傾斜がきつくなる。最後は灌木を掴んで体を持ち上げる。1700mの岩のある小コブに上がって傾斜が緩くなるが、この辺りから稜線の東側は切れ落ちた岩となり、巻いて行く西側は灌木がひどくなる。11:05宝剣岳(1741m)。次は錫杖岳。少し下って再び急な斜面を攀じ登る。ヤブ漕ぎと灌木を掴んでの登りで手の指や腕が攣ってくる。体力の消耗も激しく、2,30m登っては休む。ヤブの間から左手に岩が迫ってくるのが見えるので右手に巻くように通過した。12:40錫杖岳(1780m)。錫杖岳から小鞍部までは東の尾根に入らないように要注意。通過する時は分からなかったが、笈から下るときに見ると東の尾根は断崖となって落ちていた。笈に向かって最後の登りは急な所はなかったが長くて中々着かなかった。14:10笈ヶ岳(1841m)。結局8時間も掛かってしまった。田中陽希には完全に脱帽です。時間がおしているので達成感に浸る余裕もなく踏み跡を辿って西尾根に。どこに行くのか分からないが東側にも踏み跡があった。ここからは「まめぞう日記」さんの記録があるので簡単に。踏み跡は思ったよりしっかりしていてテープも所々あるが時々分からなくなる。地形図で見るとはっきりした尾根のように見えるけど意外と複雑。踏み跡を外さないように歩く。どんどん進めるのだが意外と捗らない。1700m付近に殺生岩。岩の手前から左手のガレ場のような所を急降下し岩の下をトラバース。ロープなどしっかりある。岩を過ぎると高木の樹林になり道もはっきりしてくる。1420m辺りから清水谷へ降りる尾根に。ワサビ小屋が見え、16:45しっかりした歩道に降りた。大分暗くなってきたが平坦な道は幅3mくらい綺麗に刈って整備されているのでヘッドランプでも下れるかなと考えながら行くが、水晶谷の手前で道は急に細くなり、斜面を巻くように付けられた道はアップダウンありガレ場ありで不安になってくる。17:35水晶谷に降りるが橋桁が外してあり渡れない。水量が多くて岩を飛んでの渡渉はできないので靴を濡らして渡る。対岸の橋脚が高いけどロープがあって上手く上がれた。暗くなってきたのでヘッドランプを点けて進む。この先も注意を要するトラバース道。18:10大瓢簟(ふくべ)山から落ちる谷を渡る所で真っ暗となりビバークに。沢なので水はあるし、ツエルトを張って二人が横になれるスペースがあった。(ビバークできそうな所は歩道の終点から取水口まででここしかなかった)【小屋の前から、北アルプスの上に朝日が昇る】【朝日の差す笈ヶ岳、白山】【宝剣岳と錫杖岳 アップ】【大笠山の下り。前方は笈ヶ岳】【大笠山下り後半のブナの林。ここは気持ちよかったが・・・】【最低鞍部付近から大笠山を見上げる】【宝剣岳付近から錫杖岳(手前)と笈ヶ岳】【同じ位置から錫杖の手前の岩場をアップ。右を巻く】【笈ヶ岳山頂と白山】【笈ヶ岳山頂から大笠山】【笈ヶ岳の下りから錫杖岳とのコルを見る】10/2(月)6:10出発。「まめぞう日記」さんが水平歩道と表現されている道だが、あんまり水平ではない。アップダウン、ガレ場のようなトラバースと緊張を強いられ、ヘッドランプではちょっと無理か。7:05取水ダム。ここから道もよくなり、ようやく無事に降りてきた安堵感が湧く。雨が落ちてきたがダムに降りてからでよかった。7:55林道終点。作業員の方が仕事の準備をしていた。ここから林道が長い。9:20中宮集落。白山中宮というバス停に着くと丁度コミュニティーバスがやって来たのでこれに乗って道の駅「瀬女(せな)」、瀬女で路線バスに乗り換えて鶴来(つるぎ)駅、北陸鉄道で西金沢、JRで金沢と移動し広島に帰った。中宮に夕方以降に降りたら鶴来からタクシーを呼ばなくてはならなかったが、ビバークしたおかげでバスで安く帰れた。ビバークということになったが、2泊で計画すると荷物も重くなるので、覚悟の上のビバークであったということにしたい。大笠から笈までの稜線は岩登りなどの技術は不要で、ヤブを歩く体力と根気があれば踏破することは可能。ヤブは全行程濃くて楽になる所は無く、古い赤布を2箇所見たがテープなどの目印は皆無、獣道らしいものもない(ブナオ峠から大笠間では熊の糞が4、5箇所あったが、大笠から笈間では1箇所だけしか見なかった)。ワサビ小屋から下の水平歩道についてよしのやのご主人は「道の管理者は道の存在をあまり広めたくないようだ」と言われていた。ロープが張ってないと通行が厳しい所があり、橋も外してあったので、できれば事前に確認した方がいいし行くのなら自己責任で。雄谷は険しく水量が多い。道は急峻な崖の高いところを巻いて付けられているので、崩壊していたりすると迂回はかなり困難で、大笠から笈のヤブを歩くよりリスキーなコースと感じた。【中宮集落】お終い