顔の見える音楽(NHK交響楽団のトップメンバーによる金管五重奏団コンサート)
大阪という街は、掛け声では、「街の文化」「ホンモノを見抜く目」「民が支える活力」!!! のようなことが言われる(地元の人しか知らないかな・・)。まあ、特に、在阪マスコミ、財界、お役所(特に自称"文化通"とか"企画部門(?)"とか)の方々がよく口にしてる気もするが。。。自分の身の回りの人間が言う訳ではないから余計、目につくのかもしれないが。が、しかし、演劇でも、クラシックコンサートでも、「TVに出てるような」超有名どころは人気を集めるが、他は、中身がすばらしくても、空席がチラホラ、当日でも余裕でOK! というのがほとんどである。当日券でOKというのは、平日の前売り購入が仕事のリスクでほぼ不可能、という僕からすると大変ありがたいことではあるのだが、それは昨今のデフレと同様、やがて「正業」(ビジネス)として成り立たなくなる、ということを意味する。案の定、演劇やクラシックに接することができる機会がどんどん減っている。関西・大阪は、進取の気性にあふれ、というのはかなりウソで、「完成品」好みであることが多い。(ちょっと前の阪神タイガースが、若手を育てず、他所の全盛を過ぎた有名選手を調達していたことや、政府の中心ブレインを勤めている企画・財力ともに素晴らしい(!)ハズのオリックスが、阪急ブレーブスの遺産を食い潰した旧オリックスブルーウェーブズと近鉄バッファローズを「買取り」、ジャンクよろしく継ぎ接ぎした上、中村紀&清原の「人気もの」を調達して足れりとしていることも、象徴的な例と言えるかもしれない。)オーケストラでいえば、大阪府(大阪市の方がよほどメジャーなのだが)がバブル機に無理やり作ったセンチュリー交響楽団は、それなりに室内管弦楽団として、団員はがんばってきたとは思うのだが(税金を使ってムリに作った責任を誰が負っているのかは知らないが)、金聖響という若手の指揮者を、「経験が浅く、オケの団員からも苦情が聞かれる」という理由で、「カラヤンコンクール優勝」の小泉和裕に挿げ替えたのも、文化通のお役人が訳知り顔でやりそうなことである。彼には少なくとも、プロが備えるべき「ビジョンとイメージ」がはっきりあり、将来がとても楽しみであったのだが(「好み」で単純&短期間に断じるのは無責任と言えるだろう。)、完成&権威好みのお役人には御不評だったようである。観客動員という意味でも好調だっただが、おそらく、お役人はそうした「聴衆の支持」もバカにしてるのだろう。つまりは「聴衆=市民」をバカにしてるのだろう。お役所の中でもきっと「自分たちは指導的な層」とか「自覚」してる方々なのだろうな、とか思ってしまう。どこの職場でもそんな勘違いクンが「中枢」(のチョットだけ周り)に座りがちなので。ついお隣の兵庫県が「西宮市」というそんなに大都市ではないところで、県立のホールをつくり「成功事例」となっているのですら、きっと「佐渡裕なんて、人気ばっかりで」とか言って冷笑しているのであろう。なんせ「人気を支えるヤツはバカ」だから。。って。。? やっぱり、権威じゃなくては(東京か世界で認められたら権威・・)というところだろうか。(西宮市は決して小さい街ではもちろん無いが、大阪市内に比べれば本来地の利は無いはずのところである。 & 僕個人は佐渡裕氏は好みではないのだが、それはそれとして。)指揮者が若く未経験であることは、ラトルだってそうだったはずなのだが、「育てる」という気は端から無いようである。バーミンガム市が大阪府にあったら、さぞかし・・・であろう。きっと、金氏は、「東京」や「地方(大阪除く)」で花を咲かせるに違いない。そして後から「大阪出身の大指揮者」とか言うのだろうなあ。「完成品」好き、メジャー好みで、「東京や世界で活躍する一流」が大好き = 地方レベルのものや、半完成品の未来の可能性をバカにする、それが、大阪のお役人や財界の基本姿勢のようだ。先の「バナナホール」の例も、まさに同じく、である。。。。クラシックでは、突然、関西経済連合会(関経連)が、「非効率」を理由にオーケストラの統合を言い出したりしており、きっと、お役所と相談の上なのだろうが、今の状況をもたらした側が自らの責任もとらずに、また組織的には何も支援していない団体の方が、現場で実際に努力している人たちを「攻める側」にまわるというのは、まさに今の世相を象徴しているとさえいえる。明るい材料としては、大植英次氏が大フィルを軸に、なんとか、文化・音楽活動を盛り上げようとしているし、氏は、「世界レベル」なので、一応、お役所や財界にも、影響力を(良い意味で)もたらしているようで、とてもうれしいが、このことは、上記の大阪の体質(といっても財界やお役所)が変わったことにはならない。。そんな体質の下で、どんどん、接する機会が減っているのだが、直接の具体的な原因としては、企業が金を出さなくなった、ということとともに、プロモーションが不在となった、ということが挙げられるように思う。大阪は「客」が少ない、という議論もあるのだが、人口を考えるならば、また移動時間(職場or居住地からの)を考えるならば、比率はともかく、絶対数で言えば少なくとも、京阪神奈和の中では、一番有利な立場にあるはずである。(先の西宮市と比べても、すくなくとも「不利」ということは無い)大阪創業の梶本音楽事務所が事実上大阪でのプロモーションを廃止したように、また、近鉄劇場が閉めてしまったように、「良い演目を招き、場所をとり、ちゃんと宣伝し、チケットを売り、客を集める」という作業を行う「興行主」「プロモーター」が不在になった、ということが大きいようだ。昨日(17日)、そんな大阪で夢のようなコンサートが催された、NHK交響楽団のトップの金管奏者による金管五重奏のコンサートである。実際には、ジャンルに関係なく子供から老人まで心から楽しめるコンサートだったのだが、ジャンルそのものとしては本来金管五重奏といえば、「地味」なジャンルである。在阪オケのメンバーでも時折開かれることがあるが、それほど宣伝されることもない。プロのナマはしかしナマで聴くと理屈ぬきで関心~感動させる力を持っている、ということは「ナマ」の演奏をどのジャンルであれ接したことのある方なら、ある程度お分かりいただけることであろう。NHK交響楽団のtrpの関山氏を中心にしたアンサンブル、通常なら、たとえば「NHK交響楽団金管五重奏団」とか名前がつきそうなものだが、常設ではないようで(メンバーは実際、少し流動するそうだが)、長い叙述文のような「団体名」になっている。演奏は超一流の上、メンバーも豪華、曲目もサービス精神満点のもの、と通常なら5000円くらいは普通にするコンサートのはずだが、三井住友海上文化財団のメセナのイベントだったので、なんと1000円均一!。644人入るホールだが多分2割以上空席だった上、招待券も出していたので、まあ多く見積もっても、現金収入40万円。5人の新幹線往復(市内旅費除く)だけで、138,500円 ホールが当日朝から夕方までだけ借りたとして46,000円 控え室2,100円。 これだけで、すでに186,600円。 もう213,400円しか残らない。これで、宣伝費もスタッフの弁当も5人のギャラも全て出そうとするは絶対に不可能である。それほどまでに、良心的というか破格値のありえないような価格設定のコンサートとなったのは、一重に企業メセナのおかげであり、三井住友海上文化財団さんには、心から感謝する。(これは、別儀ながら、「子供のためのシェイクスピア」が、2000円で見られる、松下さんのおかげであることともつながる。そして、後述する不安も共通するのだが・・・)しかし、たとえば、この「1000円コンサート」、中学・高校にちょっと声をかけたら、一瞬でSOLD OUT!となるはずのところ、空席が(前の方は)目立つものとなった。大阪のコンサートとしては上々の部類とはいえ、価格と内容からすると信じられない状態であった。これは、チケットぴあ では流れていたとはいえ、どうも、クラシックのコンサートの「情報流通」が断絶しつつあることの表れのようである。これほどの価格とするのであれば、ぜひ、満席にしてもらいたい。絶対に「客が居ない」ことは無いのだから。マイナス要因としては、このコンサート「大阪市」の主催であっただが、当日は、同じ、大阪市の肝いりで「中之島音楽祭」なるものが、まったく別の場所で、別の企画として行われており、そちらに注目(といってもシレているが)が行ったのも影響しているかもしれない。(自分自身は地下鉄のポスターで見て知ったし、本当に中学・高校に宣伝してたら、きっとチケット入手できなかったろうから、個人的にはありがたいことなのだが)また、この破格値の設定による企業メセナが無い限りは、内容がいかに素晴らしくても、大阪へ催しを呼ぶプロモーターが居ない(子供のためのシェイクスピア も同じく)という状態は、実際には、大変、基盤の脆弱なものである。子供のためのシェイクスピアについても、本当に心から、パナソニックさんには感謝しているが、ずっとこのまま誰もプロモーターが現れなかったらいずれ、大阪では見られなくなってしまうだろう。「加藤健一事務所」のように。。。そんな不安な状況の中でのまさに「一期一会」、N響のおなじみの奏者達による「金五」に出会えたことは本当に幸運であった。関山氏の爆笑トークは有名だが、実際に関西に居て聞くのはウワサばかりであったのだが、今回、会場全体を爆笑の渦に巻き込む、脱力系弾丸スパイス&スパイラルトークを聴けたのもまた「ご褒美」だった。とはいえ、もちろん、本当のご褒美中のご褒美は、5人の演奏そのものであった。(つづく)