『たんぱく質占い』の結果
―トリプシン―
たんぱく質分解酵素。自分自身たんぱく質でありながら、たんぱく質を分解してしまうという、たんぱく質界の異端児。
というわけで、皆からはちょっと奇異な目で見られたりするのですが、彼(彼女)なくしてはたんぱく質界の経済活動、そして我々動物の栄養摂取はできない。
そんな大事な仕事を淡々としかし誇りをもってこなす職人気質を持ってます。
食物に含まれるたんぱく質はそのままでは利用できません。
(よってコラーゲンを食べてもそのままコラーゲンでお肌つるつるとはいきません。)
一回アミノ酸まで分解して、再構成する必要があります。
この分解を行ういわゆる消化酵素の一種がトリプシンです。
主にすい臓から分泌され腸の消化吸収を助けます。
―ミオシン―
箸の動かし方からジョギングまで、我々の運動のすべての根幹となる超弩級縁の下の力持ち。
一つ一つの出す力はとっても小さいのだけど、何個も何個も集まって集まって集まって、ついには重たい買い物袋もお宅のお子さんも何でも持ち上げられる、そんなみんなで集まって何かをすることの大切さを教えてくれる、和の伝道師であります。
筋肉の収縮において、エネルギーを用いて片割れのたんぱく質『アクチン』を引き寄せることで筋収縮を起こします。
ミオシンとアクチンはそれぞれ集まって、筋肉の筋細胞で繊維状の束を作ります。
束は一部重なっていてその部分では相互に作用しています。
この重なり部分では一分子のレベルでくっついていて、ミオシン分子はエネルギーを使ってアクチン分子を引き寄せます。その結果、アクチンの束はもの凄い力で引き寄せられ、束の塊は全体として収縮します。
さらに多数の束、多数の筋細胞が繊維状に集まって一気に収縮し、結果筋肉が収縮します。
こういった複雑な動きを神経で制御してやることで、我々はいろいろな運動をすることができるのです。
―NMDA型グルタミン酸レセプター―
我々の脳にぽっかり空いている穴。…穴?いやいやただの穴のはずがない。
記憶や学習に深く関わる、電流を通すという摩訶不思議な穴。うまく働けばあなたも天才になれるかも?
ただし、一筋縄ではうまくいかないクセ者。けれどもいったん心を開けば素直に受け入れてくれる照れ屋な、クセ者ツンデレっ子なんやそれ。
NMDA型グルタミン酸受容体(NMDAR)は脳の神経細胞にあり、細胞に電気を通す穴を作る『イオンチャネル』というものの一種です。
イオンチャネルは普段は閉じていますが、必要に応じて開いたり閉じたりします。
グルタミン酸受容体とは、『グルタミン酸』がくっつくことで開く穴、ということです。
(グルタミン酸は味の素の主成分です。グルタミン酸を取りすぎるとバカになる、とかいう話はこれらグルタミン酸受容体のせいですね。)
NMDARは普通のイオンチャネルと違って多段階のロックがかかっていて、中々開いてくれません。
まず、名前の通りグルタミン酸がくっつかなくてはなりませんが、それだけではダメです。
マグネシウムイオンが穴をブロックしており、第二段階の鍵がかかっています。
これを外すためには、ある程度の電流がこの神経細胞に流れる必要があります。
大きな電流が流れるとマグネシウムイオンは外れ、穴が開いて電流を通すことができるようになります。
同じグルタミン酸受容体であるAMPA受容体は、NMDARとは違ってグルタミン酸がくっつくことで簡単に開きます。
NMDARはどうしてこんなにツンデレなのか?
話が変わりますが、『長期記憶』という言葉をご存知でしょうか?
受験勉強で覚えた英単語は、一回書いただけではさっさと忘れてしまいがちです。
忘れないためには、何度も口に出したり書いたりして、記憶に刻み付けなければなりませんね。
記憶とは神経細胞の回路のつながり方だと言われており、何度も特定の回路に電流が流れることで記憶が増強されるらしいです。
NMDARはこの学習と記憶の基礎をつくる分子の一つであると言われています。
英単語を聞いたときには、例えば『what』という単語を一回聞くと、ある回路に1回電流が流れます。しかしマグネシウムイオンでブロックされたNMDARは開いてくれません。
が、何度も『what,what,what,what...』と聞くとこの回路に頻繁に神経細胞に電流が流れ、NMDARのマグネシウムによるブロックが外れ、NMDARも電流を通すようになります。すると普段よりも大きな電気が流れるようになり、それがきっかけでこの回路は他と比べて強くなります。これが長期記憶の基礎だといわれています。
NMDARは脳のたんぱく質の中で精力的に研究がなされているたんぱく質です。