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2020.08.24
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カテゴリ:インディ

予選3番手だった佐藤琢磨が、111周ものリードを記録してレースを引っ張り続けたスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)を終盤にパスし、そのままゴールまで逃げきった。
200周のレースの195周目にスペンサー・ピゴット(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング・ウィズ・シトロン・ビュール・オートスポート)がターン4で激しくクラッシュ。
ピットとメインストレートを隔てるウォールの突端にあるタイヤバリアなどの衝撃吸収材に大きなダメージを与えたことからフルコースコーションとなり、イエローフラッグのまま残り5ラップは消化。
琢磨はイエローフラッグとチェッカーフラッグが提示された中、2017年に続くインディ500での2勝目のゴールを横切った。

これで彼は、世界で最も長い歴史を誇るレースで2勝以上を挙げる20人目のドライバーとなった。2017年の勝利はアンドレッティ・オートスポートとともに飾ったものであり、今回はレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング。琢磨は2勝を異なる2チームで挙げた。
「チームの献身的な働きのおかげです。感謝しても感謝しきれません。ピットストップは1日中素晴らしかった。ホンダエンジンはパワーも燃費も最高でした。日本のファンの皆さんは、夜中から朝まで応援、本当にありがとうございました」と琢磨は喜びを爆発させていた。
2017年の一度勝っているだけあって、ビクトリーレーンでの動きにも余裕があった。
「序盤はトップ5にポジションを保てればいい」とレース前に話していた彼は、まさにその通りの戦いぶりを披露。
イアン・ハンタ-レイ(アンドレッティ・オートスポート)らとのバトルで無理することなく、自分のマシンの実力、ライバルたちのマシンの状況、トラフィックでのマシンのフィーリング、路面コンディション、タイヤの摩耗……といった要素を確認しながら勝負の時を待った。
そして、レースが折り返し点を迎えた頃から走行モードを一段アグレッシブなものに変えた。この時点でライバルはスコット・ディクソンとアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)のふたりに絞り込まれていた。
この中からロッシが脱落した。
「2016年の勝利より、昨年2位だったレースのことばかり思い出す」と話していた彼は、勝ちたい気持ちが前に出過ぎで、62周目にピットインするはずが、ピットに入り損ねてタイムロス。
124周目のピットストップ直後には琢磨のマシンとピットロード上で接触した。これはクルーのミスでロッシに責任はないが、ペナルティを科せられてリードラップの最後尾まで下げられると頭に血が上り、挽回を目指して超過激ドライビング。タービュランスを浴びてターン2でクラッシュした。
ディクソンは琢磨に4秒もの差をつけていた時もあった。しかし、残り周回数が60周になったところでチームメイトのグラハム・レイホールを抜いた琢磨は、ディクソンとの一騎打ちに向かっていった。
158周目、巡ってきたチャンスを逃さず琢磨はトップに躍り出て、そこからハードプッシュ。ディクソンは抜けないと判断して燃費セーブに切り替えたようだった。
168周目、先頭を走り続けて燃費が悪くなっていたのか、琢磨が先にピットイン。ディクソンは次の周にピットしたことから、ゴールまでに使える燃料は1周分多く持っている状況となった。しかも、ピットアウトすると彼はトップに返り咲いていた。
琢磨はペースを緩めず、172周目のメインストレートでディクソンを抜いた。ここからはディクソンが攻め、琢磨は逃げながら、余裕があれば燃費セーブを心がけた。
195周目、トップ争いをするふたりはバックマーカーの小さな集団に追いついた。得意のターン3で琢磨はトニー・カナーン(AJフォイト・エンタープライゼス)をパス。2番手を走っていたディクソンはカナーンを抜けないままターン3、ターン4を回らざるを得なかったため、両者の差は一気1.1秒以上に開いた。
そして、この直後にピゴットがクラッシュ。ディクソンに逆転のチャンスは与えられず、琢磨がチェッカーフラッグとイエローフラッグを同時に受けた。
「考えていた通りの戦いができました。夕方はコースの一部は日陰になる。それらのコンディションを考えてセッティングを施し、レース終盤の自分たちはいちばん速い存在になれていたと思います」と琢磨はレースを振り返った。
2位に敗れたディクソンは、「この負けは受け入れ難い。かなり長いこと悔やむことになる。琢磨は見事なレースを戦った。最大限のおめでとうを言いたい」とコメント。
「彼の燃料は、あと5周あったら最後まで持ったのか?」と首を傾げてもいた。
「自分たちの方が1周遅くピット。彼らはゴールまで燃料を持たせるだけでも大変な状況だったはずだ。しかし、彼らはフルパワーで戦っていた」とディクソン。
琢磨は燃費について、「短いストレートでミクスチャーを薄くするなど徹底的にセーブし、最後にフルパワーでの勝負になったとしても戦い抜けるだけの燃料をセーブすることに成功していました」と余裕を見せた。
「今日のレースはオーバーテイクが難しかった。だから、前に出れば勝てると思いました。一度目に前に出た時、ディクソンは燃費セーブで抜き返しに来ませんでしたが、二度目に僕がトップに出た時には、すぐに抜き返しに来ました。しかし、それをさせませんでした。彼との感覚を見ながら燃費セーブもしてゴールを目指しました」



観客席にファンがいないことを忘れさせるほど、ふたりのバトルは激しく、スリリングだった。
2017年に初優勝し、2018年に3位フィニッシュしている琢磨は、今年は2勝目。4年間で3回のトップ3入りが証明する通り、現在のインディカー・シリーズで、最もインディ500に強いのが琢磨だ。
「2012年には最終ラップでクラッシュした。あの時から8年後、ボビー・レイホール、デイビッド・レターマン、マイク・ラニガンのオーナー3人にインディでの勝利をもたらすことができた。彼らと一緒にレンガにキスができて、最高です」とも琢磨は話した。



3位はレイホール。今年のレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングはトップ3に2台が入った。
そして4位はサンティーノ・フェルッチ(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・バッサー・サリバン)。ホンダが1-2-3-4フィニッシュ。
シボレー最上位の5位は予選13番手だったジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)。6位はルーキー最上位フィニッシュのパトリシオ・オーワード(アロウ・マクラーレンSP)だった。
ポールシッターのマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・ハータ・オートスポート・ウィズ・マルコ・アンドレッティ・アンド・カーブ・アガジェニアン)は、スタート直後のターン1でディクソンにトップを奪われ、結局1ラップもリードできず、13位でゴールした。
アンドレッティ勢は提携チームを含め7台がエントリーし、マルコのPPを含め4人がファスト9を戦ったように、予選まででは最強チームだった。
しかし、レースで優勝を争ったのはロッシだけだった。ザック・ビーチとコルトン・ハータがリードラップを記録したが、それらはピットタイミングを違える作戦や、トラフィックの中を走り続けたことで燃費をセーブできたためだ。
エアロスクリーンを装着したマシンでの初インディ500では、7回と多くのアクシデントがあった。タービュランスでのマシンのハンドリングがそれだけシビアだったということだ。





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Last updated  2020.08.24 20:45:48
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