『團菊祭五月大歌舞伎』昼の部(5/2-26)
毎年この時期に行われる「團菊祭」。何気なく観にいっていましたが、これは観客にとって大変ラッキーなことだということに気が付きました。「團菊祭」は、明治時代の名優、九代目團十郎、五代目菊五郎の没後に両名を偲んで始まったのだそうですが、後年、時代によってはどちらかその名を継ぐ役者が揃わぬ時もあったようで、今の時代に名実ともにタイトルロールとも言うべき二人の役者が揃っていることに大きな意味を感じます。現在は、十二代目團十郎と七代目菊五郎が、この團菊祭を背負っているというわけです。その昼の部の演目は、「義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)-渡海屋・大物浦-」「六歌仙容彩 喜撰(きせん)」「幡随長兵衛(ばんずいちょうべえ)」。「義経千本桜」―渡海屋・大物浦―この段は、西海に入水して死んだと思われていた新中納言知盛(海老蔵)が、世を忍ぶ仮の姿で生きていた、という設定のお話です。大物浦の船問屋の主人・銀平が実は知盛であるとは知らず、弁慶ら義経主従一行はその漁師宅に宿を取ります。そして大物浦から船路で西国を目指す彼らを、海で源氏を倒さんとする平家一族の者たちは、今が出航の時と、荒れ狂う海へと弁慶たちを促します。しかし、そこでもなお平家方は敗れ、一族もろとも入水自殺を図り、知盛も崖の上から碇とともに海へと壮絶な最後を遂げるのでした。大きな見どころは、知盛が瀕死の体で碇のロープを手繰り寄せ、体に巻きつけ、海に飛び込む場面です。海老蔵が初役で挑むその姿は、無念を胸の内に秘め、たっぷりとした迫力がありました。その時に脚をVの字にして、海に背中から飛び込むダイナミックさで、最後までその勇姿が観客を魅了します。「喜撰」坂東三津五郎が喜撰法師に扮しての舞踏です。先月に引き続いての三津五郎の姿には、芸の広さ、深さを思い知らされるような楽しみがあります。「幡随長兵衛」公平法問諍市川團十郎が威厳たっぷりに風格のある長兵衛を演じます。最初は劇中劇の場面から始まるこの物語。旗本奴の水野十郎左衛門(菊五郎)の家臣がつける難クセを、本物の客席から飛び出した長兵衛がなだめるそのやり取りが興味を引きます。その後、水野から屋敷への招待を受けますが、殺されると察しながらも出掛ける長兵衛。長兵衛の物静かな応対、そして水野が仕掛けた罠と知りながら、風呂場で大勢の刺客に囲まれる様は涙を誘います。ちらりと登場する女房のお時に、よく観ると坂田藤十郎が扮しています。3月の公演の、團十郎に対するお礼の出演だとか。こういうところが粋ですね。観客にとっては、嬉しいことです。※公演詳細は歌舞伎公式ウェブサイトで。(歌舞伎座にて)※5月5日に昼の部を観劇。 休憩時間に歌舞伎座の入り口が賑やかだったので行ってみると、 お神輿が歌舞伎座目掛けて行ったり来たりしているのに出くわしました。 どうやら鐵砲洲稲荷神社の例大祭の一環のようです。 歌舞伎公式ウェブサイトに、その様子が掲載されています。 上の写真は、歌舞伎座側から見た様子になります。