『八月納涼歌舞伎』第三部(8/8-26)
今月は三部通して戌年にちなんだ犬にまつわる作品だそうです。第三部は『南総里見八犬伝』。私は歌舞伎で観るのは初めてですが、三幕目で『南総里見八犬伝』と言えばこの「芳流閣の場」というくらい・・・とイヤホンガイドで言っていましたから、よく上演されている名作のようです。古典の歌舞伎の持つ見せ場、見所満載で、観ている者を唸らせてくれました。「八犬伝」は、子供の頃にテレビの人形劇で観た伏姫ゆかりの八犬士の物語が、微かに記憶にあります。なので、舞台の上で八つの玉が暗闇に飛び散る場面を懐かしい想いで観ていました。そして最後に、八人が勢揃いして順に名乗り、見栄をきって幕。ヒーローものに夢中になる、あの感覚と同じような気がしてきま・・・。さて、この日が初日の歌舞伎座です。先ほど述べた芳流閣の場は屋根の上での殺陣となるのですが、様式美を活かした立ち振る舞いは本当に美しい。傾斜がある場所での犬塚信乃(染五郎)と犬飼現八(信二郎)らの殺陣は、難易度の高いものです。そして以前大変感動した「がんどう返し」の場面転換へと続きます。さらに登場人物のほとんどが一人二役で演じられるところに、俳優の芸の広さを感じます。(扇雀は女方の伏姫と、立役の大物悪役・山下定包と二役!)そして、三津五郎の左母二郎から犬山道節への早変わり。第三部は18時開演ですが、五幕十一場という大作、見応えたっぷりの舞台です。犬塚信乃役の染五郎のみずみずしい演技に好感を持ちました。おまけに第一部から出ずっぱりで、歌舞伎役者魂を見せてもらったような気がします。歌舞伎座の「熱い」夏が始まりました。原作・曲亭馬琴、脚色・渥美清太郎、補綴・今井豊茂、美術・前田 剛、照明・池田智哉八月納涼歌舞伎の公演情報はこちら。(歌舞伎座にて)