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カテゴリ: ファンタジー(少女系)
地球と月の間に浮かぶ大学コロニー「アカデメイア」。 男子学生モエ・ギは、ひょんなことから歴史科が発明した 時間移動機械(タイムマシン)「ムシ」で、1000年以上前の平安時代に送られてしまう。 変わり者の姫君・蘇芳(すおう)に助けられ、 王朝絵巻のような暮らしにもなじんでいくが--。 表題作ほか、6500万年前に飛ばされた恋人を追う『GONDWANA(ゴンドワナ)』、 15世紀のバラ戦争を舞台にした『マリー・ブランシェに伝えて』など、 「ムシ」をめぐるタイムトリップシリーズ。 なんとなく、本当になんとなく図書館で手に取りました。 まさかこれほど素晴らしいとは思いもよらず・・・ 全体的に優しく美しいタッチで綴られていて、 未来社会から遥か昔へタイムスリップという設定上か、 薄っぺらな流行り言葉やぼてっとした表現がされていないのも、 こうして数年後に読んでもすんなり世界に入れる理由かと思います。 表題作と続編も、展開が読める王道ではありますが、 その分王道の素晴らしさと表現の美しさで胸を打たれました。 続いて「GONDWANA」も途中の惚れ惚れする生気に溢れたシーンと、 どうにもならない怒涛の天変地異のシーンのギャップに目を覆いたくなりました。。 緩やかな滅びの中、それでも今を精一杯生きていた民族が、 予定よりも遥かに早く訪れた最後の時に滅ぶのはほんの一瞬でした。 歴史にすら残らなかった人々のことを覚えているのは、知っているのは主人公だけ・・・ 胸を裂く苦しみと悲しみを経験し、けれども唯一一緒だった相手は全てを忘れてしまい、 たった一人全てを知る少年は、その後一人苦しむこともあるのでしょう。 そういうことを考えると、もうたまらなくなります。。 最後の最後にやられたのは、「マリー・ブランシュに伝えて」と「ディア シェアラ」。 自分の叶わなかった恋の相手の子孫と、自分の子孫が結婚するようにという、 これまた王道の遺書を破棄してもらうべく過去に飛んだ主人公。 主人公と相手役と、主人公と姿がそっくりなお姫様との、 コメディタッチなやりとりに頬を緩ませる「マリー」からは想像も出来ない、 大きな諍いに翻弄される歴史もの恋愛物語となる後半が「ディア シェアラ」でした。 主人公が未来に戻った後で、マリー・ブランシェの身に起こったこと、 彼女が感じたことが彼女の視点で語られていきます。 それも、遥か未来で自分の日記を読む主人公に向けて、 彼女が語りかける様に日記を書くそのままに。 もう、危険すぎます。精一杯生きて、精一杯人を愛した少女の決意と直向さに、 読み終えてしばらくしてもティッシュとハンカチが手放せませんでした。 一途で純粋な恋心をお求めでしたら、本当におすすめです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年09月09日 22時12分29秒
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