東工取の時間延長
9月21日(火)から、東京工業品取引所(東工取)の取引時間が延長されました。これまで、日中立会の9:00~15:30と夜間立会の17:00~23:00でしたが、夜間立会を翌日の4:00までに延長したのです。4:00というのは、ニューヨーク時間では15:00です(※標準時間が冬時間の場合は14:00です)。 ※標準時間(アメリカ東部標準時間)夜中に5時間延長することにどのような意味があるかですが、とても大きな意義があります。コモディティは全世界で取引がなされているグローバルなものです。このため、日本の市場が終っても海外の市場で取引がなされ、新たな価格が形成されます。また、海外からの投資を受け入れている市場(中国は海外からの投資を受け入れていません)において、東工取が出来高1位のゴムを除いては、日本よりも出来高が多い市場、すなわち各商品のリーディング市場のあるイギリスとアメリカでは、取引がドル建てでなされています。この結果、為替市場においてドル/円が変動しますと、連動して、円建てで取引が行われている日本の商品市場の価格も変動します。コモディティのリーディング市場は、非鉄金属を除いてはアメリカです。また、ドル/円の為替もニューヨーク市場が開かれている間に大きく変動します。翌日の4:00までに延長したことによって、アメリカ時間という価格変動の大きい時間帯の取引が可能となったのです。また、東工取での取引によって、欧米の取引所での取引と同じ時間帯での取引機会を得ることにもなったのです。取引機会が多くなることの利点を具体的に説明しますと、次のとおりです。第1に、時々刻々の価格の変動に対応して取引を行うデイトレーダーにとって、1日のうちの価格変動が生じる時間帯が広がり、収益機会が拡大することになります。コモディティ自体も為替の変動が最も大きい米国の取引時間帯に東工取の板画面(価格ごとの注文枚数を掲載した表)をパソコンのスクリーンで見ながらトレードができるのです。デイトレードを専業にしている個人投資家の方の中には、この機会に、収益機会の多い夜中にトレードをして昼に寝るというようにライフスタイルを変える方もいらっしゃるでしょう。第2に、チャートに基づいて、「○○円になったら買い」、「それが、△△円になったら利益確定の売り決済、逆に××円になったら損切り(損失確定)の売り決済」との取引ルールを持ち、これに基づいてトレードをするのが投資の基本です。このため、デイトレードでなくとも、取引機会が拡大すれば収益機会のもとである「○○円になったら買い」の確率が高まります。そして、とりわけ重要なのが「××円になったら損切り」が確実にできることです。取引所の価格は、上げか下げかの一方向の動きが継続することがままあります。取引ルールの王道である「トレンドフォロー」を基に、1g単位で価格を表示する金を例にして具体例を挙げますと、取引ルールに基づいて「3,400円に下がったら損切り」としていても、アメリカの取引時間帯に円換算にて3,400円を下回り、ニューヨークの取引が3,300円で終ったとしますと、9時の東工取の取引がおおむね3,300円で始まり、損切りも100円の予定の3,400円より不利な価格で行わざるを得ませんでした。1取引単位は1kgですので、100円の不利は10万円の損失になります。それが、時間延長によって3,400円で予定どおりできるようになったのです。ちなみに、価格が「××円になったら売り決済」との注文は予約できますので、夜中に起きている必要はありません。東工取の発表によりますと、時間延長初日のニューヨーク時間帯(23:00~4:00)の出来高は7,281枚でした。この時間帯を含む取引所での1日(計算区域といいます。時間延長後は、前営業日の15:30~4:00とその営業日の9:30~15:30の合計です)の出来高は、9月22日(水)のものとなり、94,025枚です。7,281÷(94,025-7,281)=8.4%、時間延長によって約1割の出来高が増えたといえます。特筆すべきは、この時間帯の7,281枚の約1/2が3:00~4:00の間に取引されています。アメリカの連邦公開市場委員会(FOMC)のドル安容認と受け取れる声明発表を受けての、金相場の変動に対応しての取引です。ニューヨークの取引所で取引する投資家にしか得られなかった価格変動による取引機会を、早速活用した東工取のデイトレーダーがいたようです。日本の商品市場で取引する投資家が、東工取の時間延長によって世界のトレーダーと互角の勝負ができるようになりました。これからが楽しみです。