読書
昨夜は徹夜で読書。仕事とプライベートの境界線があいまいな暮らしを何年も続けている私にとって、たった一人で心ゆくまで没頭できる趣味の読書は唯一の娯楽。でもそれも、coquetteをオープンしてからは自分に禁止令を出している。一つの仕事さえきちんとできていない者が、平行して二つの仕事をする決断をしたのだから、そのぐらいは当然の犠牲といえるだろう。しかも自慢じゃないけど、私は本を読むのが極端に遅い。気になる言葉が出て来たときに、「こんなに素敵な言葉に、これぐらいの感動しかしないのは、数ページ前のあの言葉が心に染み込んでいないからに違いない」と、もう一度数ページ前に戻って読み返すということをするのだから、自分でももどかしくなる。その上、読み始めたものを途中でやめて、翌日読み続けるということができない。読書以外には一切のことが手に付かなくなってしまう。これはもう、麻薬中毒患者のような症状だ。そんなわけで、今は本に手を出すことをやめているけど、日本に帰国したとき、パリに戻ってくる空港の本屋に暇つぶしに入ったときだけ、本を買う事を自分自身に許してあげている。前回、日本から買って来た本は4冊1)名もなき毒ー宮部みゆき著作2)東京タワー/オカンとボクと、時々オトンーリリーフランキー著作3)勝負強さを鍛える本ージョンCマクスウェル著作、齋藤孝訳解説4)スピリチュアルジャッジー江原啓之著作1番は宮部さんの新刊ということで購入。2番は、帰国したときに扶桑社に打ち合わせで足を運んだおり、壁面に貼ってあった広告ポスターの、リリーフランキーのベストセラーというキャッチとタイトルに興味を持っていたところ、空港で見かけて迷わず即買い。3番は、このタイプの本はほとんど読まないのだが、齋藤孝さんの名前に惹かれたもの。4番は、流行りものということで、一応世の中の流れに従おうと思って購入。3、4番はまだ読んでいません。11月は忙しかったので、1、2番も読む事をずっとがまんしていました。懸念したとおり、2冊とも徹夜で読みふけってしまうことに。感想は、1番の宮部さんの洞察力には、いつもながら感服です。確かに、今の世の中には「名もなき毒」が蔓延っているように思います。事件のほとんどは、これが原因で起こっているように思う。気になる方は読んでみてください。そして2番の「東京タワー」。これはもう涙なくしては読む事ができません。昨夜は読書しながらも、その後も、今日も止め処なく涙が流れ出ました。おそらく、あと数回は読み返すことでしょう。ほぼ母子家庭であった著者のリリーさんと今は亡きオカンの暮らしを、故郷の九州と上京した東京を舞台に展開されて行きます。単なる貧困な親子愛の話ではなく、笑いあり、涙ありの、文学的にも優れた作品。私がここでヘタな解説をするよりも、是非読んで頂きたいと思います。リリーさんと私は同世代。本を読んでいると、私の母のことをリリーさんのオカンにどうしても投影してしまいます。母が亡くなってから早3年。私の母の人生も、三人の子供達に注いだだけのものでした。そういう人生を、母は幸せだったのだろうか?できることなら、亡き母に会って聞いてみたい。かつて、母の子に対する無償の愛、そして親子の固い絆は確かに存在した。もちろん今もあるのだろうけど、反面では子供の虐待死、そして趣味のようにお受験戦争を楽しむ母親像が賑わってきたのも近年のこと。何故、このような世の中になってしまったのか?その答えは「名もなき毒」の中に見え隠れしているようだ。この2冊を続けて読んだのは、偶然ではないように思える。何かが歪んでいる。そして歪んでいることに気づきながらも、歪みの中でしか生きることのできない無力な私達。乾いた大地に水を撒く権力は誰もが持っているはずなのだけど、誰かが撒く事を待つしかできない、無力な私達。権力と無力は、いつも向かい合って存在している。