ファッションの世界には「外し」という概念があるらしい。
「え? なにこれ?」と注意を引くもの。
そんなものを服やアクセサリーに一つだけ混ぜるのがオシャレなのだそうです。
理屈だけならなんとなく分かります。完璧なものは確かに凄みがありますが、人間味が感じられないものです。親近感がわきにくいと言ってもいいかもしれません。
だから少しだけ、外す。
これが『外し』です。
この『外し』という概念。
他の分野でも応用できるのではないでしょうか。
ファッションのことはよく分からないし文章では説明しにくいので、まずは音楽で応用してみましょう。
高速道を走る車の中。
男女のカップルが乗っています。
恋人同士、楽しいドライブ。男は何か音楽を聴くことにしました。
車内には流行の音楽、アップテンポの曲に混じり時々バラードが流れます。そんな雰囲気で一時間ほどが過ぎた時のこと、突然流れる「愛をとりもどせ!! (北斗の拳の主題歌)」。彼女は唖然。まさにユーはショック。
これが音楽での『外し』です。
流行の曲は確かにノリもよく気分も高揚しますが、ずっと聞いているとどこかマンネリ化してくるもの。そこで一つ「え? なに?」と驚くような曲を一曲だけ入れておくのです。ちょっとした遊び心。これでマンネリも消え、彼女もあなたにユーはショック♪愛で空が落ちてくる♪俺の胸に落ちてくる♪こと間違いなし。ノリのいい人ならその後ベットの上で「あべし! ひでぶ!」ぐらい言ってくれるかもしれません。言って欲しくないですか、そうですか。愛をとりもどせ。
さて、この『外し』はさらに文章にも応用できます。
文章には時々まったく理解できない難解なものがあります。特殊な専門家の書いた本などがよい例でしょう。
文章力とか構成力とか以前に何の話なのか分からない。
そんなこともあります。これは相対性理論の反証を試みた論文の一部ですが、そんな理解できない文章の一例として読んでみてください。
今日の非均等な背景放射の測定に従えば、電磁気学的立場から地球の背景放射に対する相対運動を確認することができる。
これはある意味で、エーテルから成る“black body(黒体)”、すなわち“現在我々の知りうる限り最も大きな空間的広がりを持つ、そしておそらく一番均一な物体”という観点から、少なくとも準絶対 空間が存在していると解釈できるのである。
うん。
分らない。
相対性理論だけでも分らないのに、その反証とか分るはずがない。「きっと頭のいい地位も名誉もある偉い人が何か話してるんだな」ぐらいしか理解できない。
しかし、そんな文章でも『外し』を入れるだけでこんなに変わるのです。
今日の非均等な背景放射の測定に従えば、電磁気学的立場から地球の背景放射に対する相対運動を確認することができる。
これはある意味でギャルのパンティが欲しい\(^o^)/エーテルから成る“black body(黒体)”、すなわち“現在我々の知りうる限り最も大きな空間的広がりを持つ、そしておそらく一番均一な物体”という観点から、少なくとも準絶対 空間が存在していると解釈できる
ほ~ら!
どうですか! 途中で 「え? なにこれ?」
と思ったでしょう?
意味不明だった文章に親近感がわきませんか?
お前の頭に虫がわいているのだけは分かったという声が聞こえてきそうですが、たとえ文章の内容は分らないままでもこの「ギャルのパンティが欲しい」という外しを入れることで、簡単に話の方向性は分かってしまいます。
ギャルのパンティエーテルとか ギャルのパンティエーテルから成るblack bodyとか、さらに結論としてギャルのパンティエーテルのおかげで準絶対空間が存在しているとか、「きっと頭のいい地位も名誉もあるエロい人が何か話してるんだな」という具合に理解できたと思います。
十分。それで十分です。
文章なんてその話の方向性さえ分ればそれで十分なのです。今日の記事も「きっと頭の悪い地位も名誉もないエロい人が何か話してるんだな」という具合に理解してた頂ければ十分です。ちなみにエーテルとは、空間に充満しているとその昔信じられていた架空の物質のことで、現実には存在しません。藤原紀香と釈由美子は絶対CGだと信じていたけど現実には存在するということと逆ですね。全然関係ない話でした。
それでは最後にダジャレをひとつ。
このブドウ、一粒どう? (ひとつブドウ)
はい。
外しました。
恥ずかしいからもうエーテルになりたい。