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カテゴリ:独り言
深夜の各駅電車。
必要以上に放出される鼻水を我慢しながら 前のめりになりつつ半睡眠状態で座っていた。 昔からそうだった。 仰向けで寝ることが自分をさらけだし 無防備な状態なのではと子供心ながら恐怖感を抱いていた。 アルマジロだな、俺は。 堅い皮に包まれた球体で常に周りから何かを守っているんだよ。 柔らかい中身なんぞ見せずに。 みんなわかってくれずに。 そんなくだらんことを考えていると 視界右後方、同じ長椅子に座ってる女が手をクネクネと動かし始めた。 見ると20代後半、クレオパトラのごとき黒長髪で ロールシャッハテストを彷彿とさせる鋭利な顔面の丘陵が特徴的な女が座りつつ奇妙な踊りを踊っていた。 おそらく明日、全国プログレッシブダンス大会があり 、彼女は怪我をした友人の代役として抜擢され、まだ覚えたての振り付けを復習すべく五里霧中で確認作業に明け暮れているんだ と勝手な想像で合点を得た私は見ぬふりをしていた。 しかし第一、プログレッシブダンスって何だ? あれか、キングクリムゾンのジャケごとく卑猥な顔して踊るんだ。 いかに混沌としてるかが採点の鍵だな。 で、審査員結局わかんねーだよ。 適当に肌の色つやで高得点つけるんだ。そんで… と、アホな妄想を膨らましていると、 自分目の前、本を読んでいる女性が明らかに本越しに踊る女を見ている。 しかし見てはいけない、失礼だなんて思ったのか目を外す。 しかし見たい。そんな繰り返しだ。 読書する女と踊る女を隔てているのは本のみ。 その壁を越えてみろよ、興味あるんだろ? おまえが思っている以上に世界は狂気に満ち溢れてんだよ。 秩序なんてものは本の中にある語法でしかないんだよ。 そこから狂気の世界を覗き見ることは可能さ。 おまえらはそれを見て狂ってるとでも言うだろうな。 でも見てみろよ。どっちが本質か。 淘汰されてんのはこちらか。そっちか。さぁ壁を越えてみろよ。 空間を揺らしひずませ声が響いてきた。 それが踊る女からなのか読書する女からなのか、はたまた俺からなのか超越的なものからなのかはわからない。 ただ唯一わかったことは、俺がこの二つの存在をつなぐ琴線の上で殻をかぶり遥か遠くに見えるこれら二つを望んでいたということだけだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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