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2006.02.02
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カテゴリ:独り言
その日、前日から振っ続いていた雪が少し弱まり、病室の窓からは細かい虫のような雪片と共に雲から僅かながらのぞく太陽が見え隠れしていた。
今後、毎年のようにこの日に雪が降ろうなどとは誰も予想だにしていなっかたのだろう。
窓近くのベッドには産まれたばかりの子供を抱えた母親が乗り越えられない絶望と対面していた。
降りしきる雪の重みは地面に降りると同時にその軽さが世界を構成する一部となり、人々の営みを顧みず、窓の向こうの母親を静かに奪い取っていた。
果たしてこの子に一体どんな罪があるというのだろう。罪の重さなんてものは結局のところまったくの独立した存在で、この世の有無とは関係の無いところで密かに出番を待ち望んでいるのかもしれない。
両手に抱えている僅か3000グラムの生命の温かみを不条理と置き換えながら、導かれることのない普遍の問いを何度も何度も繰り返していた。

「お母さんよく聞いてください。残念ながら体内のホルモン分泌がこの子の場合、極端に少ないようです。精密検査をしなければなんとも言えませんが、将来知恵遅れになる恐れがあります。」
検査結果を聞き、病室を出ると母親は空っぽの状態で待合室のソファに倒れ込むように座った。天井の白色灯は不規則についたり消えたりして、新生児の額を照らしていた。部屋の空気が濃密に迫ってくる。その圧力に負けないようにと母親は必死に我が子を抱き寄せた。顔を近付けると甘酸っぱい香りが鼻をつく。壁に掛っている風景画には全体的に日の光りが足りていないように思えた。







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最終更新日  2006.02.02 11:23:50
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