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カテゴリ:独り言
ピンポーンと気味が良い電子音に誘われて彼女はいつもの通用口から「ただいまお伺いいたしまーす」とテンポよく大殿筋を左右にぐいっぐいっと揺らしながら出てくる。笑顔とも疲労感ともとれる表情でテーブルの横につくと「御注文お伺いいたしまーす」と風にそよぐ枝木程度の控え目な決まり文句を言う。
例えば胸元に揺れるネームプレート。真っ白なYシャツにくくりつけられたプラスティク板は彼女の愚痴を提示しているのかもしれない。 また例えば短く束ねられた後ろ髪。後ろ手に団子状にまとめられているその姿は彼女の偏食歴を表しているのかもしれない。 砂の上にごく浅く描かれた文字のような化粧は奇妙にも店内に流れているフュ―ジョンと合間って、とろんと気だるい印象を受けた。 斜め左にいる客の女が携帯メールの顔文字の話をしている。煙草を吹かし、キューイフルーツの蔕みたいなジーンズに通した足をがっぽりと開きながら自らの正当性を熱く語る。会話を中断してかきとほうれん草のドリアを注文する。そして再び顔文字の話題へと 舞い戻る。 ファミリーレストランの空気というのは一種の排気口の出口に似ている。彼女は白いYシャツを見に纏い生ぬるい雑音を優雅に滑ってゆく。 だから僕は食べ欠けのポテトフライを皿の上に落としてしまう。そして結末とはいつも頼りないもので押し固められているものだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006.02.16 13:42:17
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