「今、何の話ししてたの~?!...」
最近、奥さんと私と会話に女の子がそんな台詞で割り込んでくることが多くなった。大人の会話に興味がわいてくる年頃のようだ。
今日も夕飯時に奥さんと他愛のない話しをしていたら女の子がいつもの様に乱入してきた。邪険に扱うとへそを曲げるので少し相手をしてやる。
「昔ナンシー関って消しゴム版画家がいて週刊誌にコラムも書いていたけどもう大分前に死んじゃったな~って話ししていたんだよ、わかる?」
理解できないだろうな~と思いながらも基本的に面倒臭いので要点を掻い摘んで話してやる。案の定女の子は何言っているのって顔で首を傾げている。
ナンシー関が誰かなんて知ったって君には何の感動もないだろう...なんて思うのだがちょっと可哀想なので少し噛み砕いて再度チャレンジ。
「ナンシー関ってのは人の名前だ。
ナンシーがファースト・ネームで関がファミリー・ネーム。」
「消しゴム版画家ってのは消しゴムで版画を作る人だ。
消しゴムは判るだろう。
版画てっのはスタンプみたいなものだ!」
「その人は文章を書くのも上手くてマガジンにアーティクルも書いてたんだ。」
「でも、もう大分前に死んじゃったんだよ。」
全然適当の域を出ない説明だが、この位肉付けしてやると何とか判ったような気になるらしい。
しかしこの時点で奥さんも私も何でナンシー関の話をしていたのか忘れてしまってた...
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
たま~にな事なら心に余裕を持って対応も出来るが実際はかなり片っ端に鼻を突っ込んでくるので正直うざったい。子供に聞かせたくない話もないわけじゃないし...
しかし子供の頃の好奇心を頭から叩き潰すなんて嫌な大人の代表みたいで嫌だ。そんな私の姿が彼女の心の奥のトラウマになって何時までも残ってしまうはもっと嫌だ。
逆に良いところに目を向けるとすると...こういう会話は日本語を聞いたり話したりする良い練習になる。それに相手の話を理解する力ってのは言語を問わず重要なことだ。
そういう風に無理やりなポジティブ思考で何とか良い父親を演じていきたいと思う。
しかし何時まで続くことやら...
少年はそばで、そんな話しには全然興味がありませんって顔で飯を食っていた。結構助かる。
お願いだから君は今暫くそのままでいてくれ...