テーマ:ニュース(100162)
カテゴリ:仕事を離れてふと思う
最近のマスコミをにぎわしている話題といえば,何といっても,ニッポン放送をめぐってのライブドアとフジテレビの争いであろう。ニッポン放送の新株予約権の発行については,東京地方裁判所及び東京高等裁判所の決定でライブドア側が勝利し,ライブドアのニッポン放送のっとりが決定的となった。
東京地裁の仮処分決定の全文を見たければ,ここをクリックすれば見られますし,東京高裁の抗告棄却決定の全文を見たければ,ここをクリックすれば見られます。 ライブドアの堀江社長というのは,あの若さであれだけの会社の社長になった成功者ということで,SOHO起業家にとってカリスマ的人物である。また,その着想や発想・考え方や話し方が20歳代から40歳代の多くの人の心を捉えて名物社長になっている。 そのためかどうかはわからないが,フジテレビとニッポンとの争いについて,インターネット上のブログの中では,堀江社長を支持する声の方が多いようである。「株式を公開している以上は,会社がのっとられることは覚悟しているはずだ。」という意見も,あちことに見られる。 この問題について,本日から何回かに分けて,法律的な問題点をあげながら私の意見を書いていきたい。この問題を理解するには,言葉の理解が前提となる。私は「のっとり」という言葉を使ったが,正式には「敵対的企業買収」と言われている。 「企業買収」(MアンドA)というのは,ひらたく言えば,ある企業経営者から,その企業の資産や経営ノウハウ・顧客等,営業全体を買い取ることである。酒屋を経営しているAさんから,酒屋としての営業許可・その店舗や在庫・仕入れ先や顧客との人間関係等,一切を買い取ることである。 いくら買い取ろうと思っても,売ってくれなければ買い取ることはできない。したがって,個人企業の企業買収については,相手企業の意思に反して買い取る(これを「敵対的企業買収=いわゆるのっとり」という)ことはできない。ところが株式会社の場合は,話がちがってくる。 株式会社における「株式」というのは,ひらたく言えば,会社の所有権だと思えばよい。会社が10株発行していて,自分が1株持っていれば,会社の10分の1は自分の思い通りにできるのである。 株式会社を設立する際に,200万円ずつ5人が出し合った時は5分の1ずつの権利がある。一方,Aが600万円,Bが200万円,C・Dが100万をだしあった時は,Aは会社の3/5を思い通りに出来る。Aが全額出したのなら,会社は全てAのものである。その権利を,「株式」というもので表現しているのである。 株式会社であっても,株式を自分や共同出資者だけが持っている場合には,いわゆるのっとりの問題は生じない。自分たちの株式を売り払うことが,企業そのものを売り払うことと同じことであり,株式を売らなければのっとられることはない。 しかし,会社経営の必要から多くの資金を調達するためには,株式を世間一般に公開して多くの人に投資してもらう必要がある。証券取引所に上場し,世間のたくさんの一般の人から投資を募って資金調達をし,会社を大きくしようとするのである。 証券取引所に上場するためには,様々な制限がある。株式の譲渡を制限することができない,上位10人の株主の株の合計が一定の割合を超えてはならない,等々である。証券取引所では,自由に流通する株式,正当な自由競争のもとで価格形成される株式のみを扱い,一般投資家を保護しているのである。 そこで,企業の過半数の株をひそかに買い集めて株主総会に乗り込んでいく,ということが生じる。これが,敵対的企業買収(いわゆる「のっとり」)である。 明日の日記から,商法及び証券取引法の規定について書いていきたい。 ←最後にここをクリックして下さい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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